原宿にあるコミュニティ型ワークスペース「WeWorkアイスバーグ」のキーマンであり、業界を超えたコネクターとして活躍する髙野一朗氏。髙野氏の人柄からか、毎日多くの相談が彼のもとに寄せられると言います。そこから生まれたプロジェクトも数知れず……。

なにが人を惹きつけ、新たなプロジェクト・仕事を生み出すのか。本稿では前回に続き、税理士でありながら幾つもの事業を立ち上げてきた連続起業家のSAKURA United Solution代表・井上一生氏が、髙野一朗氏と対談を行いました。

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関係を深めるために"あえて"肩書を捨てる

井上一生氏(以下、井上)――「髙野さんは、WeWorkを訪れてくれた人をフェイスブックなどで紹介していますよね」

髙野一朗氏(以下、髙野)――「そうですね。紹介すると、みなさん結構喜んでくださるので、それが楽しくてずっと続けています。それでまた会いに来てくれる人もいますしね」

井上――「それが、髙野さん流の人脈術なのかもしれませんね」

髙野――「"人脈"という言葉はあまり好きではないので、"仲良くなる"と言っています。単に仲良くなって、また来たいとか会いたいと思ってもらえればそれで良いんですよね。そこからケミストリーが生まれていくと思っていますし」

井上――「だから髙野さんはコネクターと呼ばれるのかもしれませんね。そういうお人柄がベースにありますね」

髙野――「独立当初は、"アパレル企業向けのマーケティングコンサルタント"という肩書があったのですが、その肩書だと決まった人しか来てくれないんですよ。つまり、アパレル業界で仕事をしていて、困っている人しか会いに来てくれない。今は、何気ない会話からつながりが広がったり深まっていくのが楽しいんです。だから、肩書がジャマになるときがあります。あえて肩書やなにをしているか語らないということも最近は増えましたね」

髙野――「井上さんにも、毎日たくさんの相談が来るのではないですか?」

井上――「そうですね。税理士という仕事柄、やはり社長さんからご相談を多くいただきます」

髙野――「井上さんの場合、一般的な税理士の先生とは違って、なんでも相談したくなってしまいますね。普通だったら、税理士さんに相談するのは税金のことや資金調達のことが中心だと思うのですけど。井上さんは活動領域が広いので、あれこれ相談してみたい(笑)」

井上――「税理士事務所の経営者"も"やっているという感覚かもしれないですね。気質は経営者ですから、ベースにあるのは経営者としての精神です。仕事の基本は、何らかの課題解決です。私たち会計事務所や税理士にとっては、社長さんの課題を解決することが仕事の本質です。だから、社長さんやそのご家族に幸せになっていただければ良いんですよ。その仕事の本質を忘れてはいけないと思っています。それが守られれば、肩書は何でも良いですし、むしろジャンルレスでありたいですね」

髙野――「そこまで考えてくれる税理士さんって、あまりいないですよね。なんでも相談できる環境づくりの一環として、WeWorkという空間があるのかもしれませんね」

  • WeWorkについて話す2人(左) 髙野一朗氏(左)井上一生氏

本音を吐き出せて、本音を聞き出せる場所

井上――「相談からスタートして、具体的なプロジェクトに発展するケースも多いと思いますが、プロジェクトを進めるときにどのようなことに気をつけていますか?」

髙野――「『いつまでこのプロジェクトに関わっていて良いのかな?』と不安になる人も中にはいるのですが、そういうときに本音を聞き出すようにしています。WeWorkは15:00以降はビールが飲み放題ですから、本音を聞くきっかけとしては良いですよね。座って話をすると堅苦しくなりますから、ビールを片手に立って雑談をするというのが、ちょうど良いんですよ」

井上――「それは良くわかります。飲みニケーションというと古く感じてしまうかもしれませんが、オフィスの中でちょい飲みできるというのは良いですよね。社員に対しても学生に対しても、お互いに本音で語り合いたいというのがあります。けど、組織が大きくなるほどそれが難しくなっていってしまって。本当は、社員の退職後のことも本音で語り合いたいくらいんですよ。とにかく本音を知りたい。それは、お客様に対しても同じですね」

髙野――「プロジェクトの場合、続けることが重要で、辞めることが失敗。だから、続けるためにあえて戻ったり立ち止まったりする。そういうことができる空間が大切だと思います。立ち止まって本音で語り合うことで、またやる気が出るということもありますしね」

井上――「髙野さんは、人に対してすごく思いやりのある方ですよね。人の人生を思いやるって、これからの経営者や起業家にとって極めて大切なことだと思います。会社や経営者に大切なのは、技術や営業力だけじゃないですから」

人をつなげるときは注意も必要

髙野――「井上さんも顔が広いので、これまでたくさんの人を紹介してきたと思いますが、注意していることはありますか?」

井上――「そうですね。髙野さんもご存知のとおり、人と人をつなげることは楽しいこともあるのですが、一方で怖いこともあります。友人から紹介されて会ってみたら、その人が実は大脱税犯だったということが過去にありました。紹介者に悪意はなくても、結果的に良くない人を紹介してしまうということはあると思います。紹介者の責任ということもありますが、あくまでも最後は自己責任。紹介する前に、しっかりと双方に相手のことを伝えておくとが大切です。その後ビジネスの関係や利害関係に発展したとしても、紹介者として結果のすべてに責任は持てないことはあらかじめ伝えておく必要がありますね」

髙野――「それは大切ですね。私も、半年で袂を分かつことになったプロジェクトがありました。友人から人を紹介されて始まったプロジェクトでしたが、すべてのプロジェクトがうまくいくとは限らないですからね」

リアルとリモートの両方を活用する

髙野――「先日は、WeWorkの入居者向けにコロナ禍における資金調達や財務のセミナーをしていただきましたが、とても反響がありましたね」

井上――「その企画を実現できたのも、髙野さんのおかげですよ。このような状況ですから、Zoomを使ったオンラインセミナーでしたが、好評で2回目も開催できて嬉しく思っています。髙野さんは、最近はZoomなどリモートでのやり取りが増えていますか?」

髙野――「そうですね。かなり増えています。正直、緊急事態宣言の間はきつかったです。切れ目なくずっとオンライン会議をしている状態で、Zoom疲れという感じでした。リモートでは伝わらない感覚があるなって最近は強く感じています。相手が『リラックスしてるな~』とか『ビールを飲みたそうだな~』とか。そういう直感が働くのは、やはりリアルですね。なので、リモートが普通になっても直接会うことを大切にしたいですし、『リモートじゃなくて直接会いたい』と相手に思ってもらえることが大切だと改めて思います」

井上――「その点、WeWorkはリアルとリモートの両方で活用できますね。会いに来てもらうにも良い環境ですし、WeWorkという背景でYouTubeやオンラインセミナーで情報発信をしても良い。ある意味ではスタジオとして活用できると思います。実際に、YouTubeチャンネルを私たちも始めました。経営に役立つ情報も、どんどん発信していこうと思っています。髙野さんにも動画で登場していただきますし(笑)」

髙野――「宜しくお願いします(笑)。仕事で着る服をまとめ買いして、パラレルワークとして、法人ではなく社長個人の確定申告で経費計上するというお話も面白かったです。その話の詳細は動画でということで」

井上――「動画の告知もしていただいて、ありがとうございます。『SAKURA 知らなきゃ損する経営 HOW TO』で検索すると、動画にたどり着けると思います。本日は、ありがとうございました。この記事や動画を見て気になった方は、ぜひWeWorkに会いに来てほしいですね」