IT企業による買収問題に端を発した、東京セントラル証券VS東京中央銀行の戦いに終止符が打たれたTBS系日曜劇場『半沢直樹』(毎週日曜21:00~)第4話。16日放送の第5話では、「銀行vs国家」という新たな戦いが始まる。
■前半戦ラストは半沢&大和田がまさかの“共闘”
池井戸潤の人気小説『ロスジェネの逆襲』を原作にしている本作では、小説に登場しない香川照之演じる大和田取締役が、物語にどのように絡んでくるのかが、大きな見どころの一つになっていたが、主人公・半沢直樹(堺雅人)とまさかの“共闘”という形で、宿敵・伊佐山泰二(市川猿之助)&三笠洋一郎副頭取(古田新太)コンビを打ち破った。
第3話のラストで、大和田と伊佐山が会合しているシーンが映し出され、大和田の絵図のもと、伊佐山が三笠副頭取を騙していたことを匂わせていたが、第4話では、その大和田を伊佐山が「土下座野郎」と罵り、伊佐山の真の目的があらわになるというシーンが展開された。
一転して窮地に追いやられた大和田。そこに同じくスパイラル買収問題で、東京中央銀行が電脳雑伎集団に500億の追加融資をするということが決まりかけ、いよいよ崖っぷちに立たされた半沢が現れ、「力を貸していただきたい」と願い出る。
半沢と大和田と言えば、前シリーズでバチバチにやり合った敵同士。特に半沢は、父親の自死の原因を作ったのが大和田だと思っており、いわば親の敵という存在だ。一方大和田も、半沢に不正を暴かれ、役員が見つめる前で土下座をさせられた過去がある。決して交わることがない二人だが、互いの目的のために手を組んだ。
この二人の駐車場でのやり取りは非常に面白かった。まず半沢が「力を貸していただきたい」と玉砕覚悟で詰め寄ると、案の定大和田は「私は銀行の人間ですよ、子会社の君に力を貸すわけないでしょう。ましてやお前なんかと誰が手を組むか! 死んでも嫌だね! 負け犬半沢直樹くん!」と、けんもほろろに断る。それでも、めげずに半沢は発車する大和田の車の前に、まるでドラマ『101回目のプロポーズ』の武田鉄矢ばりに飛び出し、挑発するも無情に立ち去る大和田。しかし、すぐさま車が猛然とバックしてくると、大和田は半沢と共闘することを約束する。互いに罵り合っているのだが、なぜか“戦友”のように感じるのは、憎しみ合いというのも、人と人とのコミュニケーションの一つなのだと実感させられたシーンだ。
続く役員会議で、半沢&大和田コンビは、伊佐山&三笠コンビを完膚なきまでに撃退。伊佐山のひれ伏し、三笠の「仕留めるのは一瞬で」に則った伊佐山への手のひら返し、大和田の涙……まさに前半戦クライマックスにふさわしい怒涛の展開だった。
■“大臣”江口のりこの「い・ま・じゃ・な・い」に反響
またもや東京中央銀行役員の不正を暴くばかりか、大きな損失を防ぐことに貢献した半沢は、東京中央銀行・営業第二部次長に返り咲くことに。ここから物語は「銀翼のイカロス」を元にした新ストーリーへと移行していく。半沢は、かねてから懸案となっていた帝国航空の再建を紀本平八常務(段田安則)と共に行うことに。
ここで登場する新キャラクターが、これまでにも増して非常に濃い。まず注目したいのが、江口のりこ演じる国土交通大臣に大抜擢された白井亜希子議員だ。公式プロフィールには「キー局のアナウンサーを辞して政界に進出。内閣改造の目玉として、大臣に大抜擢された。国民からの人気は絶大で大物議員・箕部(柄本明)を後ろ盾に持つ中々のやり手」と書かれており、実在の政治家を連想させるような人物。しかも就任会見で記者からの質問に「い・ま・じゃ・な・い」といきなりぶち込んできて、SNS上では大きな反響があった。
江口と言えば、20年近いキャリアを持つ女優で、映画やドラマの出演作は枚挙にいとまがないが、最近では『わたし、定時で帰ります。』(2019年)の中華料理店の店主・王丹や、『これは経費で落ちません!』(2019年)のアグレッシブな社員・麻吹美華、8月28日公開の映画『事故物件 恐い間取り』での事故物件取り扱いを得意とする不動産会社員・横水純子役など、趙個性的な芝居でインパクトを与えている女優。本作でも、かなり強烈なキャラクターのようで、江口の怪演には注目が集まる。また、江口は劇団東京乾電池所属。柄本との師弟関係も楽しみだ。
また、白井議員の秘書・笠松茂樹役のアンジャッシュ・児嶋一哉が、江口とどんな芝居を見せるのかも見どころの一つだ。児嶋はお笑い芸人でありつつ、映画やテレビドラマへの出演も多く、その演技力は高く評価されている。一筋縄ではいかないツワモノぞろいの『半沢直樹』のなか、新たな魅力が垣間見えそうだ。
その他、白井大臣が掲げる帝国航空再生タスクフォースのリーダー・乃原正太役の筒井道隆、帝国航空のメインバンクである開発投資銀行の谷川幸代役の西田尚美ら演技派もそろっており、半沢とどんな戦いを繰り広げるのか、いまから楽しみでならない。
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