近畿日本鉄道は19日、全面リニューアルした団体専用列車20000系「楽」の報道関係者向け試乗会を実施。大阪上本町~榛原間を往復した。8月21日から運転開始し、同日に有料試乗会として大阪上本町~近鉄名古屋間を走行。9月5日に有料撮影会も行われる。
「楽(らく)」は1990(平成2)年、「あおぞら」の後継車両として製造された4両編成(ク20151-モ20251-モ20201-ク20101)の団体専用列車。両先頭車両は2階建て、中間車両はハイデッカー構造となっており、特急車両並みの高速運転ができる性能も有する。運転開始以来、同社の主要幹線(南大阪線などを除く)にて、修学旅行をはじめとする団体旅行でおもに使用される。
30年ぶりとなる全面リニューアルでは、「地のにぎわい」をコンセプトに、沿線5地域の魅力を日本の伝統色と和柄で表現。外観は日本で古来より使用される漆をモチーフとした「漆メタリック」を基調に、「ICHIMATSU」(京都)、「SEIGAIHA」(大阪)、「TENPYO」(奈良)、「KANOKO」(名古屋)、「SHIMA」(伊勢志摩)という5種類の色柄をアクセントに加えた。車体側面に「楽」の新ロゴマークを掲げ、「VISTA CAR」の文字も記された。
大阪上本町~榛原間を往復した報道関係者向け試乗会にて、取材に応じた近畿日本鉄道の鉄道本部企画統括部技術管理部(車両)課長、福田尚弘氏によれば、「楽」のリニューアルは近鉄車両エンジニアリングが担当。今年の3~8月にかけて工事が行われたという。リニューアル後のデザインについて、「イメージを大きく一新したいとの思いがあり、以前の明るい黄色と白のイメージから、漆メタリックを採用したシックなデザインにしました」と話す。
外観と同様、車内も一新。両先頭車両の運転室後方に、見晴らしの良いパノラマビューを楽しめるフリースペース「楽 VISTA スポット」を設けた。ソファやスツールを置き、前面・側面の大きな窓から3方向のダイナミックな車窓風景を眺められる空間に。福田課長も「楽 VISTA スポット」をリニューアルの一番のポイントに挙げ、「大きな窓によって非常に展望性の高いエリアになっています。流れる車窓を体感し、旅先への移動を楽しんでいただけたら」とコメントした。
階下室もフリースペースとなり、天然木のフローリングにカーペットを備え、靴を脱いで利用できる空間に。1号車にはさまざまなタイプのクッション、4号車には6分割できる円型スツールを置き、用途に応じた自在なレイアウトも可能だという。両先頭車両の連結部付近にサロン席を設け、向かい合わせのゆったりとした固定シートと、天然木の大型テーブルを配置。展望性の良い大きな窓(130cm×165cm)からの眺望も楽しめる。
両先頭車両の階上席と、中間車両は座席スペースとして使用。「地のにぎわい」を表現した5種類の色柄をシートにランダムに配置し、楽しく華やかな空間を演出している。各車両とも転換クロスシートを採用しており、中間車両の座席はシート間隔を121cmに拡大(リニューアル前は91cm)し、天然木の大型テーブルも設置した。先頭車両の階上席にもテーブルが設けられている。各座席部にコンセントを設け、フリーWi-Fiにも対応する。
その他、大型荷物置場を各車両に用意し、2号車に洋式トイレと男性用トイレ、3号車に車いす対応トイレと車いすスペースを設置。車内全体で抗ウイルス・抗菌加工(SIAAマーク取得)も施し、車内にステッカーを掲出した。今回のリニューアルにより、「楽」の定員は両先頭車両(1・4号車)が各34名、中間車両(2・3号車)が各48名、4両編成全体の定員は164名に。工事費は約2億円とのこと。
運転開始日の8月21日には、全面リニューアルした「楽」の有料試乗会が開催され、往路(Aコースの参加者が乗車)は大阪上本町駅9時38分発・近鉄名古屋駅12時23分着、復路(Bコースの参加者が乗車)は近鉄名古屋駅14時34分発・大阪上本町駅17時32分着で運行予定。募集はすでに終了している。
9月5日に開催される有料撮影会では、青山町車庫を撮影会場としてリニューアル「楽」を撮影可能。8月19日の時点で、9時集合の回のみ申込み可能、11時と13時の回はリクエスト受付(キャンセル待ち予約)となっていた。これらのイベントの他にも、旅行会社が企画・実施するツアーでリニューアル「楽」の運行が予定されている。
リニューアルした「楽」は運転開始後、団体旅行での貸切と、近鉄および旅行会社が主催する同列車を使用したツアーへの申込みにより利用できる。その際、運賃に加え、「楽」乗車料金として大人400円・こども200円(乗車区間を問わず均一料金)が必要となる。