「頑張れ」「頑張ってね」と、私たちは日常、気軽にこの表現を使っています。これに「ください」をつけた「頑張ってください」は目上の人に使っていいのか、正しい敬語表現なのかと迷っていませんか。
そこで本記事ではお世話になった上司や親しい先生など、目上の人に応援の気持ちを伝えたい、励ましたいときに失礼にならない言い換え表現を、シーン別の例文と共にわかりやすく紹介。伝え方のポイントや英語表現もまとめました。
「頑張ってください」の敬語の言い換え表現【メール例文つき】
詳しくは後述しますが、「頑張ってください」は敬語表現ではあるものの命令形であることと、そもそも「頑張ること」を目上の人に強いるのは望ましくないため、目上の人に使うと失礼になる可能性があります。
しかし上司や先生など目上の人に対して、応援したい、励ましたいと思うことはあるはずです。
そんなときに失礼なく使える言い換え表現には、以下のようなものがあります。
上記のものに加えて、以下、より詳しいシチュエーションごとに「頑張ってください」の言い換え・類語表現を紹介します。
例文1:将来の希望を表現したいとき
入社当時に世話になったA部長が40代で希望退職することになりました。新しい職場で頑張ってほしいと伝えたいときの表現です。
・新たな道が開けますことを心からお祈りしております。
・A部長のお力が発揮できる職場に巡り会えますことを祈念しております。
・○○業界にご転職なさるとのことで、新天地での益々のご活躍を祈念しております。
・これまでのご実績を掲げ、さらに飛躍されることをお祈りしております。
例文2:応援する気持ちを表現したいとき
独立・起業する上司に向けて、応援していることを伝えます。
・これからもますます精力的に、仕事、プライベート共に充実した日をお過ごしください。A部長の会社のご発展を祈念しております。
・A部長が社長となって精力的に働いておられる姿が目に浮かびます。機会があれば、新しい仕事の話をお聞かせください。心から応援しております。
・A部長の会社と一緒にお仕事をさせていただく機会を心待ちにしています。その際に、少しでも成長した私の姿をお見せできるとよいのですが。
例文3:思いやりの気持ちを表現したいとき
お父さんの介護で職場を離れ、地元へUターンしなければならなくなった上司のケースです。「いろいろ大変だろうが頑張ってほしい」という気持ちを伝えましょう。
・A部長がおそばにいらっしゃることで、お父さまもさぞかし心強いことでしょう。お父さまとお幸せな日々が続きますことを、心より願っています。部長もお体を壊すことのないよう、くれぐれもご自愛くださいませ。
・ご実家での介護は、今までと勝手が違うこともあろうかと思いますが、どうぞご無理をなさいませんように。適度に息抜きをしながら、第二の人生を楽しんでください。どうかお元気でお過ごしくださいますように。
・介護にはストレスはつきものと耳にしております。どうぞ体調には十分ご留意くださいませ。責任感の強い部長のことですから、過度に頑張られるのではないかとそれだけが心配です。くれぐれも気持ちをお楽に、故郷での生活を楽しんで過ごされるよう願っております。
上司など目上の人に「頑張って」と伝えるときのポイント
例文を見てなんとなくのイメージはついたと思いますが、改めて、目上の人に「頑張って」という気持ちを伝える際のポイントをまとめました。
「頑張ってください」の直接的で失礼のない敬語表現は存在しない
「頑張ってください」は敬語ではあるものの、命令形です。しかしそれ以外に「頑張れ」を直接的に表す敬語表現はなく、失礼のないように表すものがありません。
そのため目上の人や年長者に「頑張ってほしい」という気持ちを伝えたいときは、相手の状態を理解し、相手が今どんな気持ちでいるかを考え細分化して、どれに適した言葉の敬語表現を選ぶ必要があります。
それが先ほど例文で紹介したように
- 将来の希望を表現する
- 応援する気持ちを表現する
- 思いやりの気持ちを表現する
などとなるのです。
「励ましたい」「応援したい」という気持ちは失礼ではない
人を励ますのは、よくない状態の相手の心を奮い立たせようとするときです。そのため気をつけなければ、相手の状態をよくないと決めつけることで失礼になったり、「上から目線」「尊大」と受け取られたりする恐れがあります。
友人であっても、相手を励ますつもりだったのが「上から目線」と受け取られ、気まずくなった経験を持つ人もいるのではないでしょうか。
しかし、「相手を思いやり、元気になってほしい」と思う気持ちは決して失礼なものではありません。「頑張れ」と通り一遍な言葉ではない、日頃の関係を踏まえた具体的な言葉を伝えれば、相手の気持ちも上向きになり、元気が出てくるはずです。そんな表現を探しましょう。
「頑張ってください」は敬語ではあるが、目上の人には使用しない方がベター
ここでは改めて、「頑張ってください」「頑張る」の詳しい意味を確認し、なぜ目上の人に使用しない方がいいのかを見ていきましょう。
「頑張る」「頑張って」の意味とは - 主語は元々「自分」だった
「頑張る」は当て字で、もともとは「我に張る(がにはる)」、つまり「周りの言うことを無視して自分のエゴを押し通す」というあまりいい意味ではありませんでした。
そこから「どこまでも忍耐して努力する、やり抜く」という意味が生まれてきました。いずれにしても「頑張る」の主語は「自分」でした。
それが人に向かって言う言葉になり、いいイメージになったのは、1936年のベルリン五輪でアナウンサーが「前畑ガンバレ」と声の限りに応援したことがきっかけとなったのでは、という説があります。アナウンサーによる「自分の持てる力を精いっぱいふりしぼれ」という声援は、当時、多くの日本人の共感を呼んだことでしょう。
「頑張ってください」は命令形を丁寧にしただけ
「頑張れ」という言葉が広まり、「頑張ってね」「頑張ろう」「お互い、頑張りましょう」と、日常でもさまざまな言い方がなされるようになりました。それにつれて、本来の「我に張る」はもちろん、「忍耐して努力する」という意味さえも薄れていき、今では相手を励まし、力づける言葉として多くの人が使っています。
しかし、いかに丁寧に「頑張ってください」と言ったとしても、「頑張ってください」は命令形です。「くれる」の尊敬語である「くださる」を命令形にしたものが「ください」だからです。
またそもそもの言葉の意味として、相手に向かって「励め」「努力せよ」と命令しているのですから、上司や目上の人に向かって使用するのは適切ではありません。そこで前述のような、もっと適切な表現を使う必要があるのです。
「してください」は敬語? 漢字の「して下さい」との違いや英語表現など解説
「頑張ってください」の英語表現
目上の人に「頑張ってください」を英語で伝えたい場合は、「We wish you good luck.(幸運を祈っています)」「We wish you every success.(成功を祈っています)」「I wish you the best.(最善を祈っています)」などが当てはまるでしょう。文書に使用する場合は「Wishing you the best.(応援しております)」なども適しています。
よく聞くフレーズの「Do your best.(全力を尽くして)」「You can do it.(君ならできるよ)」「Go for it.(行け行け、頑張れ)」などは、どちらかというと同等、または目下の人に使うカジュアルな表現です。
ビジネスシーンでも、失礼を避けつつ、自分の気持ちを伝える言葉を覚えよう
励ましや応援を必要としている相手は、自分の友だちや部下ばかりではありません。
上司や取引先など目上の人であっても、困難に遭遇している人や、新しい挑戦に直面している人には、相手の気持ちに寄り添った応援や励ましの言葉を贈りましょう。