外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2020年7月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ユーロ/円 7月の推移】

7月のユーロ/円相場は120.257~125.209円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約2.8%の上昇(ユーロ高・円安)となった。ユーロは対ドルで約4.8%上昇するなど全面高の展開。17日に始まった欧州連合(EU)首脳会議が会期を延長して21日まで行われ、総額7,500億ユーロのコロナ復興基金の創設に合意したことで上昇に弾みが付いた。

復興基金創設の合意によって新型コロナウイルスの感染拡大による経済的な落ち込みからの回復期待が高まった他、復興基金が財政共有化に向けた歴史的な第一歩になると受け止められた。なお、米国の景気回復が新型コロナの感染再拡大により緩慢になるとの見方などからドルが下落したことも相対的にユーロを押し上げた。ただ、このドル安の影響で円がやや強含んだため、ユーロ/円の上昇はユーロ/ドルに比べるといく分鈍かった。

【8月の見通し】

ユーロ高の持続性についてはやや割り引いてみておく必要がありそうだ。ユーロは対ドル、対円ともに3カ月連続で上昇しており、7月21日に欧州連合(EU)首脳会議が総額7500億ユーロのコロナ復興基金に合意したことで上昇が加速。ユーロ/ドルは31日に約2年2カ月ぶりに1.19ドル台に乗せ、ユーロ/円も同日に約1年2カ月ぶりに125.20円台に上伸した。

コロナ復興基金の創設によってユーロ圏の景気回復期待が高まっているが、加盟国が基金から資金を供与されるのは2021年だ。足元ではスペインやフランス、ドイツなどでも新型コロナウイルスの感染が再拡大しており、7月に目覚ましい回復を見せた各国の景況感がさらに上昇する公算は小さいだろう。

また、過去最大に積み上がった海外投機筋のユーロ買いポジションも先行きの相場展開にとって重しとなり得る。7月28日時点のシカゴマーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場(IMM)のデータによると投機筋のユーロの買い越し(対ドル)は15万7,000枚余りで過去最高となった。ユーロ圏の景気回復期待が萎めば投機筋が一斉に売りに回ることもないとは言えないだろう。そこまで極端な動きはなくとも、こうしたポジションの利益確定売りがユーロの上値を抑えることになりそうだ。