フジテレビは31日、出演者のプロレスラー・木村花さんが亡くなったリアリティ番組『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』の制作過程の検証報告書を公表した。
今回の検証では、制作側が出演者に対して、言動、感情表現、人間関係等について指示、強要したことは確認されないとした。また、存在しない事実を捏造したり、制作スタッフが出演者に対し、事実を大きく歪曲したりするよう指示しているにもかかわらず、それらがないかのように表示する「やらせ」も確認されなかったという。
木村さんがプロレスのコスチュームを誤って洗濯されたことについて、他の出演者に抗議、ビンタするシーンがあり、その内容についての批判が木村さんのSNSに投稿されたことが、大きな問題となった。
この点について、制作スタッフ、技術スタッフ、他の出演者ら10人に対して、この前後のやり取りを含めて聞き取りを行ったが、スタッフが木村さんに対してビンタをするよう指示・強要した、また指示、強要するのを聞いたという証言は得られなかった。一部報道にあった「カメラの前でキレろ」というような発言も確認されなかった。さらに、他の出演者の証言によれば、スタッフが木村さんに対して、けしかける、怒りを煽るような様子はなかったとした。
スタッフによると、木村さんから男性出演者に対して「手が出ちゃうかも知れない」といった発言があったと証言している。
SNSを炎上させようとする意図については、制作スタッフは木村さんに多くの批判が寄せられることを予見できておらず、そのような意図はなかったとしている。また、木村さんの場合に限らず、制作スタッフの全員が、出演者のSNSの炎上を煽ろうとするような意図を持つことはないとしていると説明した。
なお、出演契約書(同意書兼誓約書)は、撮影の方針や、スケジュール、テラスハウスでの生活に関することなど、最低限のルールを相互に確認するものであるとしている。
今後について、SNS対応は誹謗中傷は絶対に許さないという強い姿勢を打ち出すとし、出演者に対しては幾重にも重なるケアの実現すると明言。
最後に「木村花さんの尊い命が失われた事に関して、改めてお悔やみを申し上げます。なお、本件については、BPO 放送人権委員会にご遺族から申し立てがなされており、今後、真摯に対応して参る所存です。この検証結果を踏まえて、二度とこのような事が繰り返されないために、誹謗中傷などSNS対策や出演者の心のケアに取り組むとともに、制作者と出演者の向き合い方についても検討してゆきたいと考えております。最後に、この場を借りて、改めて木村花さんのご遺族の方々に哀悼の意を表します」と結んでいる。
この報告書は、番組の制作過程において不適切な行為がなかったか、制作側が出演者のSNSの状況についてどのように認識し、どのように対応したのか、出演者に対するケアはどのようになされていたかについて、事実関係を明らかにするとともに、今後の番組制作において取り組むべき事項を確認することを目的として作成。ただ、出演者、その他関係者の個人の発言などについては、検証報告に最低限必要であると判断したもの以外については言及していない。また、出演者、その他関係者の個人のプライバシー情報、センシティブ情報などについては、記載していないという。
聞き取りは、木村さんが出演した38話の制作、配信、放送に関わる経緯を中心に、関係者を対象に行い、関連する記録、資料等を確認。出演者、所属事務所関係者への聞き取りも行った。さらに、有識者として、検証過程には弁護士も参加。検証項目のうち出演者のケアについては精神科専門医、SNSへの対応についてはインターネット上の誹謗中傷対策の専門家から、それぞれ意見を受けた。