持将棋が2局あったため、七番勝負が第7局で決着しない異例の展開。第8局で決着なるか

永瀬拓矢叡王(王座)に豊島将之竜王・名人が挑戦する、第5期叡王戦七番勝負(主催:ドワンゴ)第7局が8月10日に東京・将棋会館で行われました。結果は91手で永瀬叡王の勝利。成績を3勝2敗2持将棋とし、防衛にあと1勝としています。

本来は決着局となるはずの第7局。ところが第2、3局と連続で持将棋となったため、両者2勝2敗で本局を迎えました。第7局のため改めて振り駒が行われ、永瀬叡王が先手に。戦型は相掛かりになりました。

序盤から大駒総交換になり、両者打ち込みの隙を作らないように神経を使う展開になりました。桂頭攻めを狙う永瀬叡王に対し、豊島竜王・名人は飛車を打って応戦します。相手に飛車を使わせたことにより、角を敵陣に打ち込めるようになった永瀬叡王は、早速▲8二角と香取りに着手しました。

豊島竜王・名人は香を取らせる間に飛車を成り込み、角を打ち込んで攻めていきます。永瀬叡王は手にしたばかりの香を自陣に投入して防戦。一気に終盤戦に突入する展開を選ぶこともできましたが、豊島竜王・名人は馬を自陣に引き付ける穏やかな順を選択しました。今度は永瀬叡王が攻める番です。

永瀬叡王は馬の細かい動きで豊島竜王・名人を歩切れにさせてから、飛車を敵陣に打ち込みます。馬と飛車の協力で7筋から相手の守備陣を食い破ろうとする永瀬叡王。この攻めに対して豊島竜王・名人は玉自らを相手の大駒に近づける、顔面受けで応戦しましたが、これがあまり良くなかったようです。永瀬叡王が巧みな馬使いから桂得を実現し、リードを奪いました。

受け一方では勝負にならないとみた豊島竜王・名人は、竜を中段に引き、桂香で永瀬玉の上部から攻めようとします。永瀬叡王は自陣の金2枚を活用して手堅く受けた後、銀取りを放置して踏み込みます。両者激しく駒を取り合ったあとの、永瀬叡王の桂打ちが本局の決め手でした。攻めては香取り、守っては相手の竜の利きをさえぎる攻防手。思わしい攻め手のない豊島竜王・名人はやむなく底歩を打って守りを固めましたが、以下は永瀬叡王の流れるような攻めがさく裂し、勝負あり。金銀を自陣に投入する必死の防戦もむなしく、91手目を見て豊島竜王・名人は投了を告げました。

本局を制した永瀬叡王は、初防衛に王手をかけました。次の第8局は9月6日に神奈川県「元湯 陣屋」で行われます。永瀬叡王が勝利して、この長かった番勝負に終止符を打つのか。それとも豊島竜王・名人が意地を見せ、史上初の第9局が行われるのか。注目です。

快勝でタイトル初防衛まであと1勝とした永瀬叡王(提供:日本将棋連盟)
快勝でタイトル初防衛まであと1勝とした永瀬叡王(提供:日本将棋連盟)