iPhoneはインテリジェンスな充電システムを備えており、iOSのアップデートでさらに効率的に進化することもしばしばです。iOS 13では、新たに「最適化されたバッテリー充電」という機能が追加されており、これまでバッテリーを長持ちさせるために行っていた充電テクニックが、いつの間にか不要になっていたりもします。
今回はiPhoneの充電にまつわる、ユーザーとして知っておきたい3つの“新常識”を紹介します。なお、いずれも本稿執筆時点での最新版であるiOS 13.4の場合で、今後のアップデートで変更になる場合もあります。
100%に近づくにつれ充電速度が遅くなる!→正常です
iPhoneの充電速度は、常に等速というわけではありません。現行のiOSは、バッテリーが80%まで回復すると、それ以降は充電速度が緩やかになる、一般には「トリクル充電」と呼ばれる仕組みを採用しています。
実際に、バッテリー残量の回復にどれくらい時間がかかるかを実機で計測すると、あるiPhoneでは0~80%までは数分ごとに5%ずつという速いペースで回復しますが、それ以降はガクンと速度が下がり、残量が90%以上ともなると、5%の回復させるのに十数分、機種や環境によっては30分以上かかることもあります。これが正常な状態なのです。
そのため、80%くらいまでのバッテリーの回復速度から、このペースだともう少し待てば100%になるだろう……と思い込んで外出を遅らせたりしていると、そこから満充電まで1時間近く待たされる羽目になることもあります。急いで外出しなくてはいけない場合は、80%をメドに充電を打ち切るのが、もっとも効率がよいことになります。
ちなみに、この「80%以降は緩やかに」という挙動をオフにすることもできます。iOSの設定画面で「バッテリー」→「バッテリーの状態」→「最適化されたバッテリー充電」から設定します。ただし、これはバッテリーの劣化を防ぐための機能ですので、むやみにオフにするのは考えもの。原則オンのまま使うべきでしょう。
バッテリーが劣化しているかはここを見れば分かる
iPhoneに用いられているリチウムイオンバッテリーは、容量の100%にあたる電力を使い切ると1サイクルとしてカウントされ、これが500回繰り返されると、当初の80%まで容量が低下します。
これが俗にいう「バッテリーの劣化」で、iPhoneに限らず、リチウムイオン電池を採用したデバイス、例えば市販のモバイルバッテリーも、この500回というのがひとつの基準になっています。
バッテリーが具体的にどのくらい劣化しているかは、iOSの設定画面から確認できます。「バッテリー」→「バッテリーの状態」→「最大容量」に書かれたパーセンテージがそれで、新品の時は100%、その後緩やかに値が減少してきます。
ちなみにこの1サイクルというのは、100%→0%までみっちり使い切って1回分をカウントというわけではなく、例えば100%から25%まで減らし(ここでマイナス75%)、そこから80%まで充電したのち、80%から55%まで減らす(ここでマイナス25%)ことで、合計するとマイナス100%=1サイクルとみなされます。
そしてバッテリーが劣化してくると、この分母そのものが減る形になります。いったん分母が減ると戻ることはないため、ある程度劣化が進んだところで、バッテリーそのものを交換するのがベターということになります。
ちなみに個人的経験ですが、80%未満であれば、Apple Storeに持ち込んだ時、交換が必要だと判断してくれることが多いようです(複数の条件があるので一概にはいえません)。上記の設定画面をチェックして、あまりにも低い値を示しているようであれば、検討してみるとよいかもしれません。
かつては、バッテリーを使い切らずにこまめに充電する「継ぎ足し充電」は、電池の寿命を縮めるためにNGとされていましたが、これはニッケル水素電池やニッカド充電池の話で、いまiPhoneで使われているリチウムイオン電池では、むしろこの「継ぎ足し充電」こそがバッテリーを劣化させないための効率的な方法ということになります。常識が変わった典型的な例で、知識をアップデートしておきたいところです。
iPhoneの突然のシャットダウンは「バッテリー要交換」のサイン?
上記以外にもうひとつ知っておきたいのは「ピークパフォーマンス性能」です。バッテリーが劣化してくると、特定のアプリの駆動に必要な電力を供給できず、iPhoneがいきなりシャットダウンするなどの現象が起こるようになります。
実際には、電力不足でデバイスを壊さないようにiOS側が「これはヤバイ」と判断したタイミングで意図的にシャットダウンを実行しているのですが、それを知らないユーザーからすると「急にiPhoneの電源が落ちた」「故障だ」と解釈してしまいがちです。
こうした事態が一度発生すると、次回からそれが起こらないよう、パフォーマンスを監視するための機能が自動的にオンになります。これが冒頭の「ピークパフォーマンス性能」で、設定画面から適用の有無を見ることができます。また、適用された時点でユーザーに通知されます。
このパフォーマンス管理が適用された状態では、画面のバックライトが暗くなったりスピーカーの音量が下がったり、アプリの起動がゆっくりになったり、滑らかだったスクロールがカクつくようになったりと、見た目の性能や挙動に影響が出るようになります。
通話の品質や、写真や動画の品質には影響は出ず、設定を変更してオフにすることもできますが、そうなると不意のシャットダウンが再び発生する可能性があり、あまりよい策とはいえません。老体にムチを打って働かせるようなもので、バッテリー以外のハードウエアの故障を招く可能性もあります。
逆にいうと、このパフォーマンス管理がオンになっていて、かつ前よりも明らかにもっさりしていると感じるようになれば、その時こそがバッテリー交換のタイミングといえるかもしれません。特に、保証期間の満了が迫っているような場合は、ありがたく権利を使わせてもらうとよいでしょう。