マインドフルネスとは、一種の心理状態を指す言葉であり、マインドフルネスの状態を保つことで、心が落ち着き、集中力が増す効果が期待できます。
GoogleやAppleといった有名企業がマインドフルネスの実践方法である「マインドフルネス瞑想」を採用していることも話題になり、今や多くのビジネスパーソンが注目しています。
そこで、本稿ではこのマインドフルネスの意味や効果、メリット・デメリット、マインドフルネスに関するおすすめ本などについてまとめました。実際に試してみたいという方のために、マインドフルネス瞑想の実践方法も紹介します。
マインドフルネス瞑想の意味
マインドフルネスを理解する上では、以下の要素が重要です。
- 「今この瞬間」に集中する
- 評価や判断を一切しない
それぞれの条件について、具体的にどのような状態なのかを説明します。
「今この瞬間」に集中する
人の心は、常に揺れ動いています。未来の不安に襲われることもあれば、過去の過ちに心をとらわれてしまうこともあるでしょう。
マインドフルネスで向き合うのは、「今この瞬間」です。自分の感情や身体の状態などと向き合うことにより、それ以外のことを考えないようにすることで、浪費していた注意力を一点に集中させることができます。
今この瞬間と向き合い、集中力を高めることで、冷静な精神状態を作りあげることができるのです。
評価や判断を一切しない
日常生活において、我々は、常に何らかの「評価」や「判断」を下しています。たとえば、スーパーでりんごを見ただけで、無意識に「赤い」「美味しそう」「安い」などと感じるように。ただ、その判断により、物事の本質を見失っている可能性があります。
マインドフルネスで目指すのは、何かに接した瞬間に、その何かに対する評価や判断というフィルターを通さず、可能な限り対象を直接感じられる状態を保つこと。対象をありのままにとらえることが重要なのです。
マインドフルネス瞑想の効果
マインドフルネスの状態になると、精神面においてさまざまな効果があります。以下、マインドフルネス瞑想の効果をまとめました。
集中力が高まる
マインドフルネス瞑想では、呼吸や身体感覚といった、何かひとつのことに集中する「シングルタスク」の状態に入ることを目指します。
普段、ヒトの心の中は雑多な思念であふれていて、常に何かを考えている状態です。シングルタスクの状態を意図的に作り出すことによって、対象に対する集中力を自然と高めることができます。
マイナスの感情に向き合える
マインドフルネス瞑想により「呼吸」に集中し続け、普段の雑多な思念を取り除くと、これまでは気づけなかった、心の中のマイナスの感情に向き合えるようになります。
明晰な思考・創造性の解放
マインドフルネス瞑想により、余計な評価や判断をできるだけ排除していくことで、対象をありのまま観察でき、明晰な思考を得られるようになります。
また、これまで気づかなかった側面に気付くようになり、かつ、とらわれていた概念から開放されることで、自身が本来持っていた創造性も開放されます。
共感性と思いやり
心が落ち着くと、これまで抱えていた他人や物事に抱いていたマイナスの感情も手放すこともできるようになります。結果として、共感する気持ちや思いやりが育まれます。
マインドフルネス瞑想のデメリット
さまざまな効果があるマインドフルネスですが、デメリットがないわけではありません。以下、考えられるデメリットについて紹介します。
自己肯定感が低下する可能性も
マインドフルネスの状態は、すぐに習得できるものではありません。毎日少しずつ時間を取り、継続することで身に付けることができる感覚です。
しかし、毎日継続できないと、かえって「自分はダメな人間だ」と感じてしまい、自己肯定感が低下する可能性があります。マインドフルネスの実践は、無理なく毎日続けられるような形で、生活リズムの中に取り入れる工夫が必要です。
瞑想に依存してしまう
瞑想を適切に行るようになれば、心身をリラックスさせることができ、心地良い状態を味わえることでしょう。
しかし、それに依存してしまうと、かえってストレス源となってしまいます。「ストレスを感じたから瞑想で解消しなければ」「早く瞑想をしなければ」など、瞑想に依存してしまわないようにしましょう。
マインドフルネス瞑想のやり方
「瞑想」というと、「座禅を組んで、目をつぶってやるもの」といったイメージを持つ人も多いでしょう。
しかし、何もそのやり方だけが瞑想というわけではありません。なにより、そのやり方を実践するには、わざわざ瞑想の時間を確保したり、誰もいない場所を用意したりと、いろいろと手間がかかります。
日常生活の中に瞑想を組み込むために重要なことは、「継続」です。さまざまな環境で瞑想を行えるよう、他のやり方についても知っておくとよいでしょう。
マインドフルネス瞑想の方法には、毎日の生活習慣を利用する方法もあります。ここでは、座って行う瞑想に加え、生活習慣を利用する瞑想方法を集めました。自分が続けやすい方法がないか、いろいろ試してみてください。
座る
「座る瞑想」は、もっともイメージのしやすい瞑想方法かと思います。
座る瞑想を行う際には、自分がリラックスできる状態で座り、自分の呼吸に意識を向けることから始めます。座り方は、自分の思考を妨げない方法なら何でも構いません。1日10分程度を目安に続けるとよいでしょう。
自分の呼吸を意識し、息を吸っているときには自分の胸やお腹が膨らむことを意識します。吐くときはその逆で、胸やお腹がしぼんでいく様子を意識します。
呼吸に意識しているつもりでも、頭の中に自然と思考が浮かんできたときは、その思考を「雑念」として意識し、呼吸を観察対象に戻します。
歩く
実は、歩きながら瞑想をすることも可能です。
この「歩く瞑想」においては、歩いている間、体の一部に意識を向けた状態を維持することを目指します。例えば、足の裏の体重移動や地面と接する感触などについて、できるだけ意識を向けて歩く――といったことを目指しましょう。
瞑想という行為において重要なことは、外見的な形から入るのではなく、「瞑想を始めるのだ」という意識を持ち、それにふさわしい心の姿勢を整えること。なにも、座って行う瞑想だけが、瞑想とは限らないのです。
書く
手軽に実践できる瞑想として、「書く瞑想」もあります。この瞑想は「ジャーナリング」と呼ばれます。
書く瞑想とは、一定時間集中して定めたテーマについて書くことで、集中力を高めてマインドフルネスの状態に入ることを目指すもの。余計な雑念の入らない環境で、1日1回、自分の内面を掘り下げるテーマで、5分程度集中して書き続けましょう。
文章を書くことに抵抗がない人や、書くことにより精神を落ち着かせられる人におすすめの方法です。
食べる
「座る瞑想」「歩く瞑想」「書く瞑想」に続け、「食べる瞑想」というものもあります。
これは、食事の始まりに2口~3口程度だけ、食事の過程を以下のような流れで集中して観察することで、マインドフルネスの状態に入る瞑想方法です。
毎日が忙しく、瞑想の時間を確保しにくいという方に向いている実践方法です。
- 目で料理をじっくり観察する
- 目を閉じて香りを楽しむ
- ゆっくりと口に入れて味を堪能して咀嚼する
- ゆっくりと飲み込み、喉を通って胃に落ちていくまでを観察する
マインドフルネス瞑想のおすすめ本
マインドフルネスについての書籍は多数発売されています。その中でも、基礎的な内容を学べる本、実践に適したDVDブック、ビジネスにマインドフルネスを取り入れるヒントになる本をピックアップしましたので参考にしてください。
『マインドフルネスストレス低減法』
医療分野でマインドフルネス瞑想を取り入れた「マインドフルネスストレス低減法」を開発した、マサチューセッツ工科大学医学校のジョン・カバットジン 名誉教授による書籍です。
この書籍では、同氏の開発したマインドフルネスストレス低減法について書かれているため、マインドフルネス瞑想の原理と実践について知りたい方におすすめです。
『実践! マインドフルネスDVD』
日本マインドフルネス学会の副理事長である、熊野宏昭氏の著書。マインドフルネスの実践方法を分かりやすく解説しているDVDブックです。マインドフルネス瞑想の教室に通う時間が取れず、独学で学びたいという忙しい方向けの内容です。
『サーチ・インサイド・ユアセルフ』
Googleで行われている、マインドフルネスをベースにした独自の研修プログラム「サーチ・インサイド・ユアセルフ」について説明している本です。マインドフルネスをビジネスに活かしたい方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
マインドフルネス瞑想でストレス解消を
マインドフルネス瞑想は、ストレスの多い現代社会を生きやすくする方法のひとつです。近年はマインドフルネスに役立つアプリなどもあるので、気軽に実践することができます。
瞑想にはさまざまな方法が存在するため、自分に向いている方法を見つけ、日常生活に取り入れることで、毎日溜まり続けるストレス解消をして、スッキリとした精神状態を保ちましょう。