Microsoftがグローバルで展開してきた「Microsoft Office」、日本では少々特殊な状況にあった。Office 2013のパッケージ版は1ライセンスで2デバイスの利用が認められ、プリインストール版のOffice Premiumや、Office 365 Soloの商用利用可は国内特有である。
グローバルのOfficeは個人利用と企業利用を明確に分けており、個人にはMicrosoft 365 Personal・Family、企業にはMicrosoft 365 Businessの各エディションを提供してきた。日本国内では個人所有のPCを業務利用する場面が多く、日本の働き方に合わせてOfficeのライセンス形態を変更しているのだが、その結果として家族最大6人まで利用可能なMicrosoft 365 Familyは国内未提供となっている。
このガラパゴス化に拍車というのは言い過ぎかもしれないが、日本マイクロソフトは中堅中小企業向けソリューションとして、Office 365の「リモートワーク スターター プラン」を発表した。詳細は公式ブログを参照いただくとして、平たくいえば従業員300名以下の企業はユーザーあたり399円/月でMicrosoft Teamsと、1TB/1ユーザーのOneDrive for Businessが利用可能になる。コロナ禍を踏まえた対応だろう。ただし、中堅中小企業を対象に大量購入を前提としているため、マイクロソフト認定クラウドソリューションプロバイダー(パートナー企業)経由の購入に限定した。
公式サイトの説明によれば、OfficeアプリをMicrosoft Teamsから共同編集できるとのことから、Officeアプリ自体のライセンスは発行されず、Office Onlineの利用権が付与されるのだろう。公式ブログの一文にある「従業員数50名以下の小規模ビジネスのお客様」に有用であることは間違いなく、「今後日本以外の市場にも提供を拡大する可能性がある」とも述べている。よって現段階では、上述の「ガラパゴス化に拍車」とするのは早計だろう。
とあるアジア太平洋を中心に展開するスタートアップ企業のCEOは、成功の秘密を「ローカライズ」と説明していた。国々の文化や風土に合わせてライセンス形態を変更する意味では同CEOの言うとおりだが、特定の国に属するユーザーが使えないという状況は決して芳しくない。
Cortanaの例も類似するだろう。Amazon AlexaやGoogleアシスタントと競うように登場したCortanaだが、うまくはいかなかった。米国時間2020年2月28日にMicrosoft 365との統合を公式ブログで発表し、先ごろはサポートページで米国以外のiOS/Android版CortanaやHarmon Kardon InvokeのCortana機能を終了することを表明した。Cortanaの有用性を見直すためにローカルである英語に集中するのは理解できるが、グローバルソリューションであるCortanaの一部シャットダウンは大変残念だ。
話を戻して、Offece 365のリモートワーク スターター プランは日本発のソリューション。Microsoft 365 Familyが提供されていない日本のように、特定の国や地域では利用できない……となるのはいただけない。リモートワーク スターター プランを手始めとして、Officeプランのグローバル化を進めてほしいものだ。