東武鉄道は31日、真岡鐵道から譲受した蒸気機関車C11形325号機が南栗橋車両管区に到着する様子を報道関係者らに公開した。現在、鬼怒川線を走る「SL大樹」で活躍中のC11形207号機と組み合わせることで、2機体制によるSL運行を行うための準備が今後進められる。そのために必要なディーゼル機関車と14系客車も公開された。
C11形325号機は1998(平成10)年から動態保存され、真岡鐵道で運行された蒸気機関車。昨年3月、栃木県の芳賀地区広域行政事務組合による入札の広告に東武鉄道が応札した後、12月1日に真岡鐵道でのラストランを実施した。その後はJR東日本大宮総合車両センターで検査を行い、7月31日に南栗橋車両管区へ回送されてきた。
現在、「SL大樹」で活躍するC11形207号機は、前面の左右上部に備えた2灯のヘッドライトが特徴だが、C11形325号機のヘッドライトは中央上部に1灯のみ。同じ形式でも外観上の違いが表れている。
南栗橋車両管区にて行われた報道公開では、C11形325号機がDE10形1099号機の推進運転により、SL検修庫前まで運ばれてきた。隣の線路には青く塗装されたDE10形1109号機と、14系客車「スハフ14 501」が置かれてあった。
DE10形1109号機はJR東日本から譲渡されたディーゼル機関車。JR東日本では青森駅構内の入換作業や客車・貨車の牽引などで活躍した。東武鉄道への移籍にともない、JR東日本秋田車両総合センターで青色の塗装に変更され、東武鉄道側で流星マークが施された。これにより、かつて寝台特急「北斗星」や急行「はまなす」を牽引したDD51形に近い雰囲気になった。
あわせて東武鉄道は、2016年3月まで青森~札幌間で運行された夜行列車の急行「はまなす」に使用された14系客車「スハフ14 501」もJR北海道から譲受している。本州で使用された14系客車に極寒地向けの改造が施されており、乗降ドアが折戸から引戸に変更されたほか、暖房が強化されている。JR北海道では、急行「はまなす」をはじめ、道内の急行列車で活躍したという。
ディーゼル機関車DE10形1109号機と14系客車「スハフ14 501」は8月から運用開始する予定。既存の「SL大樹」の車両と組み合わせ、往年の急行列車の懐かしさを東武線で体験できるようになる。
一方、蒸気機関車C11形325号機は引き続き整備が進められ、12月にデビュー予定となっている。これらが鬼怒川線を走り始めた際には、複数の編成で運転可能となり、SL列車同士のすれ違い運転や、通年運行などもできるようになる。鬼怒川線にとどまらず、他線区でのイベント列車としても運行が可能になる。
鬼怒川線の客車列車は、蒸気機関車で2往復4本、ディーゼル機関車で2往復4本運行されている(現在、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、ディーゼル機関車の4本は運休中)。これらをすべて蒸気機関車で運転できることになるが、詳細な運転計画については決まり次第、別途発表するとのことだった。