このMF KESSAIがサービスを開始したのは、2019年8月。その後、堅調に契約数を増やしていたというが、コロナ禍の影響から最近では問い合わせ件数が急増しているという。今年2月と比較して3月は144%、4月は161%とのこと。こうした動きに対して、冨山氏は「MF KESSAIはもともと成長が見込まれる中小企業、スタートアップ企業の運転資金支援を念頭に置いて開発された。現在も、企業の審査ではビジネスの成長性を重視した審査を行っている。しかし、3月から5月にかけては成長企業も資金繰りに苦労している。成長のためではなく、企業存続のための資金ニーズが増加している」と語る。
中小企業、特に成長を目指しているベンチャー企業などでは、中期的な経営計画を前提に人材の採用や設備投資を行っているケースが多い。そうした矢先にコロナ禍の影響を受けたことによって世の中の需要が冷え込み、資金繰りが悪化してしまっているのだ。
「企業の問い合わせなどから、事業計画に対して成長が止まってしまった中小・ベンチャー企業が多いと感じている」(冨山氏)
また冨山氏によると、ファクタリングサービスを利用する企業のなかには、飲食業や卸売業など非デジタル領域の業種も増加しているという。
「飲食業ではクラウドファンディングで資金集めを行い、その支援金を早期に資金化したいというニーズで利用しているケースがある。また食品の卸売業では、飲食店向けの取引低迷からBtoCのネット販売を始めている場合があり、その売上を決済プラットフォーマーから支払われる前に早期に資金化して、生産者に早く支払いたいというニーズで利用するケースもある」(冨山氏)
このように、コロナ禍の困難な状況を乗り切り事業を継続させようと尽力している企業があるなか、そこから“Withコロナ”時代のビジネスを占う兆候も見られるという。それがデジタルを活用している企業の成長だ。冨山氏も最近の企業の財務状況について「BtoCの店舗ビジネスは非常に厳しい状況にあるが、デジタル企業は成長し続けている」と指摘する。そして、そこからわかる“Withコロナ”の時代におけるビジネスの在り方については、次のように語っている。
「オフラインからオンライン、オフラインとオンラインの効果的な併用へといったビジネスのチャネルシフト、またBtoC専業からBtoCオンライン販売へのビジネス拡大といった形で、社会情勢に合わせて柔軟にビジネス戦略を転換できる企業が、これからは生き残っていけるのではないか。一方、製造業、観光業などビジネスの方向性を転換することが困難で苦しんでいる企業がいることも大きな課題だ」(冨山氏)
コロナ禍による企業の資金繰り悪化を救う役割として、フィンテックはこれからも大きな役割を果たしていくことが期待される。冨山氏も「技術力、柔軟性、スピード感、AIなど先端技術の活用などによって、金融機関にはできないサービスを提供しながら、企業の財務を陰で支えることがフィンテックの役目だ」と語った。