米Intelが「Tiger Lake」こと第11世代のCoreプロセッサを正式発表したことを受けて、同社の日本法人が国内向けの説明会を開催した。インテル日本法人の鈴木国正 社長や土岐英秋 技術本部長らが登壇し、発表内容を直接解説している。

ここで改めて、PCプラットフォームごと次世代へと刷新することになるTiger Lakeの主な特徴を、説明会の内容からまとめておきたい。

会社ロゴから製品ロゴまで一気に移行

Tiger Lakeの発表にあわせて、Intelがこれまで使用してきた様々な「ロゴ」が一気に変更されている。おなじみのコーポレートロゴは、楕円の中心にintelの文字が配された青いロゴから、シンプルに「intel」の文字だけで表現されたロゴに切り替える。このロゴの基調にあうようにTiger Lakeからは、Coreプロセッサの製品ロゴもよりソリッドなものが採用された。統合型GPU「Xe」にも同様のロゴを用意。Project Athenaの延長にある第11世代Core用プラットフォームブランド「Intel Evo」にも、新たにブランドロゴが与えられた。

  • Tiger Lakeこと第11世代Coreの主要特徴、インテルが日本国内向けに解説

    Intelの新しいコーポレートロゴ

  • こちらは馴染みのあるこれまでのIntelコーポレートロゴ

  • 左から第11世代Coreの製品ロゴ、統合GPUであるIris Xeのロゴ、プラットフォームブランドであるIntel Evoのロゴ

  • 第11世代Coreの製品ラインナップ

第11世代Core「Tiger Lake」の主な特徴

開発コードネーム「Tiger Lake」こと第11世代Coreプロセッサは、CPUコアに、Ice Lake世代における「Sunny Cove」マイクロアーキテクチャの改良型である、「Willow Cove」マイクロアーキテクチャによるものを搭載している。Willow CoveではSuperFinと呼ばれる10nmの改良型製造プロセスを採用した効果で、動作周波数の引き上げと電力効率の向上を実現しているほか、MLC(Mid Level Cache/L2キャッシュ)は1.25MBに大容量化している。

チップを接続するファブリックではRing Busをデュアル構成にして帯域幅を倍増し、レイテンシも低減されたという。LLC(Last Level Cache/L3キャッシュ)は12MBに容量が増えた。メモリコントローラはDDR4-3200/LPDDR4X-4267にくわえ、最大でLPDDR5-5400まで対応。またCPU/GPUとは独立したAIアクセラレータ・プロセッシングユニットとして、電力効率がさらに向上した「GNA(Gaussian & Neural Accelerator) 2.0」を搭載する。インタフェースでは同社で初めて「PCI Express 4.0」をCPUに内蔵したほか、「Thunderbolt 4」も搭載している。ほかTiger Lakeのチップセットに相当するPCH側にはWi-Fi 6(Gig+)を搭載している。

  • Tiger Lakeの特徴まとめ

  • Tiger Lakeの構成図

  • 10nm SuperFinプロセスをベースに製造されるWillow Coveマイクロアーキテクチャでは、トランジスタ改良の効果で動作周波数の引き上げを実現している

  • Sunny Coveと比較すると、Willow Coveは動作周波数の上限が上がっただけでなく、より低い電圧で同じ動作周波数を可能にする電力効率も獲得している

  • Tiger Lakeの10nm SuperFinプロセスは、新しいFinFETと新しいSuperMIM(配線層)を組み合わせたもの

  • Tiger Lakeのチップセットに相当するPCH側の特徴。Wi-Fi 6(Gig+)を統合している

統合型GPUにはかねてより話題にあがることがおおかった「Xe」が組み合わされる。Tiger Lake統合用のこのXeには、正式に「Intel Iris Xe Graphics」という名称が与えられた。Xeには統合GPU向けの「Xe LP」、ディスクリートGPU向けの「Xe HPG」、AI向けの「Xe HP」、HPC向けの「Xe HPC」といったバリエーションが存在するが、このうちXe LPが今回のIris Xeだ。

Iris XeではEU(Execution Unit)の数をIce Lake世代のIris Plusの64基から最大96基へと増やし帯域幅も拡大、3.8MBの専用L3キャッシュを搭載する。性能はエントリークラスのディスクリートGPUに匹敵し、従来の統合型GPUと比べれば最大2倍に達するという。

  • Intel Iris Xe Graphicsのブロック図と特徴。なおXeには統合GPU向けのXe LP、ディスクリートGPU向けのXe HPG、AI向けのXe HP、HPC向けのXe HPCといったバリエーションが存在

  • こちらはIris Xe GraphicsをGPUベースのAIアクセラレータに使用した場合、「競合の4倍速い」というアピール

「Intel Evo platform」とは?

インテルは第10世代Coreにおいて、より"モダン"なノートPCを定義するための、プラットフォームレベルレベルでのシステム要件に相当する「Project Athena」を提唱していた。第11世代Core世代では、そのProject Athenaを"第2版"にアップデートするとともに、要件を満たした"モダン"なノートPCは「Intel Evo platform」準拠の製品としてブランディングされることになる。

その昔、モバイルノートPCを外に持ち出して場所を問わずインターネットに接続することが一般的ではなかった時代、モバイルインターネットに対応する製品であることをWi-Fiモジュールまで含めたPCシステムのプラットホームレベルでブランディングした「Intel Centrino」の現代版、といったところだろうか。ともあれネットにつなぎたいのでCentrinoのロゴシールが貼ってあるPCを選ぶ……といった当時の感覚と同様に、Evoロゴの有無でPCを選べるようになることを期待したものだろう。

  • Project Athena 第2版=Intel Evo platformがノートPCに求める要件

Tiger LakeとRenoirのベンチマーク比較

インテルの説明の中で、競合とみなされるAMDのRenoir(開発コードネーム)とTiger Lakeを比較した性能テストの結果も示されていたので、最後に紹介したい。

以下に掲載したスライドの通り、Tiger LakeはCore i7-1185G7、RenoirはRyzen 7 4800Uを使って比較しており、総じてTiger Lakeが圧倒的に高速という結果になっている。ただ、テスト環境が現実的に市場に出回るノートPC製品のハードウェア構成に寄せることを意識したものとなっており、例えばCore i7-1185G7のメモリがLPDDR4-4267MHzの場合に、Ryzen 7 4800UはDDR4-3200MHzであったりと、性能要因がCPUだけでなくプラットフォーム全体に及んでいるため、そこは留意いただきたい。