トライアンフがワニ革をまとった特製バイク「スラクストンR “WANI”」を公開した。バイク×クロコダイルという異色のコラボが実現した世界に1台のバイクだが、正統派カフェスタイルを継承するスラクストンR(Thruxton R)が、一体なぜこんなことになってしまったのだろうか。

  • トライアンフ「スラクストンR “WANI”」

    能楽師・大倉正之助氏からインスピレーションを受け、トライアンフモーターサイクルズが作った「スラクストンR “WANI”」。制作にあたっては、ワニ革を使ったオーダーメイド品を取り扱うZELE-PARIS(ゼルパリ)と、爬虫類皮革専門タンナーである藤豊工業所に協力を仰いだ

ワニブームがバイクの世界にも?

トライアンフ茅ヶ崎のグランドオープンに先立つプレスデーで公開された衝撃の特別カスタム車両「スラクストンR “WANI”」。全長4m級のポロサスクロコダイルから取ったワニ革を丸1枚使用し、フェンダーからテールにかけてを贅沢に装飾したラグジュアリーでいかつい1台だ。ワニの生命力をそのまま宿したような車体は、見るものを圧倒する異彩を放っている。

  • トライアンフ「スラクストンR “WANI”」

    ワニ革が貼り込まれたフロントカウル。全体的にいかつさがアップしている印象

世界的にも希少価値の高いポロサスクロコダイルのワニ革と、それを貼り付ける高い技術力が融合したバイク「WANI」。その価格は、下世話な筆者ならずとも大いに気になるところだと思うのだが、トライアンフモーターサイクルジャパンの野田一夫社長によれば、「スラクストンRが約230万円の車両。ワニ革で約300万。そのほかに技術料や世界に1台という稀少性などを踏まえると、目利きの大倉正之助先生(制作のきっかけにもなった能楽師)の見立てでは1本(1,000万円)ぐらい」とのことだった。

  • トライアンフ「スラクストンR “WANI”」

    曲面の多いバイクだけに、繊細なワニ革を貼り込むには高い技術力が要求される。世界的にみても、ここまで美しく貼り込める職人は限られるそう

とはいえ、スラクストンRといえば、本格カフェレーサーとして人気のトライアンフを代表するモデルだ。そんな大切なバイクに今回のようなカスタムを施すと、下手をすればイロモノ扱いされることにもつながりかねない。それでも制作に踏み切ったのはなぜか。野田社長に聞いてみた。

まさかの市販予告に心はワニワニパニック!

――今回、「スラクストンR “WANI”」を作られたのはなぜでしょうか?

「オートバイは趣味の世界なので、『プレミアム・ライフスタイル・モーターサイクル・ブランド』を標榜している我々としては、そのあたりをできるだけ訴求したいと考えていました。やっぱりカスタムで、できれば普段ないようなものを作りたいねという話の中で、大倉先生にタンナーの方を紹介していただけることになり、制作が始まりました」

  • トライアンフ「スラクストンR “WANI”」

    フロントフェンダーももちろんワニ革でコーディネート

――あまり例のないチャレンジだと思いますが、完成イメージはできていたのでしょうか?

「全くできていませんでした。シートなどには革張りのものがありますので、そこはできると思ったんですが、それがボディーでとなると、果たしてどこまでできるのかというのが正直なところでした」

  • トライアンフ「スラクストンR “WANI”」

    最初にイメージできていたというシートがワニ革でないところも面白い

――完成した車両を見ていかがでしょうか?

「想像以上にいいものができました。“どこまでできるのか”という表現としては、すごく良かったと思います」

――「スラクストンR “WANI”」は今後、どうする予定ですか?

「将来的には、購入を希望される“センスのいい方”に販売したいと考えています。時期などはまだ決まっていませんが、追ってアナウンスしますので、それまで楽しみにお待ちいただければと思います」

  • トライアンフ「スラクストンR “WANI”」

    こんなにも黒光りするテールカウルがこれまでにあっただろうか

――販売予定ということは、風雨にさらされてもワニ革は大丈夫ということですか?

「正直に申しまして、カスタムも含めた全てがトライアンフの品質保証の対象というわけではありません。概念的にいえば、バイクを買われた後にご自身でカスタムされたというイメージです。なので、通常我々が行うような耐候性テストを通過しているわけではありません。ただ、耐水性や傷などは職人さんにチェックしてもらっていますので、多少経年劣化したとしても、その風合いも楽しんでいただけるものにはなっているのではないでしょうか」

まさかの市販が予定される「スラクストンR “WANI”」。現在は一般公開されていないため、次に見る機会があるかどうかすら定かではないが、販売価格がいくらなのか、またどんな人が買うのかなど、興味が尽きない車両だ。