OODAループとは

意思決定を行うための考え方として、OODAループがあります。OODAは「ウーダ」と読みます。

この思考法は、先の読めない状況であっても一定の成果を出すための意思決定や行動を起こすためのもの。変化の激しいビジネスの状況下では、常に迅速な意思決定と柔軟な対応が求められており、OODAの考え方は、そんな状況に対応するために有効なものだといわれています。

OODAループの実行手順4つ

OODAループとは、Observe(観察)、Orient(状況判断、方向づけ)、Decide(意思決定)、Act(行動)の頭文字をとったものです。

以下、それぞれのフェーズにおける考え方、およびやるべきことについて解説していきます。

手順1 : Observe

実行手順の1つ目はObserve(観察)です。これは、「敵を良く知れ」という意味であり、対象をよく観察して、理解するということを示します。

ここでは、思い込みなしの「柔軟さ」や「臨機応変さ」でもって相手をよく見る力が求められます。

手順2 : Orient

実行手順の2つ目はOrient(状況判断・方向づけ)です。先の観察結果に基づき、状況を判断し、方向付けを行います。この時、対応するスピードが速ければ速いほど、意思決定速度が速まります。

しっかりと状況を観察した後の判断とその決定による方向づけであり、OODAループの内容の中で一番重要な段階となります。

手順3 : Decide

実行手順の3つ目はDecide(意思決定)です。よく観察し、状況判断後に方向づけた後、実行前の決断を決める段階となります。

今後の具体的な方針や行動プランを決定づけるプロセスになるため、実効性が増します。

手順4 : Act

実行手順の4つ目は、Act(実行)です。1~3の実行手順を経て、しっかり状況判断し、方向づけを行った上で、ようやく実行します。

OODAループにより、手順1から手順4の内容を調整しながら何度も素早く繰り返すことで、より高い効果を得ることができます。

OODAループを取り入れるメリット5つ

OODAループを取り入れるメリットとはどんなものがあるのでしょうか。5つのメリットを紹介していきます。

メリット1 : 問題に対応しやすい

OODAループは、状況を観察してから、その状況に合わせて柔軟に対応することが容易なのが特徴です。そのため、突発的な問題が生じても臨機応変に対処することが可能です。

メリット2 : 対応が早い

OODAループを取り入れるメリット2つ目は、状況を観察してからさまざまな環境や場所に合わせ方向性などを決定し、対応していくので、迅速な意思決定が可能になることです。

例えば、災害や事故、緊急トラブルが起きたときにその場に応じた対応が瞬時に必要になってきます。状況を観察し、方向性を決めて行動を起こす、その結果に合わせて、また新しい方向性を決めて行動を起こす、といったループであるので、対処が早くなるというわけです。

メリット3 : 行動指針に活用しやすい

OODAループでは、最初から目標を設定する必要がないため、先の見通しが立てにくい新しい事業に向けてのプロジェクトでは、PDCAサイクルよりも活用しやすいという特徴があります。また、行動指針の決定が素早くできるため、すぐに活動しやすくなります。

メリット4 : 責任感を持ちやすい

OODAループは、企業全体の意思決定を待ってから行動を起こすのではなく、個人や小規模のプロジェクト単位で意思決定を行うことができるため、自己決定による責任感が生まれます。

また、その場しのぎで対症療法的に対応するのではなく、意識をもって行動を起こすために、後から「なぜその行動に移したのか」の根拠を示すことができるようになります。

メリット5 : ニーズに合ったサービスを提供しやすい

状況を観察してから方向づけを行うために、その時に必要とされるニーズをすぐに理解して対応できる点もメリットの一つです。

例えば、レストランで小さな子どもが来たときに、スタッフの判断で「取り分け用のお皿や小さなスプーンを準備する」という対応をしたお店があったとします。

このように、たとえマニュアルに記載されていないような対応であっても、その場のニーズを理解し、スタッフの裁量により、顧客のニーズを満たすことができれば、店の評判は上がることでしょう。

OODAループを取り入れるデメリット

OODAループに問題があるとすれば、個々に意思決定の裁量ができ、責任感が生じる反面、全体の方向性と意思合わせをしておかないとバラバラになりやすいという点が挙げられます。

また、自己決定権が多いほどに責任も多くなり、孤立しやすくなってしまうため、自分の力量にあった裁量を持つように心がけましょう。不安なときは上司に指示を仰ぐ体制を作っておく必要があります。

全体をまとめるためにも、行動指針や気軽に相談や指示を仰げる関係を設けておく必要があります。

OODAループが求められる3つの理由

OODAループが求められるようになった背景には、以下の3つの環境変化があります。

理由1 : AIやSNSの発達

OODAの思考法がなぜ必要かというと、AIが対応できるのは、膨大な量の過去に蓄積されたデータのみであり、予測をたてる上ではまだまだ難しい領域にあるからです。

しかし、過去のデータによる対応についてはスピードが大幅に増しており、市場自体の変化も以前に比べて格段と早くなっているのが現状です。また、SNSの発達により、個人が情報を発信できる時代となったため、今まで以上に迅速な状況判断、および適切な対応が求められています。

OODAループの考え方を元に、市場や現場の動きを常に観察し、物事に素早く対応することが今後も求められてくるでしょう。

理由2 : ビジネス環境の変化

近年のテクノロジーの進歩によって、ビジネス環境の変化は激しくなっています。昨今のビジネスシーンにおいては、新しいことに取り組む際に、緻密な計画を立てるよりも、状況を見て素早く判断することが必要とされています。

理由3 : 生産性の高い組織をつくれる

この思考法が求められる理由として、生産性の高い組織をつくることができるという点が挙げられます。

生産性を高めていくためには、個々に裁量を任せて対応の迅速性を高める必要があります。1つのことに対し、意思決定を会社全体に任せていては、実行に移すまでに時間がかかりすぎる可能性があります

生産性を高めるためには、市場に応じた状況判断を迅速に下す必要があります。OODAループの考え方を駆使すれば、状況に合わせ、柔軟にすぐに行動を起こすことが可能となるのです。

OODAとPDCAの違いは

よく知られている「PDCAサイクル」とOODAループの考え方には大きな違いがあります。

PDCAが得意とするのが「立てた計画通りに物事を終わらせられる場合の改善活動」であれば、OODAが得意とするのは「計画を立てづらい物事に対して、柔軟な意思決定・対応により、適切に対処していく活動」と言えます。

前者では「一連の工程の中で想定外のことが起きないこと」を前提としており、後者では「一連の工程の中で想定外のことが起きること」を前提としているという違いもあります。

想定外のことが起きた際には、迅速に、適切な対応・意思決定を行う必要があります。昨今のビジネス環境の変化も後押しとなり、「柔軟な意思決定・対応」に重きを置いたOODAループの考え方が重要視されているのです。

OODAループを活用して生産性の高い組織をつくろう

これまでのビジネスの進め方は、日本企業の代表的な組織体系が影響し「意思決定は常に上に求め、決定事項が下りてきたタイミングで現場の担当者が作業に着手する」というケースがほとんどでした。

つまりは、これまでのビジネスにおいては計画ありきで事業を進めてきたのです。しかし、現在の変化が激しい市場では、常にスピードを求められています。

誰かの指示を待ったり、緻密な計画を立てたりするよりも、状況を見て素早く判断する「現場対応力」が必要とされてきている時代です。この思考法を取り入れて、市場ニーズを素早くキャッチし、生産性を高められるようにしましょう。