JR九州は8日、豊肥本線の全線運転再開を記念し、特急「あそぼーい!」の発車に合わせて熊本駅で開通記念出発式を開催した。特急「あそぼーい!」は豊肥本線の全線運転再開にともない、熊本~大分・別府間にて土休日を中心に1日1往復の運転となる。
豊肥本線は2016年に発生した熊本地震等で被災し、大規模な斜面崩壊、土砂流入、落石、地盤変状などの被害を受けた肥後大津~阿蘇間において、長期間にわたり運転見合わせとなった。JR九州は国および熊本県の砂防事業、道路事業等の連携しながら復旧工事を進め、4年4カ月ぶりに熊本~大分間の全線で運転再開することとなった。
これ合わせて特急列車の運行体系も変更。肥後大津~阿蘇間が運転見合わせの間、阿蘇~大分・別府間で運行された特急「あそぼーい!」は、8月8日から熊本~大分・別府間で土休日を中心に1日1往復運転。「あそぼーい!」が運転されない日は同区間・同時刻で「九州横断特急71・74号」が運転されるほか、毎日運転の「九州横断特急2・3号」も設定された。熊本~阿蘇・宮地間では、新たに特急「あそ」の運行が始まった。
熊本駅での開通記念出発式は、熊本発別府行の特急「あそぼーい!」の発車に合わせて開催され、JR九州代表取締役社長執行役員の青柳俊彦氏、熊本県知事の蒲島郁夫氏らが出席。蒲島知事の呼び込みで「くまモン」も登場した。この日はJR九州とのコラボ企画も実施している「ONE PIECE 熊本復興プロジェクト」にちなみ、『ONE PIECE』のルフィに扮した姿に。「くまモン」を目当てに会場を訪れたファンも多かった様子だった。
「あそぼーい!」は8時58分頃に入線。9時9分、熊本駅長と「くまモン」の合図に合わせて3番のりばから発車し、大分・別府方面へ向かった。ホームから多くの人が手を振り、旗を振るなどして列車を見送る場面も見られた。
開通記念出発式の後、取材に応じたJR九州の青柳社長は、熊本地震での被災から豊肥本線の全線運転再開までを振り返り、「4年4カ月前に現場を訪れたとき、どこから手を付ければいいのか、どこから元に戻せばいいのか、想像もつかなったのですが、国や県と話を進め、お互いの役割分担ができたことで、思ったより早くこの日を迎えられたのではないかと思います」と話す。
一方、開通記念出発式の挨拶にて、蒲島知事が「トリプルパンチ」と表現するなど、熊本地震に続いて新型コロナウイルス感染症と「令和2年7月豪雨」が交通機関や観光などに大きな影響を及ぼしている。JR九州も豪雨災害で肥薩線と久大本線の一部区間が不通となり、現在も運転再開のめどは立っていない。「九州のネットワークを維持していくことは我々の使命。どういった形で復旧していくのか、国や県とも話し合いながら進めていきたい」と青柳社長は述べ、現在も進めている調査がまとまり次第、具体的な交渉を始めていくとの考えを示した。