「企業ブランディング」とは、消費者・顧客などのターゲットやステークホルダーに向けて、自社の特定イメージを持ってもらうことを目指して企業が行う一連の活動です。別称をコーポレート・ブランディングともいいます。
企業ブランディングのメリット
企業をブランディングする上でのメリットは、大きく2つ挙げられます。
競合他社との差別化の必要性
1つ目のメリットは、競合他社との差別化につながる点です。
例えば、自社のブランディングイメージに好印象を持っている消費者は、自社製品と競合他社の類似製品を見かけた際に、無意識に自社製品を選んで買ってくれる可能性があります。また、好きな俳優がCMに起用されていることが購買意欲につながることも往々にしてあります。このように、他社と差別化してブランディングを行う必要性があるのです。
会社で働く人に統一感が生まれる
2つ目のメリットは、会社で働く人に統一感が生まれる点にあります。
会社が何かの選択に迷った際、経営者は「何を基準に物事を進めるか」を考える必要があります。
時には時代の波に乗ることも大切ですが、会社の発信する内容にブレがあると、社員は何を基準に判断すべきかわからなくなってしまいます。
そうした状況において、企業ブランディングの基盤がきちんとある場合には、目指すべき方向を会社全体で共有することができます。
それにより、社員一人ひとりがモチベーション高く自走しつつも、それぞれが同じ方向を向いている――といった良い状態を維持できるのです。
企業ブランディングは、ただ「商品を売るだけ」ではなく、強い組織の構成や、営業活動、人材採用といった幅広い領域においてもプラスの影響をもたらもす可能性を秘めているのです。
企業ブランディングのデメリット
以上、企業のブランディングには大きなメリットがあることを紹介しました。ただし、以下の2点を失敗してしまうと、せっかくのブランディング活動にもデメリットが生じてしまいます。
- 自社を客観視できずに、ステークホルダーに求められていないブランディングをしてしまう
- ブランディングを一掃するタイミングを読み違えてしまう
これらのことをしてしまうと、ステークホルダー・顧客に悪い印象を与えてしまう可能性がありますので、注意が必要です。
企業ブランディングの実際の方法
ブランディングにあたっては、①現状分析→②目指す位置の明確化→③具体的な施策考案→④施策の実装と効果検証 という手順が必要となります。以下、順を追って説明します。
①現状分析
まずは、現状分析です。
企業の現状を把握してみましょう。競合他社として比較してみた時の自社の位置、現在の売り上げ、利益率、特性、それらを相対的に分析します。
②目指す位置の明確化
次に、目指す位置の明確化です。
ここでは、「どんな企業を目指したいか」を決めましょう。それを決めた上で、他社とは違う自社の強みは何なのか、実際にどんなイメージが世間に定着しているのか、といった点について整理していきます。
③具体的な施策考案
次に、具体的な施策考案です。
実際にどんな施策を使用し進めていくのか具体的な戦略を練りましょう。
④施策の実装と効果検証
最後に、施策の実装と効果検証です。
実際に打ち出した施策を継続的に行い、効果検証を繰り返し、必要であれば戦略を見直し、ブランディング活動を続けていきましょう。
同じ会社であっても、時代の流れや世の中のフェーズによって、求められるポジションは移り変わっていくものです。だからこそ、何度も施策の効果検証を繰り返し、その時代にあった手法を継続する必要があります。
企業ブランディングの重要な点
企業ブランディングで重要なのは、タイミングと届け方です。以下、順を追って説明します。
ブランディングするタイミング
ブランディングを考える上では、会社が現状どういったフェーズにいるのか、ということをしっかりと把握する必要があります。
創業期にブランディングを構築したとしても、それを10年も使いまわしていたら、次第に現状とのギャップが生じてしまうことでしょう。
時代の流れとともに、人の価値観や会社の目指す場所は変わっていきます。ブランディング活動には、適切なタイミングでの修正・変更が必要なのです。このように、ブランディングの内容を変更することを「リブランディング」といいます。
リブランディングは、ビジョンの変更や経営方針の変更、プロダクトのイメージの転換などを目的に行います。
たとえば、社長が変わったり、主要プロダクトの運営者が変わったりした場合には、目指すべき方向と、その時点でのブランディング内容がズレてしまうことがあるでしょう。そういった際にリブランディングを行うことが効果的です。
リブランディングは時として、「起死回生の一手」となり得ます。しっかりとタイミングを見極め、打ち出すようにしましょう。
ブランディングメッセージの届け方
ブランディングを行う上では、「そのブランドだから提供できる価値」や「社会的な役割」、「ビジョン」などを明確にし、さまざまな手法で情報を発信していくように計画を立てましょう。この際、自社のブランディングがどういった場所に刺さるのか、という特定のターゲットを掲げることが有効です。
ブランディングを行う際には、自社のウェブサイトへの掲載や商品ロゴの変更、パッケージの変更、新しいキャンペーンの打ち出し、SNS投稿やイベントの開催など、会社を挙げて広報活動などを行い、届けたい相手にしっかりと届けられるような導線を作りましょう。
企業ブランディングの実際の成功事例
最後に、企業ブランディングの成功事例について紹介します。
「龍角散」のブランディング
まず、のど飴で有名な「龍角散」を例に挙げます。
今でこそ若い人にも認知されている龍角散ですが、一時期はユーザーの高齢化によって、売り上げが下がるばかりで会社の存続の危機になった時期がありました。そのタイミングで同社では、今までの龍角散のイメージを一掃し、新しくブランドを立て直すことで窮地を脱したのです。
同社が行ったのは、ユーザーへのヒヤリングでした。ヒヤリングの結果、妊娠中の女性や、持病があり、薬を服用している人に対して「病院が服用を勧めていた」ことがわかったそうです。
実は、そうした状況は社内では「当たり前」に受け取られていたそうで、あえてアピールポイントとはしていなかったそう。
しかし、ユーザーヒアリングの中で、その特性が社会に対して価値を生み出すことが分かり、“どんな人に対しても安心して使える薬”としてのリブランディングを実施し、結果、龍角散を人気商品とすることができました。
海外企業の例
次に紹介するのは、Appleです。
Appleと聞くだけで、誰しもが「iPhoneやiPad、Macを製造している会社だ」と想起することでしょう。そして、多くの人はそれらのデバイスに「革新的」「洗練されている」「知的」「スタイリッシュ」といった印象を持つのではないでしょうか。
同社は、それらのデバイスの見た目だけではなく、OS(オペレーティング・システム)の提供を始めとする“デバイスの使用体験”や、情報の打ち出し方、製品の魅せ方などのすべてにこだわることにより、高いブランド価値を創造しています。
たとえば、同社は2003年11月、日本初の直営店となるストアを、高級ブランドの並ぶ銀座にオープンしました。これは同社製品のブランド力を高めるための戦略の1つです。Appleは、こうしたブランディングを積み重ねることにより、戦略的に消費者に「スマホを買うなら、とりあえずiPhone」と想起させているのです。
まとめ
以上、企業ブランディングについて紹介しました。
一般に、創業時のブランディングよりも、すでにあるものから新しいものへの再構築する方が難しいと言われています。ですが、難しいからこそ、そこには可能性もあります。
他にもブランディング・リブランディングにより成果を生み出している企業は多く存在しますので、興味のある方は是非、探してみてください。