俳優の千葉雄大が主演を務める、現在放送中のテレビ東京系ドラマ24特別編『40万キロかなたの恋』(毎週金曜24:12〜 全4回)が、話題を呼んでいる。宇宙に滞在する宇宙飛行士の高村宗一(千葉)と、元恋人の鮎原咲子(門脇麦)、人工知能のユリ(声:吉岡里帆)、の三角関係を描いた同作は、宇宙船での一人芝居をバーチャルスタジオで撮影し、リアルタイム合成で映像化した意欲作。第1話が放送されると、SNSでも「これは意欲作!」「本当に宇宙にいるみたい」「究極のソーシャルディスタンス」「設定が壮大だけど、三角関係の行方も気になる」と、今後の展開にも期待が寄せられている。
きょう31日には第2話が放送される同作について、主演の千葉には、まさにリモートでインタビュー。同作の設定さながら、宇宙の背景で登場した千葉に、新たな試みとなった作品について話を聞いた。
■舞台で一人芝居をしているような気持ち
――今回は宇宙飛行士役で、しかもほぼ1人での撮影に挑戦されましたが、企画を聞いた時はどういう印象でしたか?
お話をいただいたのは、緊急事態宣言が解除されてすぐ、くらいでした。なかなか、連続ドラマも映画も、撮影環境として恵まれてはいないんですが、もうそんなこと言っていたら何も始まらないですし、できることの中でやってくしかない環境の中で、新しいアプローチだと思いました。今後、もっとテクノロジーが進んだら、さらに表現の幅も広がるんじゃないかなと楽しみになりました。
宇宙の話は初めてだったので、すごく興味がありました。1人でやることについてもあんまり身構えず、台本を読んで「ここはどういう風に撮影するんだろう?」「セットのつくりはどうなってるんだろう?」と、楽しみの方が大きかったんですけど、いざやってみたら本当に1人きりという気持ちになってしまって、慣れるまでは正直大変でした。
――周りにスタッフの方々がいても、1人という気持ちが大きかったんですか?
スタジオの壁一面にグリーンバックと居住スペースのセットがあって、その反対側に監督さんやスタッフさんがいるので、舞台で一人芝居をしているような気持ちになるんです。皆から見られている環境に最初は戸惑ったんですが、慣れてしまったら直接やりとりを交わすお芝居とは違った面白さもありました。
――今回共演の門脇さん、吉岡さんともほぼ会っていないで撮影を進められたんですよね。
リハーサルが1日あったので、その時に互いの感じをつかみつつ、実際の撮影では想像して演技する部分が多かったので、映像がつながった時にどうなるのか、というのは逆に面白さかもしれません。ほとんど、スタッフさんが台本を読んでくださるのに合わせて演技していました。
個人的には撮影様式が気になったので、ハリウッドのグリーンバックで撮るような作品のメイキングを結構あさってみました。ないものを相手にお芝居するのって、どうしてるのかな? と。CGも現場で仮のものは見れたので、意識して芝居することはできました。大事なのは、我に返らないことです(笑)。
――宗一の状況は、外出自粛などの現在の状況と重なるところがありますが、千葉さんはどんなところに共通点などを感じましたか?
ないものねだりだと思うんですけど、仕事が立て込んでいる時は「ありがたいな」と思いつつも、「どこかに行きたいな」「何もしたくない」と思うことがあるし、家にいると「誰かに会いたいな」「遊びに行きたいな」と思ってしまう。どちらも叶わない中で過ごさなきゃいけないという環境を体験すると、宇宙と近いのかなと思いました。自分の家の窓から外を見たときに「もし、世界にいるのが自分一人だけだったらどうしよう」と想像することもありました。
ただ宗一はそこをポジティブに捉える人で、なんなら一人が好きだし、そのまま生きていきたいと考えているんですよね。僕はそれだと寂しいので、そこは違う点でした。最初は本当に口が悪いし、一歩間違えたらモラハラ、パワハラなんじゃ? みたいな発言もあるんですけど、そこにも宗一なりの温度があるので、感じていただけると嬉しいです。
――宗一の発言について千葉さんがツッコミを入れられてたところもあるんですね。
ありますあります! 上司にもすごいことを言うから(笑)。でもそこのコミカル加減は、バランスが取れてたらいいなと思って演じていました。
――そこは演じる上で、バランスを意識されているんですか?
作品によりますね。視聴者としても、エンターテインメントとして捉えて楽しんでほしいなと思う作品もあれば、「エンターテインメントだからといってどうなんだろう」と思う作品もあるんですけど、『40万キロかなたの恋』は宇宙という設定ですし、宗一の変化も含めて、SFドラマとして楽しんでいただけるんじゃないかと思います。
■配信するなら「宇宙で歌ってみた」
――緊急事態宣言下で、家にいる時は何か作品などは観られていたんですか?
『THIS IS US』という海外ドラマを観ていました。すごくよかったです。あとはスカッとしたかったので、『マルサの女』とか、『極妻』(『極道の妻たち』)とか、五社英雄監督の作品を色々と観ていました。
――作品では宗一が色々な企画を行っていましたが、もし千葉さんが宇宙にいて、地球に映像を配信するとしたらどんな企画にしますか?
カラオケが趣味なので、「宇宙で歌ってみた」とか……別に、地球からでもできるけど(笑)。やっぱり、宇宙の景色はお伝えしたいですよね。宇宙空間を背景にして、カラオケ。「何しに行ったんだ」と言われそう。
――配信されたらネットニュースとして記事にしやすそうでありがたいです。
パワーワード感があって、キャッチーではあるかもしれないですね(笑)。最近は、wacciの「別の人の彼女になったよ」が好きなので、歌おうかな。
――宇宙飛行士に、憧れはあったんですか?
子供の頃はありました。理由は覚えてないんですけど、幼稚園の卒園アルバムに宇宙飛行士になりたいと書いてて。今も宇宙を舞台にした映画は好きなので、嬉しかったです。役を通して、そういう夢を叶えられるのはこの仕事ならではですね。
――今回、結構毎回ピンチが訪れてハラハラドキドキする展開にもなっていますが、千葉さんご自身はピンチになったらどうするタイプですか?
できる限りは一人で頑張るけど、結構、素直に助けを求めちゃいますね。最近ピンチだったのは、この作品の撮影で。お恥ずかしいんですけど、なかなか過密なスケジュールだったので、セリフがいっぱいあって、「これまで、どうやって覚えてたかなあ」と少し悩むことがありました。それが仕事だから、頑張れって話なんですけどね(笑)。
――それでは、最後に作品を観ている方へのメッセージをいただければ。
全4話で、連続ドラマとしては短い方なんですけど、宇宙と地球という離れた中での人との関わりあい方という点で、考えるところはたくさんありました。現在の環境もそうですけど、人間関係として、身の回りのことに置き換えても観ていただけると思います。その上で、現実的なことを忘れさせてくれる宇宙という設定があるので、そのバランスを楽しんでもらえたらと思います。
■千葉雄大
1989年3月9日生まれ、宮城県出身。TVドラマ『天装戦隊ゴセイジャー』(10~11年)の主演に抜擢され俳優デビュー。以来様々な作品で活躍し、主な出演作にドラマ『家売るオンナ』(16年)、『ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』(17年)、『おっさんずラブ-in the sky-』(19年)、『いいね!光源氏くん』(20年)、映画『殿、利息でござる!』(16年)、『帝一の國』(17年)、『スマホを落としただけなのに』(18年)、『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(20年)など。公開待機作に映画『子供はわかってあげない』。