『映画 きかんしゃトーマス チャオ!とんでうたってディスカバリー!!』が4日から公開されるなど、原作誕生から75周年を迎えた今でも根強い人気の「きかんしゃトーマス」シリーズ。魅力的なキャラクターが多数登場することのほか、近年では「教育的効果」という側面でも注目を集めている。
物事に集中して取り組むことや、難題に立ち向かうこと、周囲の人と協力できることなど、「認知能力ではない能力」を指す非認知能力。「きかんしゃトーマス」と非認知能力の関係性が、東京学芸大こども未来研究所とソニー・クリエイティブプロダクツが発表した研究結果によって明らかになった。
研究では、CGアニメーション計204話を対象に、各話の中で描かれている主題をナレーションやキャラクターのセリフなどから抽出して分析。その結果、「話の中心を担うキャラクターが自分自身や他者、場、役割について理解を深めるような話(私・他者・場の理解)」と、「他者や場へ自身がどのように関わっていくかという話(他者・場への私の関わり方)」の2つの大分類に加え、それぞれに4つの小分類に整理されるという。
例えば、「それぞれの役割を理解し、尊重する」(他者理解)、「役に立つことと役割を果たすことの違い」(役割理解)、「友だちに指摘することは友だちを傷つけることではない」(他者への向き合い方)、「困難な状況であっても仕事を達成することの大切さ」(役割との向き合い方)など。各話で取り上げられる主題は、その回で中心を担うキャラクターの特性と密接に関係している。
「パーシーはパーシー」(第14シリーズ)では、ゴードンのようになりたいと思うあまり、「いつもの自分で良いということ」を前向きに捉えられていなかったパーシーだったが、トップハム・ハット卿からの言葉で「自分の良さ」を再認識。「自分らしくありたい」「そうあるべきだ」と感じ、自分を保つことができるように変容していく姿が描かれている。このように、ゴードンやトップハム・ハット卿との関わり方によって、自分のあり方を考え直すパーシーからは、周囲に溶け込んで同化していく「個のあり方」ではなく、自分らしさをもった存在として参加し、関わり合っていくことの大切さも示唆されている。
また、同研究では、「きかんしゃトーマス」に興味のある子どもの保護者を対象に質問調査(期間:2019年1月28日~2月15日 対象人数:202名)を実施。研究メンバーの森尻有貴氏は、「子どもたちへの影響として、認知能力とされる文字や言葉の理解、数字の理解、音楽や色への興味などが、保護者から挙げられました。また、非認知能力の中でも特に、社会のルールへの理解や人の役に立つこと、思いやりや協力などの概念が挙げられたことは、『きかんしゃトーマス』の世界観の影響を受けていることの特徴であると考えられます」と分析している。
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