WordファイルをPDFに変換、あるいはPDFファイルを圧縮して送信……デスクワークをしているとこういった必要に迫られる場面が訪れる。

アドビが先日Googleとの協業で発表した「.new」は、Webブラウザにファイルをドラッグ&ドロップするだけで、PDFへのファイル変換やサイズの圧縮などが行える。

Webブラウザに行いたい動作のショートカット(各種ファイルから新規PDFファイルを作る「PDF.new」など)を入力するとダイレクトに変換用のWebページにアクセスできるため、検索してツールを探してインストールをして…という手順よりスムーズに処理が行えるのも特徴だ。

すでに「●●(任意のファイル形式)をPDFにする」サービスはさまざまに存在する中で、PDFの本家であるアドビが今、このサービスをローンチした狙いを、米アドビの担当者に聞いた。

  • 変換したいファイルをドラッグ&ドロップするだけで、さまざまなファイルをPDF化できる。現在対応しているファイル形式は.docx、.doc、.xlsx、.xls、.pptx、.ppt、.jpg、.png、.tiff、.bmpとなっている。

    変換したいファイルをドラッグ&ドロップするだけで、さまざまなファイルをPDF化できる。現在対応しているファイル形式は.docx、.doc、.xlsx、.xls、.pptx、.ppt、.jpg、.png、.tiff、.bmpとなっている。

アドビが無料の公式ツールを出した狙い

「まず、誰もが無料の変換を可能にするソフトウェアにアクセスできるわけではありません」

アドビの担当者は、「●●をPDFに変換する方法」が頻繁に検索されることを挙げながら、このように始めた。MS Officeの機能やサードパーティ製ツールは、確かに「誰も」に開かれたものとは言い難い。

「(ブラウザで見つけたもの・検索した行為が、そのまま)ブラウザ上で完結するのです。かつそれが、サードパーティのアプリではなく、Acrobatを使用してできるのです」とも語り、やはりPDFの本家たる「アドビ」のツールという安心感をアピールした。

また、AdobeのPDF変換では、ドキュメントのフォーマット、画像、配置が保持されるため、まれに他のツールで起こる表示くずれやリンク切れなどのトラブルは起こらないことも強調した。

  • 現在提供されている変換機能一覧

    現在提供されている変換機能一覧

現在、Word→PDFなどの変換機能が無料(※1日1回まで)で提供されている。1日に複数回変換機能を使いたい場合は、Adobeのサブスクリプション契約が必要となる。各機能のページには、Acrobatのサブスクリプションで使えるより高度な機能も紹介されているので、Acrobatのお試し版としての意味も強そうだ。

新型コロナウイルスが世界的に感染拡大していることから、「自宅やオフィスを離れて働く人が増えるにつれ、仕事でも個人使用でも、ブラウザでこのような迅速なアクションを実行することが、これまで以上に重要になる可能性があります」ともコメント。初心者には選定の難しいサードパーティツールではなく、アドビが公式にツールを提供することで、作業の滞りが減ることも考えられそうだ。

Googleと協業することで「より届きやすく」

単にWebツールを公開するのであればアドビ単独でも行えたはずだが、今回のショートカットはGoogleのWeb拡張機能「.new」との提携によって実現している。

AdobeとGoogleが連携したのは、ひとつは「.new」拡張機能をGoogleが他社にも開放しているため。そして、今回発表したツールを“発見”しやすくするためだという。

ブラウザへの入力でショートカットを機能させることに加え、Googleが「.new」の便利なショートカットを紹介しているページで、WordPressやMeetなどの機能とともに、アドビのPDF関連ショートカットも紹介されている。

なお、アドビでは今後、2020年中に無料のPDFオンラインツールを20個発表する予定としている。オフィスワークにとどまらずさまざまな用途で使われるPDFファイルを、アドビが意図したクオリティで広く使ってもらうための施策と言えるかもしれない。

PDF変換ツールと同時発表されたAdobe Sparkユーザー向けのショートカット「Create.new」もあり、他ツールへの波及も気になるところだ。今後の発表にも期待したい。