ダイハツの新型車「タフト」は、スズキの独壇場だった軽SUV市場に絶妙なポジショニングで参入してきた興味深いクルマだ。商品性や使い勝手などが注目されがちな存在でもあるが、その走りは実際のところ、どうなのか。ターボとノンターボの両方に乗って確認してきた。
乗ってもワクワクできる?
タフトには「X」「G」「G ターボ」の3つのグレードがある。「X」は廉価グレードで、メインとなるのは「G」グレードだ。今回は「G」のターボ車とノンターボ車に試乗した。
運転席に乗り込んでみると、スクエアなガラスエリアからの視界は良好。シートが体をしっかりと支えてくれるので、運転はしやすかった。車内の雰囲気はカジュアルだが、安っぽくはない。ここは、ダイハツデザインの勝利といえる。工夫も満載で、ダッシュボードから飛び出すトレイにはスマートフォンが収まる。現代人にはマストといえる嬉しい装備だ。
自慢の「スカイフィールトップ」(ガラスルーフ)のシェードを開け放つと、室内が明るくなるだけでなく、前席からも視界に空を捉えることができるようになり、開放感がある。結果、ワクワク感が高まるだけでなく、タフトが小さいクルマであることも忘れさせてくれる。驚くほどの効果で、開発者が標準化したことも納得だ。
もちろん、スカイフィールトップには実用的なメリットもある。例えば、街中で停止線と位置が近い信号機に遭遇した場合だ。信号機がクルマから近い位置にあると、見上げても表示が確認できず、体を前に傾けたうえ首をひねって信号を見なければならないことがある。そんなとき、タフトであればスカイフィールトップを通して上から信号を確認できることもある。
視界が広がることで、周りの状況もよりつかみやすくなる。そういう意味で、スカイフィールトップはある種の安全装備ともいえるだろう。ガラスは固定式だが、固定式だからこそ開口部を大きくできるし、何より軽く作れる。これは走りの面でもメリットが大きい。
実際に街中を走らせてみると、ボディはしっかりしており、ドライバーの指示に従順に応えてくれる基本性能がある。静粛性は高く乗り心地も良好なので、軽自動車というよりも小さなSUVに乗っているような感覚の方が強かった。もちろん、ジムニーのような武骨さはないので、ご安心を。基本的に、タフトは乗用車ライクなクルマだ。
後席は荷室重視の作りに思えるが、足元スペースは広く、乗り心地も良かった。スライド機構を付けないことで、クッションを厚めに作ることができたのだろう。欲をいえば、座ったままで短時間の仮眠を取りたい場合もあるので、リクライニング機構は欲しかった。
後席を荷室として使う場合は、シートを倒せば広々としたスペースが出現する。2人でキャンプやアウトドアスポーツに出かける際の荷物もたっぷりと飲み込んでくれるはずだ。最低地上高は190mmを確保してあるので、キャンプ場や降雪地、多少の起伏のある未舗装路なども安心して走れるが、あくまでクロスオーバー車なので、SUVとしての走破性に過度な期待はしないこと。これは4WDを選んだ場合も同様だ。
「Gターボ」がオススメ!
もしタフトを選ぶなら、予算は少し上乗せになってしまうが「G ターボ」をオススメしたい。なぜならば、ターボとノンターボではトランスミッションに違いがあるからだ。ノンターボは「D-CVT」(新開発のギア付きCVT)ではないので、発進時のスムーズさに欠ける。それだと、タフトを選ぶ価値が少し落ちてしまうと思う。それほど、走りの質感に差があるのだ。
もちろん、基本性能は高いので、ノンターボでも悪くはない。ただ、乗り比べてみれば俄然、ターボを選びたくなるに違いない。力強いターボなら高速移動も楽なので、行動範囲も広がるはずだ。オプションパーツが豊富なクルマなので、自分好みにカスタムできることもタフトの遊び方のひとつだ。軽自動車の面白さをまたひとつ、タフトは教えてくれた。きっと、あなたの生活にもワクワクした気持ちを与えてくれるだろう。