シャープは9月7日、プラズマクラスター技術を搭載する特別な試験装置を用いた環境下において、空気中を浮遊する新型コロナウイルスに対し、プラズマクラスターイオンを照射することで、感染性ウイルスの数を減少させる効果を実証したと発表した。
試験装置は長崎大学感染症共同研究拠点 安田二朗教授(兼 熱帯医学研究所教授)、同研究拠点 南保明日香教授(日本ウイルス学会理事)、および島根大学医学部 吉山裕規教授(日本ウイルス学会理事)と共同で開発。同装置を用いて、長崎大学の協力の下、空気中に浮遊する新型コロナウイルスにプラズマクラスターイオンを約30秒照射することにより、感染価(感染性を持つウイルス粒子の数)が90%以上減少することを初めて実証したという。
試験装置は具体的には、空間容積が約3リットルの密閉された箱の中にプラズマクラスターイオン発生装置を設置し、発生装置付近のプラズマクラスターイオン発生濃度を約1,000万個/cm3にしたうえで、箱の片側からウイルス液を飛沫に見立てて噴霧。箱の反対側の回収装置で、箱の中を通過しながらプラズマクラスターイオンの照射を受けたウイルス液を回収。回収したウイルス液からウイルス感染価を算出するというもの。感染価をプラーク法と呼ばれる方法で算出すると、感染性ウイルスの数がプラズマクラスターイオンを照射しなかった場合の1.76×104pfuから、照射した場合は1.54×103pfuとなり、91.3%の減少率を確認したという。
なお、今回の実証は、そのままプラズマクラスター技術を搭載した製品の効果を示すものではないと見るべきだろう。この実証で留意いただきたいのは、今回の試験装置による環境が、現実の生活環境とは大きく異なる閉じられた空間かつ、プラズマクラスターイオンの発生濃度も一般的に市販されているプラズマクラスター製品では発生不可能な濃度であることだ。
共同で実証した安田二朗教授は、今回の発表の中で、「付着したウイルスへの対策としては、アルコールや洗剤(界面活性剤)等の消毒薬が有効ですが、エアロゾル(マイクロ飛沫)を介した感染を想定した対策としてはマスク等の着用以外に有効策がありません。今回、プラズマクラスター技術が空気中に浮遊した状態の新型コロナウイルスを不活化することが実証されたことは、一般家庭だけでなく医療機関などの実空間で抗ウイルス効果を発揮する可能性があると期待されます」と、さらなる有効策が求められる浮遊ウイルスへの対策に、ひとつの可能性として期待している旨のコメントをしている。
シャープは、「今後も、プラズマクラスター技術による様々な実証を進め、社会に貢献してまいります」とコメントしている。