最強の攻めで観る者を魅了する藤井将棋。対するは最強の守りを誇る木村一基王位。勝つのはどっちだ!?

木村一基王位に藤井聡太棋聖が挑戦する、第61期王位戦七番勝負(主催:新聞三社連合)第4局が8月19・20日に福岡県「大濠公園能楽堂」で行われています。ここまでの対局は挑戦者の藤井聡太棋聖が3連勝で、木村一基王位を追い詰めています。藤井棋聖が一気にタイトルを奪取するのか、木村王位が反撃を開始するのか。本日は勝負が決する2日目です。

先手番の木村王位は、第2局で無念の逆転負けを喫した相掛かりを再度採用しました。まだまだ序盤の23手目に木村王位が新手▲2五飛を着手。この大一番のために温めてきた手段でしょう。中段に飛車を配し、1筋からの端攻めを決行する狙いです。

対する藤井棋聖は1筋では屈服する構え。端は押し込められてしまいましたが、ここは穏便に済ませて他の場所で戦おうという主張です。

1筋の勢力争いを制した木村王位は、五段目の飛車の利きを生かして今度は藤井棋聖の飛車を閉じ込めようとします。角交換をしてから、▲8七銀と立って8六の飛車にぶつけ、飛車の進退をうかがいました。これに対する後手の応手は2つ。

1つは飛車を逃がしておくもの。誰もが思いつく無難な順です。この順は飛車を助けられるものの、飛車が一瞬全く働かなくなります。

もう1つは強く飛車を切って銀と交換してしまうというもの。最強の攻め駒をこのタイミングで捨ててしまうのは、普通はないとしたものです。

しかし、▲8七銀に対して藤井棋聖はなかなか次の手を指しません。やがて1日目の封じ手時刻の18時となりましたが、考え続けます。封じる意思を示したのは18時19分。36分の考慮でした。無難な△2六飛ならすぐに封じられたはず。となるとまさかの飛車切りか!? 筆者を含むファンはワクワクしながら1日目の観戦を終えたでしょうが、木村王位の心境はどのようなものだったでしょうか。

そして本日9時。立会人の中田功八段が読み上げた封じ手は、△8七同飛成でした。流石は藤井棋聖、やはり最強の手段で切り込んでいきました。

飛車を取った木村王位に対し、藤井棋聖は△3三角と設置。1五飛と9九香の両取りです。木村王位は▲5五角と打って対応。△同角▲同飛に藤井棋聖は再度△3三角と打ちました。この角のラインに本局の命運を託したという印象です。

この角を主軸とした攻めを、「千駄ヶ谷の受け師」木村王位が受け止め、反撃に転じることができるか。それとも藤井棋聖は最強の矛をもって最強の盾を突き破るのか。決着は本日夜となる見込みです。

封じ手が読み上げられ、藤井棋聖が△8七同飛成を指して2日目がスタート(提供:日本将棋連盟)
封じ手が読み上げられ、藤井棋聖が△8七同飛成を指して2日目がスタート(提供:日本将棋連盟)