俳優の上川隆也が主演を務めるテレビ朝日系ドラマ『遺留捜査 スペシャル』が、きょう9日(21:00~22:54)に放送される。
上川にとって、緊急事態宣言の解除後、初めて臨んだドラマとなった。そのことについて、上川は「なによりも役者としての日常が帰ってきた」と喜びを語る。
また、今までの撮影現場とは異なり、新型コロナウイルス対策をしたうえでの撮影となったが、「僕はこの『新スタイル』に抵抗なく順応することができた」と明かし、「改めてこの物語と共に、糸村を少しずつ進化させながら演じていきたいという実感を得ることができた」と述べた。
■「役者としての日常が帰ってきた」
――スペシャル放送決定を聞いたときの心境はいかがでしたか。
緊急事態宣言が解除されてからの第1弾となった今回の撮影には、なによりも役者としての日常が帰ってきたということに大きく喜びを感じました。昨年も夏にスペシャルの撮影をしていましたし、僕からすれば夏の定番が帰ってきたと言えます。何ともありがたく、2重の意味でうれしい知らせでした。
――新型コロナウイルスの影響で、様々なドラマの撮影がストップしてしまいました。そういった意味でも、撮影に臨む喜びも大きかったんですね。
これまでにも、いろいろな形で日常を手放さざるを得なかった方々が、数多くいらっしゃったことは確かです。そのたびに僕は、何ものでもなかった時間が、いかに貴重でありがたいものであったかということを実感しながら、過ごしてきたように思います。
とくに2011年からシリーズの始まった『遺留捜査』は、1stシーズン第1話の撮影中に3.11を迎えたという経緯があります。この作品に携わるときは、いつもその時のことを思い出します。この作品で、また日常を取り戻すことができたことにはある意味、なにがしかの巡り合わせのようなものすら感じます。
■『遺留捜査』は「変容と維持が同居している」
――今回の撮影は、新型コロナウイルス対策をしたうえでの撮影になったと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
先ほどの話と重複してしまうかもしれませんが、我々は何かが身の上の降りかかった後に、その都度それを踏まえて、新しい生活をはじめてきたと思うんです。
今回も、コロナという災禍に際して、本番以外でのフェイスシールドとマスクの着用や物理的距離感など撮影現場での立ち回り方やスタッフ・キャストとの触れ合いの仕方などのガイドラインを備え、対策していただきました。それを受け入れてこその新しい日常といえますし、僕はこの「新スタイル」に抵抗なく順応することができました。
――そうなんですね。
『遺留捜査』というドラマ自体も、糸村の所轄を幾度も異動させ、舞台や登場人物を変えながらも、その基本を変える事なく続いている、変容と維持が同居している作品だといえます。それは、この作品が持つ柔軟さだと思うんです。
「こうでなければ『遺留捜査』ではない」とは思いませんし、むしろ一作毎に新しい何かが盛り込まれる『遺留捜査』の“入れ物”としての柔軟さは、増しているとさえ思います。改めてこの物語と共に、糸村を少しずつ進化させながら演じていきたいという実感を得ることができました。
■約10年ぶりの乗馬シーンも「身体が覚えていた」
――今回のスペシャルの台本を読まれての感想をお聞かせください。
今回も様々な工夫をこらして組み上げられた物語は興味深いものでした。遺留品として大きく関わってくるのが京野菜。『遺留捜査』は京都に来てもう4年になりますが、また新しいネタを振っていただけるというのは、携わっていて楽しいですし、毎回台本を開くのが楽しみです。
――そして今回の作品では、馬の毛もカギを握るアイテムとして登場します。上川さんは実際に乗馬シーンも撮影されてそうですね。
馬に乗る撮影は約10年ぶりでしたが、身体が覚えていた様です。またがってみたら、意外と自分の姿勢が「こうだったな」という感じでしっくりきて(笑)。楽しませていただきました。
――栗山千明さんや甲本雅裕さんらといった、レギュラーメンバーとの再会はいかがでしたか。
今回はコロナによる活動自粛が挟まりましたけど、夏クールに顔を合わせることが出来たのは去年と同じで、1年ぶりであることには変わりはありません。ですから、「何をしていた?」というお互いの自粛期間での過ごし方に関する話があったぐらいのことで、ひとしきり雑談を交わし合ったら、いつものように撮影に入っていくという、これまでと同じ温度で現場が進んでいきました。
ことさらに懐かしさを感じたということはありませんでしたが、ふいに訪れた非日常を越えて、今まであった時間がスムーズに戻ってきたことに安堵感を覚えました。
■自粛期間中の再放送「本当にありがたいこと」
――今お話にもあがりましたが、上川さんはどうやって自粛中の期間を過ごされていましたか。
僕はインドアで過ごすことに何の抵抗もない性分ですので、本を読んだり、映像作品を見たり、時間の都合でこれまで中々手を出せなかったゲームを楽しんだりして、過ごしていました。
――自粛期間中は、上川さんがご出演されていた『BG』第1シーズンや『ノーサイド・ゲーム』の再放送もされてましたね。
あくまで偶然そうなったんだろうとしか捉えようがないんですが、これまで携わってきた様々な作品をあの時期に流していただけたのは、本当にありがたいことだと思います。
――ゲストして今回、長谷川初範さんなどが登場しますが、ゲストとの共演についてはいかがでしたか。
事件を扱う作品の特徴なんしょうけど、主だったゲストでいらっしゃる方は、まず被害者か加害者なんです(笑)。ですから現場でお会いしても、撮影がすれ違いだったりすることが多くて、撮影現場で一緒の時間を過ごす機会があまり得られないことが多くて。
長谷川さんとも、僕が「お願いします」と現場に入る横を「お疲れ様でした」と入れ違いになることがほとんどでした。ただ、ほんの短い時間でも長谷川さんはとてもにこやかに「今日は、僕終わったよ」などとお声がけをくださって、現場も終始和やかにしてくださいました。
――それでは最後に、今作の見どころをお聞かせください。
今回は遺留品として、馬のたてがみと京野菜が大きく関わっていきます。同時に舞妓さんの日常の一端も垣間見ていただけるような描写があります。特番でも組まれない限りなかなか見ることができないような内幕をご覧いただけるのが、1つの見どころかも知れません。糸村的視点で申し上げるなら、糸村と共に牧場に出かけて行った盟友の姿にご注目いただければうれしく思います。
■上川隆也
1965年生まれ、東京都出身。1995年にNHK70周年記念日中共同制作ドラマ『大地の子』で主役の「陸一心」役に抜てき。その後も、NHK大河ドラマ『功名が辻』、『エンジェル・ハート』(日本テレビ) 、『執事 西園寺の名推理』シリーズ(テレビ東京)、『ノーサイド・ゲーム』(TBS)などに出演。
■テレビ朝日系ドラマ『遺留捜査 スペシャル』(8月9日 21:00~22:54)
上川隆也演じるマイペースで空気を読まない刑事・糸村聡が、遺留品から事件を解決していく同作。今回は、“ゴッドハンド”の異名を誇る天才脳外科医・今平卓(長谷川初範)が射殺される事件が発生する。臨場した糸村は、被害者の自宅リビングから木箱に入った芦毛の馬の毛を発見。まもなく被害者は生前、京野菜を素材として使う菓子作り教室に通っていたことが判明し、事件は思いもよらぬ局面を迎えることに。事件の奥底に秘められていた、切なくも悲しい真実とは。