アイロボットといえば、ロボット掃除機の定番ともいえるルンバや、床拭きロボットのブラーバで知られたメーカー。ルンバとブラーバに共通しているのが、上位モデルに搭載されているWi-Fi機能です。Wi-Fi機能を搭載したモデルは専用アプリを使って遠隔操作をしたり、ロボット掃除機が学習した「部屋の地図」を使って進入禁止エリアを設定できたりします。

  • お掃除ロボット「ルンバ」「ブラーバ」のWi-Fi対応モデル、新しい専用アプリは「iRobot Genius ホームインテリジェンス」

そんなルンバとブラーバのWi-Fi機能がさらに進化。アイロボットは8月26日、「iRobot Genius ホームインテリジェンス」と呼ばれるiRobot HOMEアプリの大規模アップデートを発表しました。「本体のモデルチェンジじゃなくてアプリのアップデートだけ?」と思うなかれ、このアプリアップデートによって、ルンバとブラーバで「できること」がかなり増えています。今回、アプリの進化で掃除がどう便利になったかを、実際の部屋で体験してきました。

  • iRobot Genius適用後の基本画面。メイン画面からさまざまな機能にアクセスでき、従来アプリより直感的でわかりやすくなっています

ロボット掃除機がソファや椅子まで自動で認識!

スマホやタブレットで操作できる高機能ロボット掃除機の特徴は、各種センサーを駆使したマッピングで「部屋の地図」を作れることでしょう。部屋の形を正確に認識することで効率的な掃除ルートを割り出すほか、アプリ側で地図を「リビング」「キッチン」といったエリアに区切り、「今日は廊下だけ掃除」といった指定ができます。

  • こちらがiRobot Geniusの新機能を体験した部屋。キッチンとダイニング、リビングが一続きになった部屋です。ソファやテーブルなどの家具が点在しています
    協力:積水ハウス 品川シーサイド展示場

  • 新アプリの機能を体験した部屋の間取りと(写真上)、この間取りにルンバで作ったマップを重ねたところ(写真下、紫色部分)。ここでは手動で「リビングルーム」や「キッチン」とエリアを区切っています

【動画】ブラーバにパントリー(食料庫)を掃除するように指定したところ。脇目もふらず、最短距離でパントリーに向かって行って掃除してくれました

アイロボットの従来アプリにも、もちろんこの機能はありました。ですが新しいiRobot Geniusはさらに進化しています。その1つは「部分清掃エリア」が指定できるようになったこと。

従来のアプリでは、「掃除機に侵入されたくないエリア」を赤い四角で登録していました。新機能は逆に「掃除してほしいエリア」を青い四角で登録する機能を追加。従来も「(キッチンや子ども部屋など)指定した部屋だけ掃除させる」という機能はありましたが、新機能ではより狭い範囲を複数指定できます。

  • マップ表示した下部、「侵入禁止エリアを追加」「クリーンエリアを追加」から、進入禁止場所や清掃場所を簡単に追加

とはいえ、エリアを指定したり、汚れる場所を選んだりという作業が面倒という人も多いでしょう。そんな人にもぴったりなのが、iRobot Geniusでもっとも特徴的だと感じた新機能「物体認識」です。新アプリを使うと、部屋をマッピングするとき「家具」まで自動的に判別してくれるようになりました。

以下の写真がiRobot Geniusで実際にマッピングした部屋の地図。水色の線で囲まれた四角いエリアが自動認識した家具で、ここでは「ソファ」と「ダイニングテーブル」のざっくりとした位置が認識されています。

  • タブレットで表示させた実際のマッピング地図。ソファやテーブルの位置をきちんと認識しています

ルンバやブラーバは、部屋をマッピングするのに光学センサーや距離センサーなど複数のセンサーを利用しています。家具の自動認識機能は、この光学センサーで取り込んだ家具の形をクラウド上のデータと比較して分類するとのこと。このため、いまのところ自動的に認識できる家具は「ソファ」「テーブル」「キャビネット」の3種類ですが、今後サービスが本格的にスタートしてクラウド上にデータが蓄積されることで、認識できる家具の種類はグッと増えるそうです。新アプリはだいたい3カ月ごとのアップデートを予定しているので、蓄積データがどのように反映されていくのか楽しみです。

アプリが家具を学習して分類するというこの機能。高度で未来的なことはわかりますが、実際どう便利なの? と感じる人もいるかもしれません。最大の魅力は「汚れやすい場所」を簡単に登録できること。人が長く滞在するソファや、食べ物をこぼしたりしやすいテーブル周りなどをエリアとして登録することで、パン屑がテーブルの下に散らばればルンバにダイニングテーブル周辺を掃除させ、子どもがテレビをみながらジュースをこぼしたら、ブラーバにソファ周りを拭かせるということができるわけです。

  • 家具を認識すると、アプリで「部分清掃エリア」として登録するか通知してくれます。汚れそうな場所はどんどん追加しておきたいところ

ロボット掃除機の悩みだった「帰宅したら止まっていた」問題も解決?

筆者がとくに注目したのは上記の物体認識機能ですが、もちろんこのほかの機能もアップデートされています。その1つ、スケジュール機能は「お気に入り」という名前で複数のエリアをグループ登録することが可能になりました。たとえば食後に毎回、「キッチン」「パントリー」「椅子」の周りを掃除したいといった場合に便利です。

  • スケジュールをまとめて「お気に入り」登録したところ。部屋と清掃エリアを混在指定したり、掃除する順番を指定したりできます。ブラーバがある場合は「後で拭き掃除をする」を選択すれば、ルンバで吸い掃除したあとに続けてブラーバで拭き掃除することも

  • 登録した「お気に入り」はメイン画面から選択できます

このほか、ユーザーが掃除指定した履歴から、アプリがさまざまな提案をします。個人的に「これは便利そう」と感じたのは、ケーブルが多い場所などロボット掃除機が停止しがちな場所を自動検知する機能です。そういった場所を見つけると、「このエリアを進入禁止に設定しませんか?」とアプリが提案してくれるのです。「帰宅したらロボット掃除機がケーブルにからまって止まっていた」という、ロボット掃除機あるある体験をしたことがあるユーザーにとって、かなりうれしい機能ではないでしょうか。

掃除スケジュールも提案してくれます。金曜の夜に玄関を掃除することが多いなど、曜日や時間によって掃除する場所が偏っている場合、アプリが「これを清掃スケジュールに追加しませんか」と提案。また、花粉の時期やペットの換毛期といった時期は、掃除頻度をアップすることを提案したりもするそうです。

加えて、他社製品やサービスと連動させて「特定の行動をしたらルンバやブラーバを動かす」という「生活ルーティンの設定」もできるらしいのですが、残念ながら日本で利用できるサービスはいまのところほとんどないとのこと。今後、日本でのサービスが拡充することで、「家を離れたら掃除開始」といったこともできるようになるかもしれません。

  • 機能別の対応モデル一覧

今回の新アプリを実際に体験して、「(掃除機本体は変わっていないのに)アプリが変わるだけで、こんなに使い勝手がよくなるのか!」と驚きました。汚れやすいエリアの登録は他社製品でも見かけたことがありますが、さらに発展させて「家具を自動認識してソファやテーブル周辺を掃除エリアに登録するか提案する」という機能は目からウロコ!

ルンバやブラーバは、音声アシスタントのAmazon AlexaやGoogleアシスタントにも対応しているので、これらに対応したスマートスピーカーなどと連携させれば、音声操作も可能です。「OK Google、ルンバでソファを掃除して」と声をかければ、いちいちアプリを立ち上げなくてもスポット清掃できます。ちょっとした食べこぼしくらいなら、わざわざアプリを起動して場所を指定してルンバを動かすより、コードレススティック掃除機でサッと掃除したほうが手軽でしたが、こんなスポット掃除もルンバやブラーバを使うほうがラクになるかもしれません。