ガチガチの穴熊に囲い、細い攻めをつなげて勝利。久保九段は序盤の工夫が生きず
永瀬拓矢王座に久保利明九段が挑戦する将棋のタイトル戦、第68期王座戦五番勝負(主催:日本経済新聞社)の第1局が9月3日に神奈川県「元湯陣屋」で行われました。結果は177手で永瀬王座の勝利。防衛に向けて幸先のいいスタートを切りました。
開幕局のため振り駒が行われ、永瀬王座が先手番になりました。後手の久保九段は得意の四間飛車を採用。永瀬王座は居飛車穴熊で対抗します。
従来の四間飛車の囲いは、美濃囲いか穴熊が主流でした。しかし、最近では△7二玉型で戦う形が流行しています。久保九段は王座戦の挑戦者決定戦で渡辺明二冠(当時)をその戦型で破ってタイトル挑戦を決めました。本局でも久保九段は△7二玉型を採用。そこからミレニアム囲いに陣形を進展させました。
両者仕掛けの糸口が見つからない中盤戦。飛車の細かい動きをともに繰り返し、千日手になるかと思われました。しかし、巧みな手順で手得をしつつ永瀬王座が打開。金銀四枚の銀冠穴熊を組み上げ、万全の態勢を構築しました。
一方の久保九段側には銀冠に組むくらいしか陣形を発展させる有効な手順がありません。結局、古くからある四間飛車対居飛車穴熊の戦いで出現する形に中盤で合流してしまいました。局後に久保九段は「昔ながらの形に落ち着いてしまった。工夫が無効に終わってしまった」と振り返りました。
これ以上待っていると、先手ばかり陣形が進展してしまうとみた久保九段が仕掛けたことで、いよいよ駒がぶつかります。久保九段は竜・金・と金で穴熊に迫りますが、永瀬王座は銀を投資して穴熊を補強。ただでさえ堅い穴熊が、金銀四枚のさらに堅い穴熊になりました。さらに相手の攻め駒を丁寧に消していき、ついには自陣にいる相手の攻め駒は金一枚に。これで安心して攻めに転じられます。
金を手にした永瀬王座は一段目の竜の利きを生かして、▲8一金△9三玉▲9一金と久保玉を端に追い、それから9筋に香を並べて寄せ形を築き上げました。相手の歩の頭に銀を打つなど、懸命に粘る久保九段でしたが、永瀬王座の寄せは的確。久保玉を詰まして勝利を収めました。
粘り強さに定評のある両者の対決らしく、1局目から177手という長手数決着。第2局以降も熱戦が期待できそうです。第2局は9月9日に京都府「ウェスティン都ホテル京都」で行われます。