きょう4日にいよいよ最終回を迎えるTBS系金曜ドラマ『MIU404』(毎週金曜22:00~)で、菅田将暉が悪役を好演している。前回の第10話では、これまで数々の事件を起こした黒幕と目されていたエトリ(水橋研二)が、ドローンによる爆破で死亡。エトリを操っていたのが久住(菅田)であることが判明し、久住と伊吹(綾野剛)&志摩(星野源)の対立構造が明確になった。

  • 久住役の菅田将暉

『MIU404』の大きな魅力は伊吹と志摩のコンビネーション。この2人、刑事としての資質や考え方はまるで違うが、法や人間としてのモラルという、犯してはいけないものを守りながら事件を解決していく過程で、それぞれが持ち合わせてないものを補てんしてくれるパートナーとして、なくてはならない存在になっていく。決してなれ合いではなく、厳しい部分を持ちつつ、相手を思いやる姿は、強い絆が感じられ心をくすぐられる。

そしてもう一つの魅力が、刑事ものでありながら、脚本家の野木亜紀子氏が紡ぐ人間物語だ。ところ狭しと張られた伏線によるサスペンス的な部分はもちろんだが、各回で起こった事件の犯人たちが持つ自身の正義を、非常に丁寧に描いている。もちろん犯罪であり悪いことだが、その事件を起こしてしまった本質に迫るメッセージに多くの人が共感できるからこそ、伊吹や志摩ら第4機動捜査隊のメンバーたちの行動にも感情移入できるのだ。

そんな大前提を、現時点ですべて覆しているのが菅田演じる久住だ。第3話に“謎の男”として登場すると、法律やモラルに則って捜査を進める伊吹と志摩を、あざ笑うかのように罪を重ねる。さらに、ここまでの展開で久住には、明確な動機が見えない。久住自身も「自分は人間ではない」と豪語するなど、完全なるヒール役だ。一方で、この久住には、ラスボスにありがちな、ステレオタイプ的な重厚感がない。だからこそ、なにをしでかすかわからない不気味さがある。

菅田と言えば、デビュー以来、さまざまな映画やドラマなどの映像作品に出演し、その演技力は高く評価されてきた。なによりも演じる役柄の幅の広さは特筆もので緩急自在。デフォルメされたコスプレチックな役柄を演じることもあるが、ビジュアル的な変化で見せるよりも、役の本質というか芯を捉えるのが非常にうまい。言いかえれば、見た目が同じでも、まったく違う人物をしっかりと表現できる俳優だと言える。

久住も、見た目は普通のあんちゃんなのだが、鈴鹿央士演じる成川岳をはじめ、人と接することよって滲み出てくる得体の知れなさは、視聴者になんとも言えない不安を与える。バックヤードがまったく描かれていないという部分を差し引いても、この不気味さは、観ている側に多くのことを想起させる。これまでも他の作品で、クズっぷりを表現することがあった菅田だが、さらにその上を期待できそうな久住。

第10話のラストでは、ネットを使ってフェイクの同時多発テロを演出し、第4機動捜査隊を翻弄した久住。菅田は、2019年放送の『3年A組 今から皆さんは、人質です』で、フェイクニュースを信じ、人を叩く浅はかな行動をする生徒たちを、命を懸けて糾弾する教師・柊一颯を演じていただけに、柊の裏面とも言える久住がどんな理由で罪を犯し続けているのか、それを菅田がどう表現するのか、興味は尽きない。

公式HPのあらすじでは、久住のフェイクニュースによって「伊吹と志摩の関係がギクシャクしてしまう」と書かれているが、久住が暗躍すればするほど、浮かび上がってくる真実が2人の絆を深めていくと思いながら、最終回を見届けたい。

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