第3話の世帯視聴率も23.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と数字を伸ばしたTBS日曜劇場『半沢直樹』(毎週日曜21:00~)。IT業界の覇権争いに端を発し、奇しくも古巣である東京中央銀行と激しい戦いを繰り広げることとなる半沢直樹(堺雅人)。彼に立ちはだかるのは、前シリーズで屈辱の土下座をさせた大和田取締役(香川照之)の子飼いの部下・伊佐山泰二(市川猿之助)や、副頭取の三笠洋一郎(古田新太)ら海千山千の銀行マンだ。

第3話でもドロドロしたバトルが繰り広げられたが、そんななか注目したいのが、半沢率いる東京セントラル証券がアドバイザー契約を結んだIT企業・スパイラルの瀬名洋介社長(尾上松也)と、瀬名の中学時代の親友で、いまは半沢の部下としてスパイラルを救おうと奔走する森山雅弘(賀来賢人)のフレッシュコンビだ。

  • 左から半沢直樹役の堺雅人、森山雅弘役の賀来賢人、瀬名洋介役の尾上松也

尾上は35歳、賀来は31歳。共に役者としての実績は十分で“若手”や“フレッシュ”という言葉が適しているわけではないが、こと『半沢直樹』という作品のなかでの役割では“青臭さ”が求められているように感じられる。

尾上は、“顔芸”で話題を集める歌舞伎チーム(香川、市川、片岡愛之助)の一員だが、演じる瀬名は、半沢と反目する立ち位置ではなく共闘する存在。幼少期に父親の会社が倒産し、夜逃げを余儀なくされた苦労人で、自身の腕一本で起業し、父親から学んだ“品質”をモットーとして会社を上場企業まで押し上げた男。その分、自分だけしか信じられないような独善さもあり、周囲に高圧的に接してしまう嫌いもある。ときに汚い言葉で相手を罵ったり、感情を剥き出したりするシーンもみられる。

一方で、裏切られた仲間の帰りを待ち、席を残しておくなど人間味あふれるところもある。自分の立場や出世欲に取りつかれた登場人物が多いなか、ハートフルな青臭さが瀬名の特徴だ。尾上は“顔芸軍団”の一員であるものの、もうちょっとやってしまうと青臭さが消えてしまう、くどくならないギリギリのラインで好演している。

そんな瀬名の中学時代の親友である森山。会社では、銀行出向組から「プロパー」と馬鹿にされ、過小評価されていることに憤りを感じているものの、どこかあきらめも入った、ある意味で今どきの若者という存在だった。しかし、出向組でも「間違っていることは間違いだ」と上司に対しても意見する半沢と出会い、徐々に気持ちが変わっていく。

ここで、一気に熱くなり、半沢ジュニア的なキャラクターになると、物語は単調になってしまいがちだが、半沢に影響され、熱さをフツフツと感じさせつつも、自分がまだ実力が付ききっていないという自己評価を冷静に受け止める部分も随所に残す、絶妙なラインでのキャラクターづくりに成功している。

“対決”が大きな見せ場となっている作品のなか、森山と瀬名の友人同士の会話は、半沢と渡真利のやりとり同様、“友情”が意識できる素敵なシーンになっている。

賀来と言えば、現在大ヒット公開中の映画『今日から俺は!!劇場版』で、金髪の不良・三橋貴志役として、ぶっ飛んだ演技を見せているのをはじめ、近年ではコミカルな役で大ブレイクしている。しかし、本作ではビシっとスーツを着込み、半沢と共に巨悪に立ち向かうサラリーマンを好演。SNS上では「三橋感がまったくない」「福田組で崩されたけれど、やっぱりバシっと決めれば相当なイケメン」と演技の幅に驚く視聴者の声が続々とあがっていた。

いよいよ第4話では、IT企業の覇権争いにかこつけて行われている東京セントラルVS東京中央銀行の戦いに決着がつく。第3話の終わりには、大和田を裏切ったと思っていた伊佐山が大和田と意味深な会話をするシーンが明かされると共に、半沢のさらなる出向へ待ったなしの状況が続く。半沢と森山、そして瀬名はどう銀行に立ち向かうのか――。ずっと半沢らの様子を遠目からうかがっていた中野渡頭取(北大路欣也)はどんな判断を下すのか――。前半戦のクライマックスである第4話から目が離せない。

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