米労働省が2020年8月7日に発表した7月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数176.3万人増、(2)失業率10.2%、(3)平均時給29.39ドル(前月比+0.2%、前年比+4.8%)という内容であった。

(1)7月の米非農業部門雇用者数は前月比176.3万人増となり、3カ月連続で増加。前月の479.1万人増から増加幅は減速したが、市場予想(148.0万人増)を上回った。3月と4月に合計約2200万人の雇用が失われたが、5月-7月には930万人近くが回復した。業種別では、娯楽・宿泊や小売りなどサービス部門の増加が引き続き目立った一方、製造業や建設業はわずかな増加に留まるなど、回復力に格差が見られた。

(2)7月の米失業率は10.2%となり、前月から0.9ポイント低下。市場予想(10.6%)以上に改善した。ただし、労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率は61.4%と前月の61.5%から予想外に低下した。市場予想では61.8%への上昇が見込まれていた。一方、フルタイムの就職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は16.5%となり、前月の18.0%から1.5ポイント改善した。

(3)7月の米平均時給は29.39ドルとなり、前月から0.07ドル増加。伸び率は前月比+0.2%、前年比+4.8%、いずれも予想(-0.5%、+4.2%)を上回った。比較的低賃金とされる業種での雇用回復を見込んで平均時給は前月から減少すると予想されていたが、やや意外な結果となった。

米7月雇用統計は、非農業部門雇用者数が予想を上回る伸びとなり、失業率も予想以上に改善したが、市場はこの結果をそれほどポジティブに捉えなかったようだ。米国では6月後半から新型コロナウイルスの感染が南西部を中心に再拡大しており、雇用回復の勢いもそれにつれて一段と鈍るとの見方が多い。米労働省が、失業者の一部が欠勤扱い=雇用状態として誤って分類されたことで失業率が1%程度過小評価された可能性を示唆したことも市場心理の重しになったと思われる。米7月雇用統計発表後のNY市場ではドルの上昇が小幅に留まった他、米国株もわずかな上昇に留まった。米7月雇用統計は思ったほど弱くなかったが、今後の雇用回復への期待を高めるには力不足だったと市場は評価したようだ。