米Corningは7月23日 (現地時間)、スマートフォンやタブレットのカバーガラスに使用されているGorilla Glassの新製品「Gorilla Glass Victus」を発表した。Gorilla Glassシリーズの歴史において初めて落下とスクラッチの両方に対して耐久性の大きな向上を実現。2018年7月に発表したGorilla Glass 6まで同社はGorilla Glassシリーズの製品名に数字を用いてきたが、技術的な進歩を伝えるためにGorilla Glass 7ではなく「Gorilla Glass Victus」と命名した。同社によると、近い将来にGorilla Glass Victusを採用した最初の製品がSamsungから登場する。

対落下と対スクラッチの耐久性は必ずしも比例するものではなく、Gorilla Glassは世代ごとに対落下性能を伸ばしてきた一方で、スクラッチに対しては2014年のGorilla Glass 3から大きな向上を果たせていなかった。

Gorilla Glassは、溶解したカリウム塩にガラス素材を浸すことで、ガラス表面のナトリウムイオンをより体積の大きなカリウムイオンに置換させて耐久性を高めている。ビリヤードのトライアングルラックに喩えると、ビリヤードの球を並べたラックは中で球が動く崩れやすい状態だが、球を少し大きなテニスボールに変えるとラックの中でボールが動かなくなる。そのように圧縮された層を形成することで、Gorilla Glassは対落下性能を向上させてきた。しかし、従来のアプローチでは対落下と対スクラッチの耐久性向上がトレードオフになる面があった。ガラスが割れるのを防ぐために、これまで対落下性能を重んじてきたが、スマートフォンの買い換えサイクルが長くなり、スクラッチ傷がつくことで、割れないはずの落下でも破損する可能性が高まっている。長期的な使用における耐久性を高めていくために、カバンの中などでスクラッチ傷がつくのも防ぐ対スクラッチ性能の向上に取り組み始めた。

  • ダイヤモンドスクラッチ・テストの結果

    ダイヤモンドスクラッチ・テストにおけるGorilla Glass Victusのしきい値は7~10ニュートン、競合のアルミノケイ酸ガラスの4倍程度の性能

ラボテストにおいてGorilla Glass Victusは、競合のアルミノケイ酸ガラスが0.8メートル以下の高さで破損するようなハードフロアへの落下テストにおいて、最大2メートルの高さまで破損しなかった(Gorilla Glass 6は1.6メートル)。また、対スクラッチ性能を調べるダイヤモンドスクラッチ・テストで、Gorilla Glass VictusはGorilla Glass 6の2倍の耐久性を示した。総合的な耐久性の向上はデバイスメーカーにもメリットをもたらすという。対スクラッチ性能が向上したことで、スマートフォンなど搭載製品の製造における歩留まりが向上し、より高性能なGorilla Glass Victusを採用してもデバイスメーカーは最終的な製品におけるパーツ費用を従来と同程度に抑えられるとCorningは主張している