さまざまな場面で耳にする「クラスタ(クラスター)」という言葉。IT領域やマーケティング領域などのビジネスシーンでもよく使われる言葉です。また、ネットスラングとして使われる場合もあります。新型コロナウイルス感染症関連のニュースで見聞きすることも多いですね。
本稿では、クラスタの基本的な単語の意味、および使用シチュエーションにおける意味の違いなどについてまとめました。なお、本稿では表現をクラスターではなく、クラスタに統一します。
クラスタとは英語で「果物や花の房、同種の集団」の意味
クラスタの語源である「cluster」は「果物や花の房」「同種の集団」「天文学でいう星団」という意味の言葉です。
もともとは果物や花の房を指す言葉であったことから、房の様子から転じて“ある属性でグルーピングした集団”のことをクラスタと表現するようになりました。
そのため、集団・固まり・塊・群れ・塊まり・群・鈴生り(すずなり)といった、グループを指す言葉全般はクラスタの類語といえます。
IT・システム業界におけるクラスタの意味
IT業界においては、複数のコンピューターを連結させ、一台のコンピューターかのように利用できるようにしたシステムのことをクラスタと呼ぶことがあります。これは、コンピュータークラスタ、もしくはクラスタシステムの略語です。
また、このように、クラスタシステムを組むことを「クラスタリング」もしくは「クラスタ化」と呼ぶ場合もあります。ちなみに、1つの処理を複数のコンピューターに分散するクラスタシステム「負荷分散(HPC:High Performance Computing)クラスタ」などもあります。
なお、これらはすべて、複数のコンピューターを用いることで、コンピューター1台当たりの負荷を軽くしつつ、かつコンピューターのダウンを防ぎ、高性能な処理を実現することを目的にした技術です。
ネットスラングにおけるクラスタの意味
ネットスラングでは、特定コンテンツにおける愛好者の集団ことを「〇〇クラスタ」と表現するケースがあります。例えば、『鬼滅の刃』の愛好者の集団を「鬼滅クラスタ」と表現するといった具合です。
また、もう少しクラスタリングの範囲が広く、趣味や嗜好の似た人々を指す場合もあります。「医療クラスタ」(医療従事者の集団)などがその一例です。
マーケティング業界におけるクラスタの意味
マーケティング業界において、クラスタとは、似た傾向を持つ人や商品、アイデアや意見などの集まりのことを指します。中でも、それらを対象にした分析を行うマーケティング手法のことを「クラスタ分析」といい、これはマーケター必須のスキルといえます。
簡単にいうならば、クラスタ分析とはつまり、「似たもの集めの手法」です。例えば、企業が顧客を対象にアンケートをとり、集まったデータを分析し、似た回答ごとに回答を集めていけば、いくつかの回答のクラスタ(集団・群れ)が見えてくることでしょう。
こうした分析により、新たな気づきを得て、次のマーケティング活動へとつなげることができます。
新型コロナウイルス感染症関連の話題におけるクラスタの意味
連日、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が報じられている昨今、クラスタという言葉を頻繁に耳にするようになった人は多いでしょう。ここでのクラスタが示すのは、「集団感染した患者集団」です。
新型コロナウイルス感染症関連のニュースで「クラスタ形成」または「クラスタ化」と表現する場合は、多くの人が同じ場所で集団感染した、という意味になります。「ヨガスタジオでクラスタが発生した」「スポーツジムがクラスタ化している」などといった使われ方をします。
また、新型コロナウイルス感染症においては「クラスタ対策班」が設置されました。これは政府が選抜した国内の感染症専門家集団のことであり、クラスタ発生をいち早く見つけ出し、専門家チームに派遣してデータの収集・分析と対応策を検討することで、新型コロナウイルス感染症の拡大を阻止することを目的とした組織です。
クラスタの意味はシーンによって異なる
クラスタについて、基本的な意味と、各分野での使われ方を紹介しました。基本の「集団」という意味はいずれの分野でも残っていますが、「何の集団なのか」という点が、業界ごとの相違点です。文脈によって、クラスタの意味が違う場合もあるため、意味がわかりにくい場合は、正確な意味について確認するように心がけましょう。