KDDIは7月31日、2021年3月期 第1四半期の決算説明会をネット配信で実施しました。それによれば、今期は新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、5G対応スマートフォンの販売台数が大幅に減少。登壇したKDDI代表取締役社長の高橋誠氏は、焦りを口にしていました。
今期の連結業績
今期の連結業績は、売上高が1兆2,427億円、営業利益が2,907億円でした。2021年3月期の通期予想については、第2四半期以降の業績影響を慎重に精査し、据え置きとしています。
成長領域である「ライフデザイン領域」と「ビジネスセグメント」においては206億円の増益となりました。一方で、新型コロナウイルスの影響で端末の販売台数が不振。高橋社長は「前期の第1四半期の業績が悪かったことで、今期は増益にはなりましたが、端末の販売台数が45万台も減少しています。4Gから5Gへの移行が予定通りに進んでおらず、焦りを感じているところです」と説明しました。
5Gの拡販イベントは秋に再開、低価格モデルも投入
今期の決算説明会で高橋社長が繰り返し口にしたのも、5Gサービスが思うように展開できていないことに対する"焦り"でした。
非常事態宣言が出た4~5月の期間、auショップは「Web販売」と「店頭販売」の両方で営業しましたが、販売台数の落ち込みは大きかったようです。「3月以降に、4Gから5Gへの移行スピードを早めたかったのですが、対応端末の販売台数が45万台も減少した影響は非常に大きい。出ばなをくじかれた形です」と高橋社長。
また「5Gの特色を活かしたサービスを紹介するため、3~4月に関連イベントを多く実施する予定でしたが、こちらもすべて中止になりました。今年の秋から再出発できるように、いま着々と準備をしているところです」と説明します。
ただ、足元の販売状況については回復傾向で、「だいぶ戻ってきました。2~4Qで勢いを取り戻していきたい」としています。今後は、もう少し手に取りやすい販売価格の5G端末もラインナップに入れていく方針を示しました。
そして「諸外国と比較して、5Gの展開スピードが後手に回っている。これから続々と登場する5G対応端末の販売台数を、いかに上げていくか。世界に置いていかれないために、事業者だけでなく、国とも話をしながらいろんなアイデアを出していきます」と説明。5G対応端末の年間販売目標は、二百数十万台に設定しています。
次期iPhoneについて
アップルの発表によれば、今年は次期iPhoneの発売時期が数週間遅れてしまう見込み。その影響について聞かれると「まだiPhoneの発売時期については明確に確認できていません。例年よりも数週間遅れた場合、販売数の伸長が若干、少なくなると思う」と高橋社長。次期iPhoneが5Gに対応するのか、まだ憶測の域を出ないとしつつ、「予定通りの数をしっかり販売していくことになるでしょう」と話していました。
ファーウェイの取り扱いは?
アメリカ政府は2020年8月13日以降、ファーウェイを含む中国企業5社を排除する厳しい規制を設ける方針です。これを念頭に、KDDIのネットワーク機器の利用状況、およびスマホの取り扱いについて聞かれると「米国防権限法の対象となる設備について、中国企業5社の通信機器は使用していません。米国との個別取引についてはノーコメントです。ファーウェイの5Gスマホを採用するか、現時点で決まっていることはありません。4Gスマートフォンは取り扱っています」と回答しました。
また、ZTEのスマートフォンについて聞かれると「採用しています。中国製の端末の採用については、あまり大きな規制があるわけではないので、これからも是々非々で検討していきます。もちろん、国防権限法は非常に重要な法律と捉えているので、そのあたりは慎重に進めていきます」と話していました。
UQ mobileの今後について
UQ mobileの今後について聞かれると「ダブルブランド戦略で展開します。世の中には2つの要望があります。ひとつは、より良質なサービスを求める要望。安定した通信品質、在宅勤務がしやすい環境を構築できること、エリアが広いこと、容量無制限の高速通信でNetflixなどが視聴できること。こうした要望に応えるのがauの使命です。5Gネットワークの構築を急ぎ、サービス水準でもグローバルにひけをとらない環境にしていきます」と回答しました。
一方で「UQ mobileでは、品質を維持しながらも低廉な料金を大事にしていきます。サービスはほどほどでも良いので、なんとか低廉な料金で提供してほしい、という要望に応えます」と説明し、2つのブランドで棲み分けをしながらサービスを提供していくとしました。
5G基地局の進捗状況
5G基地局の進捗状況については「建設工事は順調で、かなり前倒しで進めています。6月末までに21都市に建設していますし、2020年の夏以降には全国の主要都市に展開予定です。2021年3月末には約1万局、2022年3月末には約5万局を展開します」と回答。ソフトバンクとの合弁会社「5G JAPAN」についても「すこぶる順調。そちらでは遠隔地や地方都市に5G基地局を構築していきます」と話していました。
au PAYは右肩上がり
au PAYについては「基本的に右肩上がりで推移しています。昨年度の4Qは大規模なキャンペーンを打ったので、大きな勢いが出ました」と高橋社長。他キャリアのユーザーも多く取り込めた、と成果を強調します。
そして「auユーザーをローソンさん(ポンタ会員)に誘うことに成功しています。ポンタ会員には、au PAYをたくさん使っていただいている。au以外のユーザー獲得については、ローソンさんの店頭でも頑張ってもらっています。ローソンさんにとってもKDDIにとっても、プラスになっている」と説明しました。
楽天モバイルの影響
楽天モバイルのMNO参入により、契約者の流出状況は変わったのか、という質問には「前回の決算会見のときにもお話しましたが、auから(当時)MVNOだった楽天さんに出ていく数と、現在のMNOの楽天さんに出ていく数と、あまり状況は変わっていません。あくまで想定の範囲内です。これについてさまざまな分析をしているところですが、おそらく楽天ユーザーは2台持ちの需要が大きいのではないでしょうか」と説明しました。
コロナで伸びた事業は
今期は、成長分野で206億円の増益がありました。その内訳について聞かれると「ビジネスセグメントで86億円、ライフデザイン領域で120億円という内訳です。ビジネスに関しては、テレワークなどによる新しい分野の事業が伸びています。ライフデザイン領域では、電力事業が伸びました。コロナの影響で、巣ごもりになったためです。電力の仕入れ価格が下がったのも増益の要因。在宅の時間が長くなり、スマートパスプレミアムの利用も伸びました。これらが成長ドライバーになっています」。
コロナで成長しなかった分野については「海外でも経済活動が縮退しているので、それに伴う事業がマイナスになりました。ライフデザイン領域では、旅行関係がマイナスに。我々はパートナーとともに会員制の宿泊予約サービス「Relux」(リラックス)をやっていますが、この利益が悪化しました。また、英会話教室・スクールのAEON(イーオン)で予定通りに進捗しなかったり、J:COMでやっているショップチャンネルでも悪影響がありました」と説明しました。