永瀬拓矢二冠、郷田真隆九段、山崎隆之八段が全勝キープ。他棋戦では好調の棋士も苦しむハイレベルな争い
第79期順位戦B級1組4回戦(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)が8月27日に東西の将棋会館で行われました。リーグ参加棋士13人による総当たりで行われるB級1組。1年をかけて昇級者2名、降級者3名を決めます。
27日の対局結果は以下の通りでした(左の勝ち)。行方尚史九段は4回戦抜け番です。
〇永瀬拓矢二冠-深浦康市九段
〇郷田真隆九段-阿久津主税八段
〇屋敷伸之九段-木村一基九段
〇松尾 歩八段-近藤誠也七段
〇久保利明九段-丸山忠久九段
〇山崎隆之八段-千田翔太七段
その結果、4回戦終了時点での各棋士の成績は以下の通りです(かっこ内の数字は順位)。
4勝0敗:永瀬二冠(5)、郷田九段(7)
3勝0敗:山崎八段(11)
3勝1敗:千田七段(6)
2勝2敗:久保九段(2)、深浦九段(4)、屋敷九段(8)、松尾八段(9)
1勝2敗:木村九段(1)、行方九段(3)
0勝3敗:近藤七段(13)
0勝4敗:阿久津八段(10)、丸山九段(12)
序盤戦が終了した時点で、負けなしは4勝0敗の永瀬二冠、郷田九段、3勝0敗の山崎八段の3人。スタートダッシュに成功しました。
永瀬二冠は流石はタイトルホルダーという成績。豊島将之竜王の挑戦を受けている叡王戦では、3勝2敗2持将棋で防衛にあと1勝としています。9月6日に行われる第8局で防衛を決められるでしょうか。また、王座の防衛戦も9月3日から開幕。こちらは久保九段が挑戦者です。大勝負が続く9月、10月には順位戦も3局行われます。勝負の2カ月となりそうです。
郷田九段はタイトル獲得6期、A級13期、名人挑戦2回の実績を持つ「羽生世代」のトップ棋士。第74期A級で降級してしまって以降B級1組での最高成績は指し分けにとどまっています。絶好のスタートを切れた今期はどうでしょうか。
山崎八段は第67期から13期連続でB級1組で戦っています。オリジナリティあふれる陣形を、力強い指し回しでまとめ上げてしまう山崎八段。唯一無二の山崎将棋を、A級の舞台で見ることを諦められないファンは多いはずです。
前期はB級1組に所属していなかった棋士は苦戦気味です。
A級から降級してしまった木村九段と久保九段はすでに2敗。しかしながら、ここで踏ん張って勝ち星を積み重ねれば、順位の良さを生かして逆転も可能でしょう。成績上位3人との直接対決は、木村九段が永瀬二冠との対局を消化したのみ。まだまだこれからです。
一方、B級2組から昇級してきた丸山九段と近藤七段は黄色信号点灯でしょうか。
丸山九段は竜王戦では挑戦者決定三番勝負に進出し、ここまで1勝1敗とタイトル挑戦まであと1勝に迫っています。その活躍ぶりとは対照的な順位戦での成績となってしまっています。
近藤七段は順位戦の高勝率で知られる若手棋士です。これまで順位戦は4期戦い、9勝1敗(C級2組)、8勝2敗、9勝1敗(C級1組)、8勝2敗(B級2組)と常に好成績を残してきました。9勝1敗の成績だった第77期C級1組では藤井聡太七段(当時)を破っての昇級。藤井二冠が順位戦で敗れたのは、後にも先にもこの1局のみです。ところが今期はすでに3敗。「鬼のすみか」と呼ばれるB級1組の洗礼を受けています。
今期からB級1組の降級枠は3つになり、熾烈さが増しています。両者まだ白星がなく、早く1勝目をあげたいところです。
来年の3月11日に最終局の13回戦が行われる長丁場の順位戦。最後に笑う棋士は果たして誰になるのでしょうか。