落ち着いた指し回しで稲葉陽八段相手に完封勝利

第79期順位戦A級(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)の▲稲葉陽八段-△豊島将之竜王戦が8月31日に関西将棋会館で行われました。結果は146手で豊島竜王の勝利。およそ2週間前に名人を失冠した豊島竜王は、2期ぶりの順位戦で白星スタートを切りました。

先手の稲葉八段は角換わり早繰り銀を採用。豊島竜王は金銀4枚で守りを固めた後、稲葉八段の早繰り銀を目標に十字飛車の筋で反撃します。飛車を縦横無尽に活用してポイントを稼いだ豊島竜王。その間に稲葉八段は角を敵陣に打ち込み、馬を作ります。

ところが、稲葉八段のこの馬を作る構想があまり良くなかったようです。豊島竜王はその馬を捕獲するため、自陣の角・金・銀を細かく繰り替えます。そして馬を作られてから13手後に、ついに馬の逮捕に成功しました。稲葉八段は馬を切って金を取り、豊島竜王の角を入手して駒損は回避。しかしこの折衝で、角と金を持ち駒にし、隙のない陣形を構築できた豊島竜王がリードを奪ったようです。

豊島竜王は歩と角のコンビネーションで馬を作りました。先ほどの稲葉八段の馬とは違い、この馬は大活躍。盤上を所狭しと駆け回り、優位拡大に貢献。稲葉八段も必死に手を作ろうとしますが、豊島竜王は丁寧な受けでその芽を摘んでいきます。

稲葉八段は苦心の手順の末、ようやく敵陣に竜を飛車取りで作ることに成功しますが、時すでに遅し。豊島竜王は飛車を見捨てて稲葉玉に詰めろをかけます。受けのない稲葉八段はやむなく飛車を取りましたが、稲葉玉を詰ます豊島竜王の次の手を見て投了を告げました。

大駒を存分に働かせて盤上を終始支配した豊島竜王が、失冠した名人を取り戻すためのリーグ初戦を白星で飾りました。今年は名人戦が変則日程で行われたため、一人対局の消化が遅れている豊島竜王。次局は半月後の9月15日に行われる菅井竜也八段戦です。

幸先の良いスタートを切った豊島将之竜王
幸先の良いスタートを切った豊島将之竜王