ランドローバーの新型「ディフェンダー」に試乗してみて驚いたことがある。このクルマ、運転中にボンネットの下の地面の様子がモニターで確認できるのだ。「クリアサイト グランドビュー」というそうだが、一体、何のための機能なのだろうか。
悪路走破性と最新技術が融合!
ディフェンダーはオフロード走行を得意とするプレミアム4WDメーカー・ランドローバーのアイコン的な存在だ。新型は先代をオマージュしつつも角が丸く、ポップな雰囲気すら漂わせる独特なクルマに仕上がっている。
ディフェンダーには3ドアの「90」(ナインティ―)と5ドアの「110」(ワンテン)がある。110はオプションの3列目シートを装着して7人乗りとすることも可能だ。ボディサイズは90が全長4,510mm、全幅1,995mm、全高1,970mm(エアサスペンション)/1,975mm(コイルサスペンション)、110が同4,945mm、1,995mm、1,970mm。かなり大きなクルマなので、大排気量のエンジンが重低音をとどろかせて走るのかと思いきや、搭載するのは2.0Lのガソリンターボエンジン(最高出力300馬力、最大トルク400Nm)で、運転してみると室内の静かなことに驚く。
ディフェンダーの特徴は何といってもオフロードの走破性だ。横から見ると顕著だが、このクルマはオーバーハング(前輪の前方、後輪の後方に飛び出している部分)がとても短くて、タイヤの接地ポイントとクルマの先端・後端を結ぶラインの角度(前はアプローチアングル、後はデパーチャーアングルという)が大きい。これにより、悪路でも鼻やお尻を路面にぶつける心配が少ない。
「ランドローバー史上最も頑丈」なボディを持ち、総距離120万キロのテスト走行を経たという新型ディフェンダーは、オフロード試乗で持てる力の一端を発揮してみせてくれた。コースには崖のような段差や左右で高さの違うデコボコ道が待ち受けていたが、運転してみるとジェットコースター的な楽しさがあるだけで、難なく走破できてしまった。このクルマであれば、最大水深900mmの河を渡ったり、傾斜角45度までの坂道を登ったりもできるそうだ。
新型ディフェンダーの見どころはオフロード性能だけではない。無骨なイメージのクルマでありながら、最新機能も意外に充実しているのだ。例えばルームミラーはデジタルになっていて、後方の様子はカメラとモニターで確認できる。このクルマは後に荷物をたくさん積んだり、後のドアにスペアタイヤが付いていたりするので、デジタルミラーは後方視界の確保に必須ともいえる機能だ。駐車の際などには、「3D サラウンドカメラ」からの360度映像がかなり役に立つ。
地面が“透けて”見える「クリアサイト グランドビュー」もカメラを活用した機能だ。同機能はランドローバー「イヴォーク」から採用が始まったもの。フロントおよび左右ミラーのカメラ(計3つ)の映像をリアルタイムで合成し、ボンネットの下の状況をモニターに映し出すという仕組みである。
この機能をオフロードで使えば、クルマの下にある轍、岩、石、倒木などの障害物が確認できるので、避けて走るのに役立つ。オンロードでも、駐車場などで使えそうな機能だ。
新型ディフェンダーの価格はグレードにより幅があるが、最も安い「90」というグレードは499万円と意外な金額だ。具体的な価格帯は3ドアが499万~730万円(ファーストエディションという特別仕様は739万円)、5ドアが589万~812万円(同820万円)となっている。意外に安いと感じてしまったのだが、考えてみれば、使い倒してほしいといわんばかりにギア感満載のクルマなので、あまり高価だと乗り手も気が引けてしまうのかもしれない。もっとも、このクルマを購入するくらいの人であれば、ある程度は余裕のある暮らしをしているとは思うのだが……。