チキンライスにふわふわのプレーンオムレツを載せる。そのセンターからナイフを入れるとトロトロの中味がこぼれだす。デミグラソースでいただけば、口の中に幸福が広がる。故・伊丹十三監督の発案で、映画「タンポポ」にも登場する。映画のロケが行われた日本橋たいめいけんでは、監督にちなんでこの料理を「タンポポオムライス」として提供、人気メニューとなった。自宅でできるつくり方を、三代目茂出木浩司シェフに聞いてみた。
映画「タンポポ」にも出てくるたいめいけんの人気メニュー
タンポポオムライスはまだ僕が小さい頃に、故・伊丹十三監督の映画「タンポポ」のロケがたいめいけんであり、それにちなんだメニューですが、正直こんなに幅広いお客様に支持され続けるとは思ってもみませんでした。私自身は監督と直接お付き合いはありませんでしたが、名前を汚さないよう、美食家のみなさんがご満足いただける味を守り続けていきたい、という想いでつくっています。
チキンライスは塩、ホワイトペッパーでしっかり味付け
材料(2人分)
●とりもも肉……………………120g
●卵………………………………6個
●タマネギのみじん切り………1/4個分
●マッシュルームの薄切り……4個分
●冷凍グリーンピース…………30g
●米………………………………1合
バター、トマトケチャップ、塩、こしょう
各適宜
ではまずチキンライスをつくります。フライパンにバター大さじ1.5を溶かし、みじん切りした玉ねぎを炒めて甘みを引き出します。全体に透き通ってきたところで、さらにバター大さじ1.5と1cm角に切った鶏もも肉、薄切りマッシュルーム、グリーンピースを加えて強火で炒めます。鶏肉の色が変わったら、ケチャップ大さじ3を加え、全体にからめていきます。
ケチャップライス同様、ご飯より先にケチャップを入れることがポイント。強火でフライパンを回しながら水分を飛ばしていきます。ケチャップは煮詰めることで、酸味が消えて甘みを出すことができます。次にごはんを加えます。ごはんは少しだけ水を少なめにして炊いて、炊き上がったらボウルなどにあけてふきんをかぶせ、そのままおいて水分を飛ばしておきます。冷や飯をレンジで温めて使っても大丈夫です。
ごはんをほぐすようにして炒めながら、塩、こしょう(ホワイトペッパー)を適宜加え、しっかりと味を付けます。全体に具が混ざったら、大きめのお皿にチキンライスを盛りつけます。
お店では決まった量を盛るためにお皿にセルクルをセットして盛りつけますが、家庭では目分量で大丈夫です。ただし、ポイントはできるだけ平らに盛りつけること。そうしないとオムレツがうまくのっかりません。
中味をトロトロにするために手早く調理する
次にプレーンオムレツをつくります。卵を3個ボウルに割り入れ、ホイッパーで混ぜたら、ザルで濾して余分なものを取り除きます。塩・こしょうを加え、ふんわりさせるために炭酸を大さじ1加えてもいいです。
フライパンをあたためてバター大さじ1を溶かし、卵液を一気に流し入れたら、菜箸で卵を真ん中に寄せるようにして、勢いよくかき混ぜます。
30秒ほどで底に膜ができてきたら、火からフライパンを離して45度傾けながら手前3分の1を折ってそのまま奥にすべらせます。
再度火に戻したら、柄の根元から3分の1のあたりをトントンと叩きながら、卵を手前側に返していきます。
【オムレツを仕上げるポイント】
実は返すのはオムライスよりもオムレツのほうが難しいです。オムライスは中心に具が入るので、それを軸にして巻くので比較的簡単なんです。オムレツは必ず一周させるようにします。しっかり一周させないと中の卵液が出てきちゃいますので。(オムレツを回す練習方法は、プロが教える卵料理の基本ワザ/たいめいけん茂出木シェフ直伝!自宅で絶品オムライスを参照ください。)
一周して合わせ目が上に来たら、フライパンを逆手にして、オムレツを返すようにしてチキンライスの上に載せます。返すのが難しそうな場合はフライ返しを使ってもかまいません。
最後にお好みでイタリアンパセリやエディブルフラワーを飾ってもいいです。
時間が経つほど卵が固まっていくので、なるべく早くナイフで縦に切り目を入れて、左右に広げます。
これがタンポポのお花が開くようなイメージというのもあってタンポポライスと呼んでいます。
お店ではワインに合うように特製デミグラソースをかけて召し上がっていただきますが、お好みで替わりにケチャップをかけていただいても結構です。
エコノミークラスからファーストクラスまで魅了した「タンポポオムライス」
「タンポポオムライス」が大人気だったことから、一度この味を飛行機の機内でも楽しめるように、特製ボックスを開発して、JALの国際線で提供したことがあります。うれしかったのは、ファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラスの全クラスでメニューに採用されたこと。機内のお客様全員にたいめいけんのオムライスを楽しんでいただけたことが、たまらなくうれしかったことを覚えています。
料理はやっぱりまごころ。インスタントでは味気ないし、手抜きをしたらすぐに味に出ます。大切なのは、一所懸命につくることですね。オムレツも一度失敗してもあきらめずに2回、3回とチャレンジしてみてください。今はネットでもなんでもレシピが簡単に手に入りますから、自分なりに手を加えていけば、オリジナルの卵料理がきっと見つかると思います。