振り飛車の名手、鈴木大介九段の四間飛車相手に完勝
第79期順位戦B級2組(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)の3回戦、▲藤井聡太棋聖-△鈴木大介九段戦が7月29日に東京・将棋会館で行われました。2連勝と好調なスタートを切った両者の対決は、藤井棋聖の勝利となりました。
振り飛車の名手である、鈴木九段の戦型選択は四間飛車でした。藤井棋聖は四間飛車に対する最もポピュラーな対策である、居飛車穴熊で応戦します。
藤井棋聖が振り飛車相手に穴熊に囲った際の勝率は、何と驚異の100%。デビュー以来14局戦って負けなしです。羽生善治九段も居飛車穴熊勝率の高さが知られています。居飛車穴熊は振り飛車の天敵。強い人がそれを使うとまさに鬼に金棒なのでしょう。
本局は鈴木九段が銀冠に囲った後、3二の銀を前線に繰り出そうと△4三銀と指しました。次に△5四銀や△4四銀まで進めば一人前の形ですが、この△4三銀のタイミングは飛車先が止まってしまい、中途半端なかっこうです。この隙を藤井棋聖は見逃しませんでした。
藤井棋聖は飛車先の歩を突き捨ててから、角道を開けて角交換を挑みます。△7七角成と鈴木九段が角を交換してきたのに対し、藤井棋聖は▲7七同桂と対応。桂を跳ねてしまうと穴熊が薄くなってしまうため、指しにくさはあります。しかし、指しにくさなどという曖昧な概念で指し手を選ばないのが藤井棋聖です。読みを入れて、これで指せるとみているのでしょう。
実際、優勢になったのは藤井棋聖でした。飛車の成り込みが約束され、攻めの手に困らなくなりました。鈴木九段も角打ちから穴熊の桂頭を狙って攻めていきますが、藤井棋聖はその攻めを逆用。7筋にどんどん駒を打ち込んでいき、相手の銀冠を薄くしていきます。
鈴木九段は馬を引き付けて必死の抗戦を続けましたが、藤井棋聖の攻めが途切れることはありませんでした。最後は即詰みに打ち取って、103手で藤井棋聖の勝利。自玉に王手すらかからないばかりか、鈴木九段に攻めの手をほとんど指させないほどの完勝でした。藤井棋聖相手に飛車を振ってはいけないのか!? とすら思わさせられます。
この勝利で藤井棋聖は今期3連勝。連続昇級へまた一歩前進です。また、順位戦のトータル成績は32勝1敗。順位戦成績はすでに何度か藤井棋聖の戦績を語る上で紹介していますが、勝ち数が積み上がっていくだけで負けが一向に増えません。勝率は9割6分9厘から9割7分0厘に上昇しました。