藤井は藤井でも、「藤井矢倉」は稀代の作戦家、藤井猛九段が得意とした戦型
木村一基王位に藤井聡太棋聖が挑戦中の、第61期王位戦七番勝負第3局(主催:新聞三社連合)が8月4、5日で行われています。本日は1日目。序盤の駒組みから、中盤戦が始まるくらいまで指される見込みです。
前局を劇的な逆転勝利で制し、シリーズ成績を2勝0敗としている藤井棋聖。先日初タイトルを獲得したばかりですが、続けざまに二冠目獲得を目指します。
本局先手番の藤井棋聖は矢倉を選択。矢倉は棋聖戦五番勝負で3勝すべてをあげた、棋聖獲得の原動力となった戦型です。
近年の先手番矢倉で流行しているのは、脇システムと急戦矢倉です。脇システムは藤井棋聖が棋聖戦五番勝負第1局で採用した形。急戦矢倉は渡辺明二冠が棋聖戦第2、4局で採用した戦型です。本局もこのどちらかになるのかと思われましたが、藤井棋聖の選択は違いました。
藤井棋聖は早めに角を引き、玉の移動を優先する「早囲い」と呼ばれる形を採用します。通常の矢倉の駒組みよりも1手早く囲えるため、この名称が付いています。「早囲い」自体は古くからありましたが、飛車先を2つ突き、相手の急戦策を封じてから組むという工夫は近年のもの。この駒組みは「藤井矢倉」と呼ばれています。この藤井は藤井棋聖のことではありません。
この工夫を凝らした序盤を編み出したのは、「藤井システム」で知られる藤井猛九段です。藤井九段といえば四間飛車ですが、10年ほど前には矢倉を連採していた時期がありました。この時に藤井九段が開発したのが、「藤井矢倉」です。
本家の「藤井矢倉」は、攻めの形を▲3七銀から構築していきました。ところが藤井棋聖は▲3七桂と跳ねる形を採ります。このあとどのような攻撃陣形を作り、攻めていくのか注目です。
本日は18時になった時点で封じ手を行い、決着は明日付きます。恐らくどちらかが仕掛けたくらいで封じ手となり、本格的な戦いは明日から行われるでしょう。