舞台『スケリグ』の公開ゲネプロが7月30日に東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAで行われ、浜中文一、金子昇、瀬戸カトリーヌ、演出・ウォーリー木下が取材に応じた。
同作は、イギリスの作家デイヴィッド・アーモンドによって1998年に書かれた児童書『スケリグ(Skellig)』の舞台化作。古い家に引っ越したマイケルは、荒れ庭のガレージの片隅で、ホコリと虫の死骸まみれの服、捻じ曲がった身体、背中には奇妙なものが生えている人「スケリグ」(浜中)を見つける。マイケルは隣の家の女の子・ミナと一緒に、スケリグを助けようと秘密の活躍を始める。
新型コロナウイルスの感染が広がる中で幕が開いた同作は、劇場に入ってから全キャスト・スタッフがPCR検査を受け、今後も随時検査していくという。「コロナで、できないだろうとも思ってました。なので、まだ最後まで駆け抜けられるのか未知数ですね。奇跡が起きて欲しいなと思っています」(金子)、「明日以降もどうなるかわからない不安定な現状ですけど、なんとかここまで来れたなという感じ」(浜中)、「誰一人欠けることなく走り続けたいなという思いがあります」(瀬戸)と、不安を抱えながらも舞台に全力で向かっている様子だ。
台本の読み合わせもZoomで行ったというが、金子は「再演なので体に染み付いていて、Zoomでもミーティングできたけど、初演組は相当苦労したと思います。稽古期間は初演に比べて半分くらい」と明かす。実際に稽古ができたことに対し、浜中は「嬉しかったですよね。久々に人と会えるというのは。ほっとした」と喜びを表した。
劇中では、細かい役や影絵などもキャストが担当。ウォーリーは「本当は、照明とかもやって欲しいくらい。そういう手作り感、ホームメイドなあったかさが原作にはあるので、こういう手法にした」と説明する。どんな役をやっているのかという質問に、浜中は「皆さんはもしかしたら気付いてない、絶対気付いてないと思うんですけど、サッカーボール」とぼけ、金子が「わかるよ」とツッコミ。浜中は改めて「絵で出てくるデス先生、あれは僕です。あとは赤ちゃんの泣き声も、着替えながらやってます」と取材陣を驚かせた。
今回スカパー! オンデマンドにて、東京初日公演(31日)の生配信販売も行っており、ウォーリーは「結構ささやかな感じの舞台なので、できればひっそりと観て欲しい。劇場に近い感覚を味わおうと思ったら部屋を暗くして、この世界に没頭できるように」と希望。また、フェイスシールドを使っての上演に「自分でこまめに拭いて綺麗にしてます」(浜中)、「拭く時に、こんなにも飛沫するもんなんだなと実感して。安全が守られている実感を噛みしめてました」(金子)と語った。
「スケリグとは何者なのか?」という質問には、浜中も「初演のときからずっと思っていて、再演が決まってからも考えたんですけど、やっぱ正直わかってないです、僕自身は」と苦笑する。演出のウォーリーが「僕は、毎回違う感想を持ちます。今日は文ちゃんのおじいちゃんと思ってました」と言い出すと、浜中は「僕のおじいちゃん、昨日からLINE始めました。『仕事ご苦労さん』ってきました。80なんぼですけど、なんか昨日から始めたみたいなので、そのおじいちゃん?」とまさかの返し。「勝手に亡くなってると思ってた」と言うウォーリーに、浜中は「勝手に人のおじいちゃん殺すな!」とつっこむが、改めてウォーリーが「なくなって会えない人、という印象。日によって違うことを思う」と説明すると、浜中は「"こんな人です"というのはなかなか言えなくて……原作の人に聞いてもらっていいですか?」と答えていた。
最後に、浜中は「僕個人としては、ちょうど緊急事態宣言が出る直前まで紀伊國屋で舞台させてもらってて、中途半端に中止になってしまって、消化不良という感じで終わってたんですけど、また『スケリグ』で紀伊國屋でできるということで、『まだ芝居してていいんだな』と感じてまして」と、心境を吐露。「それでもやっぱり、この中で観に来られる方はすごい勇気がいるというか、簡単に『行きます』とも言えないですし、『ぜひ来てください』とも言えない中、いろんな思いがありながら来てくださる方々には、本当に感謝しかないです。みなさんが変なストレスなく、安心してゆっくり観れるように、僕たちも精一杯やります」と意気込んだ。
東京公演は紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて7月31日〜8月16日、大阪公演は松下 IMP ホールにて8月22日〜23日、愛知公演は刈谷市総合文化センター アイリス 大ホールにて8月 25日、所沢(埼玉)公演は所沢市民文化センターミューズ マーキーホールにて9月11日。
撮影:岡千里