日本を代表する5組の監督とキャストが“緊急事態”をテーマに自由な発想で撮り下ろしたオムニバス映画『緊急事態宣言』(28日よりAmazon Prime Videoにて独占配信)の一編に、「第43回高崎映画祭」での最優秀主演女優賞受賞も記憶に新しい女優の夏帆が出演した。
世界中をパニックに陥れている新型コロナウイルス感染症の影響は日本でも例外ではなく、政府による「緊急事態宣言」の発出、「外出自粛」「三密回避」「テレワーク導入」など人々の生活は一変したが、このような緊急事態の最中で生まれた『緊急事態宣言』は、この未曽有の“緊急事態”の記憶を、あるいはそれがもたらした変化や意味を、5人の監督たちの手で「映画」 の形へと刻み込む試みだ。
夏帆は、三木聡監督の短編『ボトルメール』に出演。コロナ第二波が来る少し前、不倫で仕事を干された女優・鈴音の下に謎のメールが届き、その指示に従って出かけた新作映画の主演オーディションで見事合格するも、予測不能な運命に巻き込まれていくというストーリー。もともと憧れだったという三木監督作品に初参加した夏帆に、作品のこと、コロナ禍の影響を受けるエンタメ界のことなど、さまざまな話を聞いた。
――観る人によって受け止め方がさまざまな、すごく不思議な作品だと思いますが、夏帆さんは本作の魅力をどう感じていますか?
最初に脚本をいただいた時に「これは一体どういうことなのだろう」と思いました。すごくシュールで不条理で。私は三木さんの作品がすごく好きで、三木さんとご一緒してみたいという思いで今回参加したので、自分としては三木組に参加できたということだけでうれしかったんですけど、観る人はどんな風にこの作品を受け取るのか、すごく気になるところではあります。
――三木監督の作品へは、憧れに近い思いを抱いていたそうですね。
三木監督にしか出せない空気感や笑いがありますよね。そういう世界観がシンプルに好きだったということもあって、いつか三木組に参加することができたらと思っていたんです。
――実際に参加してみていかがでしたか?
3日間という短い期間での撮影で、もう少しこの現場にいたかったなっていうところで終わってしまったのですが、すごく楽しかったです。そもそもの台本が面白いので、それを表現していく過程も演じていて面白かったです。その独特の空気感をお芝居として表現することは難しかったのですが、ちょっと違うってなったら的確に演出してくださいますし。ただ、なんとなくリズムがつかめてきたな、というところで終わってしまったので、もう少し鈴音を演じていたかったというのが正直な感想です。
――演じられた鈴音は夏帆さんと同じ女優ですが、役作りで意識したことはありますか?
この作品ではどういうトーンで演じていけばいいのか、台本を読みながら作品の全体像を想像し、そこから役を作っていった感じです。つかみどころのない作品でもあるので難しいなとは思いましたが(笑)、三木さんがどういうイメージで撮りたいのか自分の中で想像してキャラクターを作っていきました。
――よく言う自分に近い遠い、みたいな分析ではないわけですね。
今回は、自分のよく知っている身近な職業なので、むしろ意識しないくらいでした。自分が知らない職業の人を演じる場合、事前にいろいろと勉強するのですが、女優の仕事はよく知っているので、自分と重ねるとかではなく、作品の中でどういう風にこのキャラクターが動いていくのかというところから人物を作っていった感じです。
――鈴音は不倫で仕事を干された設定ですが、その点は何か意識しましたか?
三木監督が言われていたことは、単純に最初から追い詰められているという状況を表現するためだったそうです。約30分という短い尺なので、最初にすぐ追い詰められていることがわかるように、コロナという状況下なだけではなく、不倫をして干されて仕事がなく、その結果、ボトルメールの誘いに乗っかるというように物語に入っていく。そのために不倫という設定を使ったそうなので、それ以上に特別意識するということはなかったです。