Huaweiの新スマートフォン「HUAWEI P40 Pro 5G」。国内ではSIMフリーモデルとして販売されており、米中の政治摩擦から「Google Mobile Services(GMS)」が搭載できず、「HUAWEI Mobile Services(HMS)」のみを搭載している点も話題になりました。しかし、独ライカと提携して格段にカメラ画質が上がったPシリーズの最新モデルとして、カメラへの期待度が高い製品です。

今回、Huawei本社のConsumer Business Groupで端末ビジネスのマーケティングエキスパートを務めるSteve Lai氏がオンライン取材に応じ、P40 Proの詳細を説明しました。

  • グループインタビューに応じたHuawei Consumer Business GroupのMarketing Expert of Handset Business、Steve Lai氏

Pシリーズを振り返ると、P9でライカと提携、P10でポートレート機能を強化、P20ではAI機能でシーン認識に対応、P30ではRYYBカラーフィルターを導入した世界初のセンサーを投入しました。P20以降、「AIの撮影技術も積み重ねた」とします。「ファーウェイのスマートフォンのカメラ機能は業界でもかなり先端を走っていると思う」(Lai氏)

  • HUAWEI P40 Pro

  • P40 Proのカメラ。上位モデルのP40 Pro+は望遠カメラが10倍ズームになっています

RYYBセンサーの導入以前、Huaweiがスマートフォンカメラの写真を分析したところ、「昼間の撮影がほとんど。夜の写真が少ない理由を調べると、当時のスマートフォンカメラだと夜は鮮明な写真が撮れない問題があった」とLai氏。そのため、スリムなスマートフォンの本体でもより多くの光を取り込めるようにしたいというのが、RYYBセンサー導入の原点でした。

  • P40のメインカメラのセンサー。RYYBだけでなくセンサーサイズ自体が大型化しています

  • RYYBセンサーは、従来のRGGBセンサーに比べて40%以上の光を取り込めるといいます(画像はP30の発表会から)

RYYBセンサーは、従来のRGGBセンサーよりも光を多く取り込めるという特徴がある、とされています。「カメラから見てもスマートフォンから見ても新しい技術」(Lai氏)であり、「さまざまなアルゴリズムの開発や検証、チューニングを経て今に至った」(Lai氏)そうです。

  • 夜景が手軽に美しく撮れる点もアピールしています

それでも、P30 Proに搭載した第1世代のRYYBセンサーでは、シーンによってイエロー被りが発生するという問題がありました。Huaweiもこれを認識していたようで、「P40 Proではだいぶ改善した」といいます。

第1世代からP40 Proの第2世代へと、メディアや消費者からのフィードバックを踏まえて、どのような改善をすべきか調査をしてきたそうです。スマートフォンカメラの撮影シーンはさまざまで、昼間や夕方といった時間帯、逆光など光の状況、さらに背景が単一色でそれに引っ張られて色が転んでしまうといった問題もあります。

こうした各種の状況に対応できるように、アルゴリズムを細かく改良することで、色被りを減らして画質を向上させたそうです。RYYBセンサーという独自技術は、上海のハードウェアチームや各国のアルゴリズム開発チームなどと連携し、「グローバルな協力の結果」(Lai氏)だとしました。

さて、P40 Proに搭載された機能としては、AIを活用した「Golden Snap」が挙げられます。4K動画の中からベストショット(1~3枚)を提案する「AIベストモーメント」、連写した写真を合成して背景の通行人を消す「AI通行人を除去」、ガラス面への反射を取り除く「AI反射を除去」という3機能が現時点で用意されています。

【動画】通行人除去の様子。アニメーション写真を撮影後、編集からベストショットが選択され、そこから選択した画像の通行人を除去できます。動画内では2回、除去に失敗しており、完璧とはいえませんが、ヒット率はまずまず高く、うまく除去できるとかなり効果的です

スマートフォンカメラの利用分析で見つかった課題として、「一番すばらしい瞬間を撮影するのは難しい」という点もありました。これはもちろん、プロのフォトグラファーでも難しいものですが、プロは複数の機材や長年の経験によって、最高の一瞬を狙って撮影しています。

対して「誰でも簡単にすばらしい瞬間を撮れるようにしたい」というのがファーウェイの目標とのこと。スマートフォンカメラの撮影シーンで最も多いのは家族や友人と一緒に撮る写真で、2番目は旅行中の写真だったそうです。こうしたシーンで「撮りたいのに撮れない写真」には、例えば子どもの笑顔や泣いている瞬間、ガラス内の展示物などがあります。また、観光地での家族写真に通行人が入り込んでしまうことも多いものです。

これをAIで解決しようとしたのがGolden Snapです。「いつでもどこでも、P40 Proを使えばすばらしい一瞬を撮れるようにした」と、Lai氏はアピールしています。

スマートフォンのカメラによって、「ユーザーがより多くの写真を撮るようになった。昔は特別な場面で写真を撮っていたものだが、現在は日常のさまざまなシーンで多くの写真が撮られている」と、Lai氏は現状を認識しています。「スマートフォンがより正確に光の状況や環境を判断できるようになった」(Lai氏)という反面、まだまだ色被りが発生するような場面はあります。P40 Proでは正しい色を再現するために色温度センサーも搭載し、アルゴリズムによってもより正確な色温度を認識できるようになったとしています。

ほかにも、P40 Proのカメラにおけるポイントとして、Lai氏はペリスコープタイプのレンズを搭載した点を挙げます。屈曲光学系を採用したことで、メインレンズ比で約5倍という望遠カメラを搭載しつつ、本体の軽量化、スリム化を実現しました。

「Huaweiではスマートフォンのユーザーエクスペリエンスを重視している」とLai氏は強調。バッテリーの持ち、各種通話機能、防水、ワイヤレス充電などと、機能を高めていくと本体の重さや厚さが増します。「P40 Proのカメラに最新技術を導入することでスリムさを保っている」(Lai氏)というのは大きなポイントのひとつでしょう。

Huaweiはハードウェアとしてのスマートフォンカメラの開発だけでなく、カメラ文化への貢献も考えています。一例としてファーウェイ・ジャパンでは、「HUAWEI NEXT-IMAGE Awards」を2017年から毎年開催。自分の写真をシェアしたい、ほかの人の写真から学びたいといったニーズに応えようともしています。Lai氏は「こうしたプラットフォームを通じて世界中でコミュニケーションができるようにしている」と結びました。