新型コロナウイルスの影響を大きく受けた2020年上半期、薄型テレビや完全ワイヤレスイヤホンなどの“巣ごもり家電”が好調に売れたことで、家電やIT機器の販売は前年並みを維持した――。調査会社のGfK Japanが「2020年上半期 家電・IT市場動向」と題したリポートを発表しました。
新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛や家電量販店の休業が広まった3~4月は、前年の販売金額を下回りました。しかし、緊急事態宣言の解除後は回復に転じ、さらに10万円の特別給付金の支給が進んだ6月は前年を大きく上回ったといいます。
製品ジャンル別で好調だったのが、テレビやイヤホンをはじめとするAV関連製品、テレワーク需要が追い風となったIT関連製品、猛暑で売れたエアコンです。かたや、スマートフォンを中心とする電話関連製品やカメラ製品は、外出自粛要請で春の商戦期を逸した影響が大きく、前年を大幅に下回る結果となりました。
【AV家電】絶好調の薄型テレビ、4Kテレビが半数超に
薄型テレビの販売台数は、前年比14%増の300万台に大きく伸びました。外出自粛でテレビの視聴機会が増加したことに加え、エコポイント制度やアナログ停波による特需期に購入したテレビの買い替え需要が重なったことが販売増加の背景にあるとみています。
注目したいのが、ついに4Kテレビが主流になったこと。4Kテレビの販売台数は前年比で26%も増え、薄型テレビに占める数量構成比は前年比で6ポイント上昇の55%となり、ついに半数を超えました。合わせて大画面化も進行し、薄型テレビ全体のうち55インチ以上の数量構成比は前年から5ポイント伸長し、21%になりました。
BDレコーダーの販売台数は前年比1%減の100万台となりました。シングルチューナーモデルや全録モデルが縮小したのに対し、スタンダードなダブルチューナーやトリプルチューナー搭載モデルが数量で90%を占めるほどに。4K放送の録画が可能な4Kチューナー内蔵モデルの数量構成比は18%にとどまっています。
イヤホン&ヘッドホンの販売本数は前年比7%増の1,040万本。完全ワイヤレスは63%増となり、数量構成比では前年から7%ポイント増の20%を占めるほどになりました。特に、ノイズキャンセリング搭載モデルは前年の10倍以上と飛躍的に伸長したのが目を引きます。テレワーク需要の高まりを受けて、有線接続のヘッドセットも販売が伸びました。
【携帯電話】スマホは苦戦続くも、スマートウォッチは好調
苦戦を強いられたのがスマートフォンです。2020年上半期の携帯電話販売は前年比24%減の1,180万台で、9割強を占めるスマートフォンは同23%減の1,080万台となりました。端末料金と通信料金を完全に分離する分離プランの導入によるスマートフォンの値引き規制を受けて購入意欲が減退したことに加え、新型コロナウイルス流行に伴う外出自粛が販売減に拍車をかけたとみられます。
スマートフォンの大画面化はさらに進み、画面サイズが5.6インチ以上のモデルは前年から13ポイント増の69%となりました。望遠と広角、カラーとモノクロなど、役割の違う複数のカメラレンズを搭載した複眼レンズ搭載モデルは、前年から38ポイント増の63%となり、主流になったといえます。
躍進したのがウエアラブル端末で、前年比40%増の120万本を販売しました。そのうち半数近くを占めるスマートウォッチは同47%増と好調で、市場をけん引しています。ウェアラブル端末の税抜き平均価格は前年から18%低下して25,000円となりました。アップルが「Apple Watch Series 3」を19,800円(税別)の低価格に引き下げたことも、好調をけん引しているといえるでしょう。
【IT機器】テレワーク需要でパソコンが堅調、プリンターも追い風
パソコンは、店頭やインターネット通販で購入できる個人向けモデルの販売台数は31%増の200万台と好調に推移。Windows 7のサポート終了に伴う買い替え需要に、新型コロナウイルスの流行でテレワークやオンライン授業用の需要が重なったことが理由として挙げられます。個人向けタブレットは20%減の120万台となりました。
意外に伸びたのがプリンター。個人向けモデルは12%増と、実に6年ぶりに前年の販売を上回りました。テレワークや自宅学習の増加が見事に追い風となりました。
【デジタルカメラ】レジャー&旅行需要の蒸発で苦戦、単価は上昇
今回の調査でもっとも厳しかったのがデジタルカメラで、前年比48%減の60万台にとどまりました。卒業式や入学式、ゴールデンウィークなどのイベントがことごとく自粛となったことで、前年の販売を大幅に下回りました。エントリーモデルよりもハイエンドモデルの落ち込みが小さかったため、デジタルカメラ全体の税抜き平均価格は前年から15%上昇の59,000円となっています。
【白物家電】エアコンは小部屋向けの低価格モデルが好調
白物家電は、気温上昇を受けて冷蔵庫とエアコンが好調だったのに対し、掃除機は前年並み、洗濯機はやや減少という結果となりました。
冷蔵庫は前年比2%増の230万台となりました。冷蔵庫は「壊れたから買い替える」という需要がほとんどで、気温の上昇で故障が増え、買い替えが進んだとみられます。
エアコンは前年比5%増の480万台となりました。小部屋向けの2.2kWモデルが好調に推移し、数量構成比では前年から2%ポイント増の49%と半数を占めたことから、猛暑を受けて「エアコンがなかった部屋に導入したい」「既存のエアコンが壊れたので買い替えたい」という需要で小部屋向けのモデルが好調に売れたとみられます。