大手キャリアのサブブランドであるUQ mobileとワイモバイルが、契約したデータ容量を使い切ったあとも最大1Mbpsの速度で使い続けられる料金プランを相次いで投入しました。従来は、“ギガ”を使い切ると速度が300kbpsや150kbpsに落ちてしまい、ネットや動画配信サービスはほぼ使いものにならなくなりましたが、1MbpsだとYouTubeもZoomもストレスなく使えました。月額3,000円前後の低料金ながら使い放題感覚で利用でき、人気のiPhone SEの投入と合わせてサブブランドの魅力を大きく高める料金プランとなりそうです。
サブブランド2社に波及した“ギガを使い切っても1Mbps”
“ギガを使い切っても1Mbps”の先陣を切ったのが、4月に正式サービスを開始した楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT」です。当初、パートナーエリア(auローミング時)で容量を超過した際の通信速度を最大128kbpsに抑えていましたが、サービス開始直前に急きょ最大1Mbpsに引き上げて話題を呼びました。
これを受け、auのサブブランドであるUQ mobileは、月間10GBのデータ容量を使い切ったあとも最大1Mbpsの速度で使い続けられる新料金プラン「スマホプランR」を6月1日から追加。従来の料金プランは、通信速度が最大300kbpsに落ちてしまったので、3倍以上の速度で使い続けられることになります。スマホプランRの月額料金は2,980円(価格は税別、以下同)で、2年目以降もこの料金で使い続けられます。
ソフトバンクのサブブランドであるワイモバイルも、UQ mobileの発表を受けてすぐさま対抗。月額2,980円の「スマホベーシックプランM」と月額3,980円の「スマホベーシックプランR」の両プランで、データ容量を使い切ったあとの速度を従来の128kbpsから1Mbpsに7月1日から引き上げました。これにより、サブブランド2社の主力プランは“ギガを使い切っても1Mbps”で横並びになりました。
YouTubeなどの動画配信サービスは実用的に使える
今回、スマホプランRを契約したUQ mobileのSIMカードを利用し、1Mbpsの通信でどれほど実用的に使えるのかを、最新のiPhone SEで試してみました。iPhone SEは、UQ mobileとワイモバイルが8月中旬に相次いで取り扱うことを発表しています。
まずは動画配信サービスです。YouTubeは、動画の検索や選択した動画の表示などのレスポンスは良好で、ストレスはありません。動画は、480pまで解像度を引き上げてもほぼ途切れることなく再生できましたが、720pではまともに再生できませんでした。実用性を考えると480pや360pでの再生になりますが、iPhoneの画面サイズならば表示の粗さはそれほど目立たず、不満なく使えると感じました。
驚いたのが、アップルの動画配信サービス「Apple TV+」。タイトルを選んでから6~7秒ほどで再生が始まり、映像のクオリティはYouTubeのように粗くならず高品質で再生されました。民放テレビが見られる「TVer」やNHKの「NHKプラス」もおおむね不満なく視聴できました。1Mbpsで通信できれば、ほとんどの動画配信サービスは不満なく視聴できることが分かりました。通勤通学時や外出時も"ギガ"を気にせず動画を楽しみたい、という人は注目といえます。
映像を有効にしたZoomもなめらかに利用できた
次は、ビジネスシーンで利用する機会が増えたテレビ会議ソフトです。テザリングで接続したパソコンでWeb会議ソフト「Zoom」を使って試してみました。双方向で映像と音声のやり取りが発生することから、1Mbpsでは厳しいのでは…と思っていましたが、意外にも映像・音声ともなめらかで遅延もなく利用できました。社内外でテレビ会議が増えた…という人にはオススメだと感じます。
意外に苦戦したのが地図ソフトです。iPhoneの純正地図アプリ、Googleマップともに、通常の地図表示は問題なく使えたものの、航空写真を選択した場合は地図が表示されるまでいくぶん待たされることがありました。特に、純正の地図アプリでは、世界の主要な都市を上空から鳥のように飛び回って観光できる「Flyoverツアー」の機能が備わっていますが、データ容量が相当大きいようで、まともには楽しめませんでした。
Webブラウザーを用いたネットサーフィンは、おおむね不満なく利用できます。TwitterやFacebook、InstagramなどのSNSは、画像の表示が若干遅くなることもありますが、こちらも基本的にストレスなく使えます。ティックトックは動画の読み込みまでに2~3秒待たされ、スワイプで次々にサクサク見られる軽快感は損なわれました。
UQ mobileは好きなタイミングで低速に切り替えられ、ギガが節約できる
このように、サブブランド2社の“ギガを使い切っても1Mbps”は予想していた以上に使える印象を受けました。従来の300kbpsや150kbpsとは別次元の実用性の高さで、ほぼ使い放題の感覚でさまざまなアプリやサービスが利用できます。1つだけ注意したいのが、UQ mobileは直近3日間の通信容量が6GBを超えた場合、速度制限がかけられること(節約モードで使った場合も制限の対象)。あまり豪快に使いすぎると、1Mbpsでは通信できなくなる可能性があることは留意しておきましょう。
通信速度や料金でガチンコ勝負といった印象のサブブランド2社ですが、注目すべき違いが1つあります。UQ mobileは“ギガを使い切っていなくても1Mbps”に変更できる機能を備えており、高速データ通信量を節約できるのです。
UQ mobileは、高速通信を利用する「高速モード」と、強制的に低速通信にする「節約モード」が、専用アプリ「UQポータル」で簡単に切り替えられます。節約モードにすると速度が1Mbpsに落ちますが、どれだけ通信しても通信量が減らなくなるので、「月末に出かける用事があるので、今は節約しておきたい」という使い方ができます。ワイモバイルはこのような切り替え機能がないので、使い勝手の面ではUQ mobileが一歩リードしているといえます。
“ギガを使い切っても1Mbps”で魅力を高めたサブブランド2社、iPhone SEの取り扱い開始を追い風に、「最新のiPhoneを使いたい」「動画やネットをガンガン使いたい」「だけど大手キャリアの料金は高い」と考える人に響く存在となりそうです。