既報の通りAMDはデスクトップ向けにRenoir(開発コード名)ベースの「Ryzen 4000Gシリーズ」を合計12製品(他にAthlonを6製品)発表した訳だが、このうちなぜかRyzen Pro 4000Gシリーズのバルク品のみが8月に店頭に並ぶ事になっている。
これに先立ち、このRyzen Pro版の性能を確かめる機会に恵まれた。ちょっと機材手配の関係で、現時点では本当に触り程度のものしか出せない(単に本格的なテストをやってると間に合わない)ので、今回はPreview版という事でご容赦いただきたい。引き続きテストを実行中であり、これを含んだ完成版は、Pro版の店頭販売がスタートする8月8日までに掲載予定である。
評価機材
さてテスト機材であるが、何しろ販売されるのがバルク品扱いなので、入手できたのはCPUのみである。一応各CPUともブリスターパック(Photo01)入りで入手できたが、実際の市販時にどうなるかはまだ不明である(トレイ販売、という話も聞いたが確認が取れている訳ではない)。
今回試せたのはRyzen 7 Pro 4750G(Photo02~05)、Ryzen 5 Pro 4650G(Photo06~09)、Ryzen 3 Pro 4350G(Photo10~13)の3製品。もう主要なマザーボードベンダーはこのRyzen Pro 4000Gシリーズへの対応を進めており、例えば今回利用したASRockのX570 Pro4の場合だと今年7月2日リリースのP3.00でサポートされている。こうした対応BIOSを利用することで、特に問題なく起動した。
その他のテスト環境は表1に示す通りである。今回は比較対象にPinnacle Ridge(開発コード名)ベースのRyzen 3 3200GとRyzen 5 3400Gを用意した。Ryzen 5 3400GがこれまではAPUのハイエンドだったわけで、これがまぁ性能の基準になると考えて頂ければ良いかと思う。
■表1 | ||
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CPU | Ryzen 3 3200G Ryzen 5 3400G |
Ryzen 3 Pro 4350G Ryzen 7 Pro 4750G Ryzen 5 Pro 4650G |
Motherboard | ASRock X570 Pro4 BIOS Version 3.00 |
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Memory | CFD W4U3200CM-16G×2 | |
DDR4-2933 CL22 | DDR4-3200 CL22 | |
Video | 内蔵GPU Radeon Driver Adrenalin 20.7.2 |
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Storage | Intel SSD 660p 512GB(M.2/PCIe 3.0 x4) (Boot) WD WD20EARS 2TB(SATA 3.0)(Data) |
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OS | Windows 10 Pro 日本語版 Version 1909 Build 18363.997 |
ちなみにメモリはDDR4-3200 16GBモジュールを利用した(CL22動作)が、Ryzen 3 3200G及びRyzen 5 3400GはDDR4-3200未対応ということで、DDR4-2933 CL22動作で利用している。またGPUのドライバは、AMDが7月21日付でRyzen 4000G対応のAdrenalin 20.7.2を同社のサイトで公開しており、これを利用している。
以下グラフ中の表記は
R3 3200G : Ryzen 3 3200G
R5 3400G : Ryzen 5 3400G
R3 4350G : Ryzen 3 Pro 4350G
R5 4650G : Ryzen 5 Pro 4650G
R7 4750G : Ryzen 7 Pro 4750G
となっている。
◆CineBench R20(グラフ1)
CineBench R20
Maxon
https://www.maxon.net/
さてまずはCineBenchの結果を。まず最初にCPUコアの動作周波数をちょっと確認しておくと、
Ryzen 3 3200G : 3.6GHz/4.0GHz 4core/4thread
Ryzen 5 3400G : 3.7GHz/4.2GHz 4core/8thread
Ryzen 3 Pro 4350G : 3.8GHz/4.0GHz 4core/8thread
Ryzen 5 Pro 4650G : 3.7GHz/4.2GHz 6core/12thread
Ryzen 7 Pro 4750G : 3.6GHz/4.4GHz 8core/16thread
である。要するにRyzen 3同士はTurbo、Ryzen 5同士は定格/Turboの動作周波数が全く同一で、コア/スレッド数が違うだけである。これを念頭に置くと、All Threadsの性能は大きくばらけるだろうと予測できるが、One Threadでの性能はそれほど違わないのでは? とも思えるのだが、実際には御覧の通りOne Threadであっても
Ryzen 3 389:467≒1:1.20
Ryzen 5 414:491≒1:1.19
と、20%前後の性能の伸びが確認できる。またAll Threadの結果であるが、以前Ryzen 3000 XTシリーズをやった時の結果と比較すると、Ryzen 5 Pro 4650GはRyzen 5 3600Xに遜色ない(3586 vs 3753)し、Ryzen 7 Pro 4750GはRyzen 7 3800Xに肉薄する(4876 vs 5000)結果になっており、もうこうなってくると、そもそも「Discrete版のRyzen 5/7は要るの?」という気になってしまう。その位優秀な結果である。まぁCineBenchの結果だけでそこまで論じるのは無茶ではあるので、次のPCMarkの結果も見てみたい。
◆PCMark 10 v2.1.2177(グラフ2~7)
PCMark 10 v2.1.2177
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/pcmark10
ということでPCMark 10。まずグラフ2がOverallであるが、見事に性能差がはっきり出ている格好になっている。PCMark 10 Express/PCMark 10ではRyzen 5 3400GとRyzen 3 Pro 4350Gが大体同程度の性能、という中々面白い結果になっているのは、主にProductivityのテスト結果がRyzen 3 4350Gだけちょっと落ち込んでいるからで、ただそれを除くとRyzen Pro 4000Gシリーズの性能は明確に上である。特に内蔵GPUを使いつつ、PCMark 10 Extended「以外」でOverall Scoreが5000近い(or超えている)というのは、UL Benchmarksのリファレンス機(Core i5-7600K+GeForce GTX 1050)と同等の処理性能がある、と認識されている事になる。
Test Group別(グラフ3)で見ると、Gaming(=3DMark FireStrike)は流石に性能が低めだが、それ以外は結構高めのスコアになっている。もっともProductivityに関してはRyzen 3000GシリーズとRyzen Pro 4000Gシリーズであまり性能差が無いが、これは後述したい。
Essentials(グラフ4)だと、Web BrowsingはともかくApp Startupでも明確にCPUで性能差が出ているのはなかなか面白い。ストレージそのものは当然共通なので、要するにストレージのハンドリング性能が異なるということになる。Productivity(グラフ5)のみちょっと暴れているが、これはOpenOfficeを使い、内部でOpenCLを呼んでいるというちょっと特殊な環境だからこそであり、このあたりがオーバーヘッドになっていると思う。このProductivityに関しては、むしろグラフ7の方が参考になるだろう。
Digital Contents Creation(グラフ6)では、Ryzen Pro 5/7の性能が突出している感じで、従来のRyzen 5 3400Gと比べると全然処理性能が異なっている。何というか、Ryzen Pro 5/7だと、割と重めのエンコードとかデジカメのRAW画像の現像であってもそれなりに快適に使えそうな気がする(今回はそこまで確認している時間がなかったので、後日機会があれば)。
グラフ7がOffice365を利用したApplication Testの結果である。Excelに関してはもう完全にCPU性能がそのまま反映されているし、EdgeでもRyzen 3000GシリーズとRyzen Pro 4000Gシリーズでは明確に性能が異なっており、快適さが一段階上がっている様に思われる。あまり差が無いのはWordだが、これはまぁ致し方ない(というか、Ryzen 3000GシリーズでもWordだけなら現状でもそれなりに快適で、これ以上にするのは難しい)というあたりか。PowerPointもやはり結構差がある感じであり、Office365を前提にしたProductivityでは、やはりRyzen Pro 4000Gシリーズだとがかなり快適さが増している様に思える。
◆3DMark v2.12.6949(グラフ8~10)
3DMark v2.12.6949
UL Benchmarks
https://benchmarks.ul.com/3dmark
内蔵GPUについては、今回ゲームの結果まで示す時間が無いので、取り急ぎ3DMarkの結果のみ。さすがに2Kを超える解像度は非現実的なので、今回はFireStrike Extreme/Ultra、及びTimeSpy Extremeは省いている。
グラフ8がOverallであるが、Ryzen 7 Pro 4750Gはついにスコアが4000にたどり着くに至っており、確実に描画性能が上がっている事が判る。ただTimeSpyだと1000台のスコアのままであり、確かに描画性能は上がっているとは言えまだ十分ではない感じ。DirectX 11のゲームであればそこそこ行けそうだが、DirectX12は厳しい、というあたりだろうか。
グラフ9がGraphics Testの結果である。やはりこうしてみると、GPUが6CU/1700MHz駆動まで下げられたRyzen Pro 3 4350はちょっと厳しく、Ryzen 5 3400G程度の性能ということになる。逆に言えば、丁度Ryzen 5 3400G程度になる様に調整されたのがRyzen 3 4350Gというべきなのかもしれないが。
グラフ10がPhysics/CPU Testの結果で、こちらはどのケースでもCPUの性能がそのままといった感じになっている。
ということで総評は?
これはあくまでもPreviewで、今回のこの3つのテストだけで性能を語るのは危険ではあるのだが、少なくとも素性は凄く良さそうな結果が垣間見えている感じである。もう少し他のアプリケーションとか、GPU非統合のRyzen 3000シリーズとの比較、それと内蔵GPUの性能でどこまでゲームが楽しめるか、といった事柄に関しては完成版の記事をお待ち頂ければと思う。