東急電鉄は27日、ソフトバンクの4Gデータ通信に対応したLED蛍光灯一体型の車内防犯カメラ「IoTube(アイ・オー・チューブ)」のメディア説明会を行った。4月から各車両への設置が始まり、7月25日に全182編成1,247両の設置を完了した。
東急電鉄は2015年以降、吊革盗難(200本強)や車内でのいたずら行為の発生などを受け、同社保有の全車両に防犯カメラを設置することを決定。しかし、従来型の車内防犯カメラは設置にあたり、機器や配線敷設のため、1両あたり2週間という長期間の車両工事が必要とされ、工事費用の増加も見込まれた。他の鉄道事業者と相互直通運転を行う中、撮影映像を確認するために当該車両へ赴き、記録媒体を抜き取って事務所などに持ち帰り、映像を読み出す必要もあったという。
これらの課題を踏まえ、より早期に、より安価に防犯カメラを設置できる方法を検討。東急電鉄の協力の下、特許技術を有するMOYAIにより、LED蛍光灯一体型の車内防犯カメラ「IoTube」が開発された。ソフトバンクはこの「IoTube」を本体として、「4Gデータ通信サービス」「クラウド環境」「映像確認や機器管理のための専用ウェブアプリケーション」「保守・運用サービス」を一体化したIoTカメラサービス「SecuLight(セキュライト)」を提供する。
「IoTube」は既存のLED蛍光灯を取り替えることで、簡単かつ早期に設置完了できる。設置にかかる時間は1両あたり約30分とのこと。発注から全車設置完了までに要する期間は約8~9カ月とされ、既設カメラの約3分の1にまで短縮できる。
内部には200万画素高解像度・広視野角カメラ(最大視野角160°)を搭載。SDカードに約7日分の映像データを保存できる。撮影した映像は4G回線を利用して伝送可能。遠隔地からでも撮影映像をほぼリアルタイムに確認できるため、運行中の車内状況を把握でき、車両内でトラブル等が発生した際も迅速な対応が可能となる。メディア説明会では田園都市線の車両2020系に取り付けられた「IoTube」を使用してのデモンストレーションが行われ、車内で撮影された映像が専用パソコンに鮮明に映し出された。
東急電鉄は昨年5月末から約1カ月間、大井町線の2編成に「IoTube」を試験導入。その後、田園都市線の一部車両にも試験導入しており、「IoTube」本体の強度や映像の撮影角度、設置場所におけるデータ通信のための電波強度などを確認できたことから、正式に導入を決定した。東急電鉄所属の車両のうち、20m・4扉車両(東横線、目黒線、田園都市線、大井町線)は1両あたり4本、18m・3扉車両(池上線、東急多摩川線)は1両あたり3本、いずれもドア付近に設置される。
車両端部に車内防犯カメラを設置した車両は「IoTube」の設置本数が異なり、20m・4扉車両は1両あたり2本、18m・3扉車両は1両あたり1本、車両中央寄りのドア付近に設置される。世田谷線所属車両は1両あたり2本設置を基本とする。なお、既設の車内防犯カメラは耐用年数が過ぎる頃をめどに置き換えるとのことだった。車内防犯カメラを設置した車両には、乗客に周知するためのステッカーが掲出される。
東急電鉄所属の全車両(こどもの国線は除く)を対象とした「IoTube」の設置は7月25日に完了。これを受けて同社は、「車両内の犯罪防止および利便性の高いサービスを追求し、セキュリティや顧客満足度の向上を図るとともに、将来的にはパートナー企業と連携し、IoTubeに多様なセンサーを搭載しそのデータを活用することで、AI(人工知能)やIoTを融合した次世代型ネットワークカメラとして、車内温度の可視化や不審物の自動検出など、新たなサービスや新規事業の創出を目指します」と発表した。