ソニーは7月29日、Webサイトで発表を予告していたフルサイズミラーレス「α7S III」を正式に発表した。動画撮影の機能を引き上げた映像クリエイター向きの高性能モデル。新設計の放熱機構を備え、4K/60pや4K/120pの高精細動画を長時間安定して撮影できるようにしたほか、オートフォーカスや手ブレ補正の性能も高めた。944万ドットの高精細電子ビューファインダーや、SDカード並みのサイズに抑えた新規格の小型メディア「CFexpress Type Aカード」を新たに採用するなど、シリーズ初の装備も多く盛り込んだ。
価格はオープンで、予想実売価格は税別409,000円前後と、このスペックでは意欲的な低価格とした。高画質で印象的な動画を手軽に撮影したいと考えるプロやハイアマチュアの間で話題になりそうだ。発売は10月9日。
低画素を継承しつつ、センサーを裏面照射型に一新
2015年10月に登場した「α7S II」の後継モデルで、動画を中心とした多くの機能や装備を改良した。おもな改良点は以下の通り。
画素数を有効1210万画素に抑えたフルサイズ裏面照射型CMOSセンサー(新開発)と、従来の8倍もの高速処理が可能な画像処理エンジン「BIONZ XR」を搭載。画素数を抑えることで低ノイズ、広ダイナミックレンジを図った。データの読み出し速度もα7 II比で2倍に高め、ローリングシャッターゆがみの低減も図った。感度は標準でISO80~102400、拡張時はISO40~409600と超高感度撮影が可能。撮像素子の前面には、超音波でゴミを飛ばすアンチダストシステムを搭載。
動画は4K/60pに加え、4K/120pのハイスピード動画撮影に対応。24pと比べ、5倍のスローモーション動画が撮影できる。4:2:2 10ビット記録に対応し、解像感や色再現がよりなめらかになる。
オートフォーカスは、α7Sシリーズで初めて像面位相差AFに対応。AF測距点は759点で、プロ向けモデル「α9 II」の693点よりも多い。AFエリアは撮像面の約92%と、ほぼ全域といえる。瞳AFや動物瞳AFにも対応する(動物瞳AFは写真撮影時のみ)。
ボディ内手ぶれ補正は5軸補正対応で、動画撮影専用のアクティブモードを追加。歩きながらの手持ち撮影でも効果的に補正できるようにした。
長時間の連続動画撮影を可能にするため、撮像素子や画像処理エンジンから発生する熱を効果的に分散して放熱させる構造に一新し、1時間もの4K/60pの高画質動画撮影を可能にした。手ぶれ補正機構には、熱伝導性に優れるグラファイト素材をシグマ(Σ)型に加工して配置。
電子ビューファインダー(EVF)は、業界で最高解像度となる944万ドットの有機ELパネルを採用し、ファインダー倍率も0.90倍に拡大。写真撮影時は、ファインダーを60fps(標準)と120fps(高速)に切り替えられるように。
背面液晶は動画撮影需要を重視し、ミラーレスのαでは初のバリアングル液晶を採用。タッチでの操作を前提に、メニュー画面のレイアウトを一新。
メモリーカードは、SDメモリーカードよりもサイズを抑えたCFexpress Type Aカードを採用。カードスロットはデュアルスロットとなる(両スロットともSDカードとの共用)。
動画撮影用のMOVIEボタンを上部に配置。側面には、一般的な形状のHDMI Type-A端子を搭載。
αシリーズで初めて、USB PDによる高速充電に対応。バッテリーも、従来よりも容量を高めたZバッテリーに変更し、1回の充電での撮影枚数を従来の約1.6倍にあたる510枚に増強。
- 撮像素子:フルサイズ裏面照射型CMOSセンサー(有効1210万画素)
- 記録メディア:SD/SDHC/SDXCメモリーカード(UHS-I/II対応)、CFexpress Type Aカード
- 測距点数:759点(位相差検出方式、35mmフルサイズ時)
- 瞳AF:人物 (左右瞳選択可) / 動物(動物は静止画のみ)
- ISO感度:ISO80~102400(拡張時はISO40~ISO409600)
- EVF:0.64型有機EL(約944万ドット、倍率約0.90倍)
- ファインダーフレームレート選択:STD 60fps / HI 120fps
- 背面液晶:3型バリアングル式(144万ドット)
- 手ぶれ補正:イメージセンサーシフト方式5軸補正(5.5段分相当)
- Wi-Fi:IEEE 802.11a/b/g/n/ac
- バッテリー撮影枚数(静止画撮影可能枚数):ファインダー使用時約510枚、液晶モニター使用時約600枚
- バッテリー撮影時間(実動画撮影時):ファインダー使用時約80分、液晶モニター使用時約95分
- 本体サイズ:W128.9×H96.9×D80.8mm
- 重さ:約699g(メモリーカード、バッテリー含む)