暗い夜道は安全や防犯の面で危険ではありますが、街の明かりが増えると問題になるのが「光害」です。光害とは、街灯や街の明かりで星空が見えにくくなる環境問題のこと。
そんな折り、パナソニックが光害対策型のLED防犯灯・道路灯を開発。国内では初めて、国際ダークスカイ協会による「星空に優しい照明」の認証を取得しました。この照明、最初の設置場所となるのが、星空の美しさから「星の郷」の愛称でも親しまれる岡山県美星町。一体「光害対策型の照明」は普通の照明とはどう違う? 美星町で「星空に優しい照明」を見てきました。
国内初の「星空に優しい照明」認証を取得
いまや光害は、日本だけでなく世界的な問題。光害に関わる啓蒙活動などを行う団体として、1988年に米国で「国際ダークスカイ協会」(IDA)が設立されました。現在は世界18カ国に60以上、日本にも支部があります。
IDAでは、「星空に優しい照明(Dark Sky Friendly Lighting)」の認定や「International Dark Sky Places Program(星空保護区認定制度)」を進めています。これまで日本では、正式に「星空に優しい照明」と認証された製品はなかったのですが、2020年1月に国内で初めてパナソニックがDark Sky Friendly Lightingの認証を受けた製品を発表しました。
ちなみに、Dark Sky Friendly Lightingを取得する条件としては、まぶしさを最小限に抑えること、照明よりも上方への光漏れが一切ないこと、星空を見えにくくする青色光が少ないこと(色温度が3,000K以下の照明色)などがあります。
実際にこのIDA認証 公害対策型防犯灯を見に行ったところ、違いは一目瞭然。従来型の防犯灯もIDA認証タイプも、どちらも器具全光束(明るさ)1,030ルーメンなのですが、あきらかに従来型はまぶしく感じます。
星空を守るためのスピード開発はパナソニックならでは
パナソニックが「星に優しい防犯灯」を開発した背景には、岡山県美星町の存在が欠かせません。美星町は晴れの日が多く人工光も少ないため、1982年から「星の郷」という愛称で呼ばれている星空の美しい町。
1989年には「美しい星空を守る美星町光害防止条例」を制定するほど、星空を大切にしている町でもあります。そんな美星町が現在取得を目指しているのが、前述した国際ダークスカイ協会による「International Dark Sky Places Program(星空保護区認定制度)」内の「ダークスカイ・コミュニティ」という部門です。
ところが、美星町内に設置されている411台の防犯灯をLED化したところ、「以前より夜空が明るくなっているのでは?」という声が出ました。そこで、昨年(2019年)3月に市職員がパナソニックを訪問して「星空に優しい防犯灯」の提供を依頼。パナソニックは同年7月に、従来の防犯灯に既存のオプションパーツであった遮光ルーバーを内蔵し、さらに色温度を3,000Kにした防犯灯を10台、テスト運用するため美星町に提供しました。
テスト運用中、国際ダークスカイ協会 東京支部代表を務める東洋大学准教授の越智信彰氏が防犯灯をチェックしたところ、上方光束比(照明よりも上方に漏れている光の比率)が1.4%ほどありました。そこでパナソニックは器具の角度を水平にして設置し、上方光束比は0%になったそうです。
市職員がパナソニックに声をかけてから、日本で初めての公害対策型防犯灯がIDA認証されるまでなんと1年未満。恐るべきスピード開発ですが、パナソニックは「これまでの防犯灯・道路灯の技術があったからこそ、スピーディーに開発できた。一から開発するメーカーよりも価格も安く提供できるはず」とコメント。今後は、美星町以外でも「星空保護区」認定を目指している地域への提案も視野に入れています。
写真提供:美星天文台