ーー早速ですが、手づかみ食べは、赤ちゃんにとってどのような意味があるのでしょうか。また、なぜ重要なのでしょうか。
上田先生
赤ちゃんは生まれてからずっとおっぱいやミルクを飲み、いわば食べさせてもらっていたわけですが、それが自分の手で食べて生きていけるようになります。これは、心身の自立への第一歩であり、自分で食べたいという欲求が出てきた発達の証です。2つ目に、食べ物をつかんで食べるという動作は、目と手と口を協調させて動かすため、手指機能の発達を促します。積木を持ったり、砂場で砂をすくったりといったこととあわせて、自分の手でさまざまな動きをすることが、この時期の赤ちゃんにはとても大切なんですね。3つ目に、手で直接触れることで、食べ物の熱さややわらかさ、触感、においを感じることができます。これが五感の発達を促します。4つ目に、自分でかじり取って、つぶして、舌の上でまとめてゴックンするという一連の流れの中で、飲み込み可能な一口量を学ぶのです。最後に、自分で食べ方をコントロールできるようになるための学習期間であるという点です。お母さんやお父さんにスプーンで与えられているときは、どうしても与えている方のペースになるので、急いで飲み込んで噛む習慣がつかない場合もあります。手づかみ食べであれば噛んでまとめて飲み込む時間を自分でコントロールできますから、自分のペースを学習することができるんです。