クリティカルシンキングとは、物事を批判的に捉えて考える思考法で、「批判的思考」とも言われます。クリティカルシンキングを身に付けることで、さまざまな物事に対して、「なぜ」「どうして」「本当にそうか」といった批判的な目線を持ち、本質を見極められるようになります。
本稿では、クリティカルシンキングの考え方について紹介します。
クリティカルシンキングとは
まずはクリティカルシンキングの意味をしっかりと理解しておきましょう。
意味
クリティカルシンキング(critical thinking)とは批判的思考を意味しています。主観や私情に流されることなく、物事を平等な目線で判断をする思考を指します。
クリティカルシンキングは、アメリカの教育法のひとつで、昨今では日本のビジネス界でも活用されるようになりました。このクリティカルシンキングの思考の根本にあるのは、「なぜ」「それは事実なのか」「正しい判断なのか」の問いであり、相手の意見や人格を否定することとは直結してはいません。
目的と重要性
インターネットが普及し、多くの情報が気軽に手に入るようになった現代は価値の変動が著しく、「常識」や「当然」の移り変わりが激しいと言えるでしょう。だからこそ、「なぜ」「どうして」と問いを持つことで、今日の常識に縛られることなく、物事の本質を捉えられるようになります。
クリティカルシンキングを活用すれば、客観的に物事を把握でき、多用な観点から物事の判断を正確にすることができるようになるでしょう。
メリット
クリティカルシンキングのメリットとして挙げられるのは、物事の本質に気づき問題解決の糸口をつかむことや、多面的な見方により論理の欠点や不足の補強ができる点です。
デメリット
クリティカルシンキングのデメリットとして挙げられるのは、定義自体の認識違いによって、ただ相手の人格批判だけをしてしまう点です。
クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違い
ロジカルシンキングは、物事を論理的に捉えて考える思考法で「論理的思考法」とも呼ばれます。ロジカルシンキングでは、何か課題や問題があったときに、その要因について道筋を立てて大きい要因から小さい要因に分解していって考えていきます。
一方のクリティカルシンキングは、物事を批判的に捉えて考える「批判的思考」なので、思考手順や取っ掛かりが異なります。
「クリティカルシンキングで考えた仮説をロジカルシンキングを使って説明する」などの使い分けをすることで、スムーズな課題解決につなげられることでしょう。
クリティカルシンキングはなぜ必要?
市場の変化スピードが急速化した昨今、物事の本質的を見抜き、時代に沿ったアプローチで価値を創出することが求められています。そこで重要なのが、クリティカルシンキングです。
クリティカルシンキングにより、当たり前に存在していた出来事に対して、「なぜ」「どうして」と批判的に捉えて考えることで、作業の無駄や、価値を創出するためのキッカケを見出すことができるためです。
クリティカルシンキングの鍛え方
クリティカルシンキングを身につけるとビジネスや学習、日常生活でも役立てられます。日常生活の中で、ビジネスの着想が湧いてきたり、難題を解決することが可能です。
クリティカルシンキングを身につけることで、問題解決スキル、コミュニケーションスキル、論理的思考のスキル、クリエイティブスキルなども強化されます。
以下、クリティカルシンキングを鍛える方法を紹介します。
目的・ゴールを明確にする
クリティカルシンキングをするにあたっては、まずは目的・ゴールを設定する必要があります。
それらを決めておかないと、考えが発散して本来の目的からは逸れたアウトプットに落ち着いてしまうためです。そうなると、時間も労力ももったいないです。
意味のないことに思考が発散してしまわないためにも、まずはクリティカルシンキングを行う目的、およびゴールを設定するようにしましょう。
前提を疑う
クリティカルシンキングを身につけるということは、客観的な思考力を身につけることにつながります。
何かを考えるときに、“そもそもの前提”を疑わずにいる場合には、客観的な思考ができているとは言えません。前提すらも疑いながら考え、思考過程に問題がないかを常に確認しつつ、考えることが重要です。
「なぜ」を繰り返し問う
クリティカルシンキングを身につけるためには、繰り返す自問自答をする癖をつけることが重要です。
問題に対して「それは本当に正しいのか」「それはなぜなのか」といったことを、常に問い続けるのです。例えば、課題の解決が難しい場合には、解決できない理由を出来るだけ多く書き出し、その理由を頭の中で深掘りしていきましょう。次第に本当に解決すべき問題、およびそれを解決する手段に気付けるようになります。
現状を分析する
クリティカルシンキングでは、現状を分析することが大切です。現状を正確に表すことのできる情報を集め、それらを精査することで、課題解決のための取っ掛かりを探っていきます。
このとき、誤った情報が混ざっていると、最終的なアウトプットが的外れなものになってしまう可能性があります。本来は課題ではないところに課題を想定してしまえば、そこへのアプローチ策を取ったところで、何も現状は好転しないためです。
ゴールに向かって現状の状況を丁寧に分析するためにも、正確な情報の収集に力を入れましょう。
批判的視点を持つ
意識的に、批判的に物事を捉えるようにしましょう。クリティカルンキングの能力を高めるためには、常に「なぜ」「どうして」を考え、自分なりの意見を持つことが重要です。
批判的に物事を捉えるということは、物事を客観的に捉えるということにもつながります。批判的な視点を持ち、客観的に考えることで最適な解を導き出せるようにしましょう。
解決すべき課題を設定
クリティカルシンキングを行うにあたっては、課題の設定が重要となります。
問題解決の質は、この課題設定で決まると言っても過言ではありません。課題を見つけるには、最初に設定したゴールと現状との間にどのようなギャップが存在していて、それを存在せしめているものが何なのか、ということを考える必要があります。
解決までのプランニング
取り組む課題が明確になったら、次に解決までのプランニングをします。
プランニングをするときは、4W1Hの「Who(だれが)」「What(なにを)」「When(いつまでに)」「Where(どこで)」「How(どのようにして)」をベースに考えるとよいでしょう。
クリティカルシンキングの注意点
クリティカルシンキングをするにあたり、やってはいけない注意点について紹介します。
他人の意見を聞かない・受け入れない
自分の考えに固執して、他人の意見を聞かない・受け入れないのはNGです。
自分の考えと違う意見を受け入れられないと、たとえ、自分が本来考えないといけないことからズレたアウトプットを出していたとしても、そこに気付くことができません。
最終的には、当初想定していたゴールからずれてしまい、想定していた課題を解決することができなくなってしまう可能性があります。
他人の意見を鵜呑みにする
他人の意見を鵜呑みにしてしまうこともNGです。
人の意見を聞いて、すぐにそれがいいと思ってしまう人は、「本当にそうなのか」という疑って考える視点が足りていないと言えます。クリティカルシンキングの力が足りていないと、間違っている結論に引っ張られてしまい本来解決しなければならない課題が解決できなくなってしまうのです。
クリティカルシンキングを身につけて仕事に活かそう!
クリティカルシンキングを身につけると常に「なぜ」「どうして」と批判的に考えるようになり、物事の本質にたどり着いて納得のいく結論が導出せます。常に適切な決断・判断ができるように、そして、課題解決能力を鍛えるためにも、日ごろから「クリティカルシンキング」を意識してみてはいかがでしょうか?