米労働省が2020年9月4日に発表した8月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数137.1万人増、(2)失業率8.4%、(3)平均時給29.47ドル(前月比+0.4%、前年比+4.7%)という内容であった。

(1)市場が最も注目していた8月の米非農業部門雇用者数は前月比137.1万人増となり、4カ月連続で増加。前月の173.4万人増から増加幅は減速したが、概ね市場予想(135.0万人増)と一致した。ただ、3カ月平均の増加幅(262.9万人)を大きく下回っている。業種別では、娯楽・宿泊や小売りなどサービス部門の増加が引き続き目立った他、政府部門も大幅に増加した。

(2)8月の米失業率は8.4%となり、前月から1.8ポイント低下。市場予想(9.8%)以上に改善した。また、フルタイムの就職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は14.2%となり、前月の16.5%から2.3ポイント改善。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率も61.7%へ上昇した。

(3)8月の米平均時給は29.47ドルとなり、前月から0.11ドル増加。伸び率は前月比+0.4%、前年比+4.7%と、いずれも予想(0.0%、+4.5%)を上回った。前月比の増加は2カ月連続となり、比較的低賃金とされる業種以外でも雇用が戻り始めたことを窺わせる結果となった。

米8月雇用統計は、非農業部門雇用者数の増加幅こそ減速したが、失業率の低下や平均時給の増加などから、米国の雇用情勢が回復基調にあることを裏付ける結果となった。なお、コロナ禍で失われた約2,200万人の雇用は、この4カ月でほぼ半数に当たる1,060万人あまりが回復した。

ただ、米国では11月の大統領選を前に与野党が対立を深めており、追加経済対策の成立が遅れている。市場には、政府支援の打ち切りなどで今後は雇用の改善ペースが鈍るとの懸念がくすぶっている模様だ。この日の米金融市場では、米8月雇用統計を好感してドル高と株高が先行したものの、いずれも早々に失速した。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、この日のラジオ番組で「きょう発表された雇用統計は良い内容だった」としつつ、「完全雇用に戻るには新型コロナを収束させる必要がある」、「我々は米経済が長期にわたり低金利を必要とすると考える」と慎重な姿勢を改めて示した。